「肉寿司」を買ったのは「0秒レモンサワー」の会社だった…「地雷」と囁かれる元祖ブランドは返り咲けるのか
ネットで「メニューにある店は地雷」と揶揄されてきた肉寿司――。前編では、その元祖ブランド「肉寿司」がM&Aで運営会社を変えたこと、そして筆者が実際に「秋葉原 肉寿司」を訪ね、そこがもはやかつての赤身肉の店ではなく、食べ放題とネット集客に最適化された“別物”に変わっていたことを見てきた。
【写真を見る】シャリの上に薄いベーコンをのせた「合鴨スモーク」(写真:筆者撮影)
前編で触れた通り、この「肉寿司」の商標とフランチャイズ本部事業は5月、ガーデンからGOSSOという外食企業へと譲渡された。では、その買い手であるGOSSOとは何者なのか。そして、その手に渡った「肉寿司」は、これからどこへ向かうのか。後編では少し起源をさかのぼると共に、今後を占ってみたい。
実は「肉寿司」は馬肉から始まったもの
肉寿司といえば、その名の通り魚の代わりに牛や馬などの肉をネタにした寿司のことだ。今では多くの飲食店でこの肉寿司が提供されているが、ブームの発端が今回の「肉寿司」というブランドだ。
もともと「肉寿司」は、スパイスワークスという外食企業が生み出した業態だ。同社はこの「肉寿司」の前身として、「仕事馬」という馬肉を売りにした居酒屋を出店している。その後、「肉を寿司にしたら面白いのでは」という発想で「肉寿司」を生み出した。
その際、シャリに生肉をのせるのに比較的生肉も扱いやすい馬肉に着目し、「仕事馬」の流れもあり馬肉をシャリにのせて“肉寿司”とした。今となってはあまり知られていないが、肉寿司のスタートは「馬肉」なのである。
これが大ヒットし、店舗を展開していく。そして25店舗まで展開した2017年、スパイスワークスからガーデンへと売却された。
それから10年弱。現在、ガーデンの「肉寿司」の店舗は食べログの「『肉寿司』店舗一覧」で確認できるものだと6店舗と激減している。一時は栄華を極めた「肉寿司」だが、ブームに乗って世の中に模倣があふれた。そして、中には形だけ真似した粗悪な肉寿司も氾濫したことで、陳腐化していったのではないか。ネットでは「肉寿司を出す居酒屋は地雷だ」とさえ言われている。
「0秒レモンサワー」をヒットさせた会社
2026年5月、この「肉寿司」をガーデンから譲り受けたのがGOSSOだ。その代名詞的な業態は、「0秒レモンサワー 仙台ホルモン焼肉酒場 ときわ亭」。各テーブルに設置された炭酸サーバーから、レモンサワーをお客自身が注いで飲み放題できる仕組みを打ち出した居酒屋で、2019年12月にスタートした。
「0秒」という耳に残るネーミング、自分で注ぐという体験性、そして飲み放題のわかりやすさ。いかにもSNSで話題になりそうなキャッチーさを備えた業態で、20代の若者を中心に支持を集めた。

コロナ禍にヒットした「0秒レモンサワー」(画像:GOSSOのプレスリリースより)
ここで前編の「秋葉原 肉寿司」を思い出してほしい。耳目を引くネーミング、SNS映えする盛り付け、食べ放題というわかりやすい打ち出し、そしてネット予約を軸にした集客――。なるほど、あの店づくりとGOSSOの「0秒レモンサワー」は、どこか同じ匂いがする。
それもそのはず、実はGOSSOは今回のM&A以前から、「肉寿司」の横浜・西船橋の店舗をフランチャイズで運営してきた。いわば、もともと「肉寿司」を扱ってきたフランチャイジーが、そのまま本部の立場を引き受けた形だ。GOSSOにとって「肉寿司」は、降って湧いた新規事業ではなく、勝手知ったる業態だったわけである。
生みの親であるスパイスワークスが独自性の強い業態を生み出す「ゼロイチ」型なら、それを多店舗化で育てるのはガーデンの得意分野だ。実際、今や同社の稼ぎ頭である「山下本気うどん」も、もとは個人店だったものをライセンス契約・商標取得を経て20店舗超にまで伸ばしている。
「山下本気うどん」よろしく、スパイスワークスが生み出した「肉寿司」を、ガーデンが育てる…。生みの親から育ての親に渡った「肉寿司」だが、そのシナリオはうまくいかなかったようだ。
キャッチーなコンテンツは、冷めるのも早い
では、GOSSOの手腕で「肉寿司」は返り咲くのか。ここからは、あくまで筆者の見立てである。気がかりなのは、「肉寿司」も「0秒レモンサワー」もブームとして加熱しやすいぶん、冷めるのも早そうだという点だ。耳目を引くキャッチーなコンテンツは、目新しさが武器であるがゆえに、それが失われた途端に飽きられやすい。
「肉寿司」がこれまでたどった道がまさにそれだった。馬肉の寿司という新鮮な驚きで火がついたものの、模倣が氾濫して陳腐化し、ついには「地雷」と揶揄されるまでになった。キャッチーさで広がったコンテンツが、キャッチーさを失って沈んでいく――その難しさに、GOSSOは直面することになるかもしれない。
とはいえ、悲観ばかりでもない。
前編で訪れた「秋葉原 肉寿司」は、静かなオフィス街のビルの中という決して良くはない立地にもかかわらず、20代の若者で満席の盛況だった。予約なしの客が断られるほどで、味や豪華さで勝負しているというより、ネット予約を軸にした集客と、わかりやすい食べ放題システムでしっかり客を集めていた。

予約なしの人は満席で断られるほど盛況。皆、ネット予約で訪れているのだろうか(写真:筆者撮影)
生き残る勝ち筋はあるか
ブームが下火になった今もこうして客を入れられているのは、コンテンツの目新しさに頼りすぎないオペレーションを組めているからだろう。もしそれがGOSSOの得意とするところなのだとしたら、「肉寿司」というブランドは、派手な返り咲きとは違うかたちで、しぶとく生き残っていくのかもしれない。
馬肉の寿司から始まり、ブームの頂点を味わい、「地雷」と揶揄され、そして三たび運営者を変えた「肉寿司」。次にこのブランドの名を聞くのが、またM&Aのニュースでないことを願う。

西船橋の店舗は肉寿司と0秒レモンサワーの複合店だ(画像:GOSSOプレスリリースより)