大阪・関西万博「当日予約」がトホホでも諦めないで 2日で18館を堪能した記者が語る「日本語でこそ」の醍醐味

何はともあれ、私と妻は実は万博が大好きだ。世界各地の文化に触れる貴重な機会を、家族と一緒に堪能したい。そんなわけで、GW期間中、家族4人で大阪・関西万博に向かった。
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■事前予約できたのは2日で2館だけ
せっかく行くのなら、人気のパビリオンを見てみたい。滞在日程は2日間。
多くのパビリオンは予約が可能で、チャンスは基本的に4回ある。2カ月前、7日前、3日前、そして当日だ。
4月上旬にチケットを購入してから、予約にトライした。まず「7日前抽選予約」に申し込んだ。最大第5希望まで選択できる。結果、1日目は韓国、2日目は国連のパビリオンが当選した。しかし、それが全てだった。
「空き枠先着予約」は来場の3日前、午前0時から予約がスタートする。ところが0時ちょうどに予約サイトにログインしようとしたが、アクセス者数過多のためかエラーが出て、全然つながらない。繰り返すうち、結局、寝落ちしてしまい、午前3時に起きたときには全ての予約が埋まっていた。無念。翌日も状況は変わらず、がっかりした。
大丈夫だ、まだ当日予約がある。
■11時入場で「当日予約」は惨敗
1日目の5月4日は、午前11時枠で入場。すぐに「当日登録センター」に向かった。端末の列に並んだが、家族4人分の空きはなかった。どうやら当日予約の枠は9時入場の後すぐにほぼ埋まってしまうらしい。せっかく予約入場制を導入しているのだから、パビリオンの当日予約は先着順ではなく、入場時間に対応した予約枠を設けるべきではないのか。
出はなをくじかれたが、気を取り直して、訪れたいパビリオンに絞って、列に並ぶことを決意する。
12時、事前予約した韓国館を見学。AIを駆使した先端技術や、音や光、映像のパフォーマンスが印象に残った。パビリオンを出た後は、大屋根リングに上ったりして会場内を散策した。
英国パビリオンは1時間半ほど並んだが、待ち時間はそれほど気にならなかった。建物の周囲には優美な英国式庭園が設けられ、来場者は庭の小道を進むようになっていたからだ。その間、ビートルズやクイーンなど英国出身のアーティストの曲がスピーカーから流れていたのも気に入った。
■話題のイギリス館「スコーン」を実食
ただ、妻は同パビリオンのレストランの列に並んだものの、「ネットで話題になっていたアフタヌーンティーが私の前の人で終わってしまった」と、しきりに悔しがっていた。アフタヌーンティーの代わりにスコーンのセットをテイクアウトで購入して、妻と子どももパビリオンの待ち行列に並んだ。
同パビリオンの展示の一つは、自動車やインターネットなど、私たちの暮らしを支える偉大な発明。それが英国人によるものだということがアピールされていた。

■シンガポール館で死んだら宇宙へ
次に訪れたのは、愛子さまも見学したシンガポールパビリオン。自分の願いを書くと、上階にあるプラネタリウムのような巨大なスクリーンに映し出される。そうとは知らずに、記者は「死んだら宇宙へ」と書いた。それが星とともに、大空に浮かび上がると、周囲から笑いが起き、恥ずかしかった。家族に聞くと、この日、見学したパビリオンのなかではシンガポールの評価が最もよかった。
■ウクライナの「今」も
共同館「コモンズ」の中には複数の国や地域のブースが軒を並べる。その一つがウクライナだ。国旗の色が使われている、黄色のブース内に青色に塗られた拡声器、タイヤ、パソコンなどが並ぶ。そこにつけられたバーコードをスマホのような装置で読みとると、品々に関係する戦時中の映像が装置に映し出される。
「他のパビリオンは『未来』をテーマに展示しているけれど、ウクライナが見せているのは『今』。この国だからこそできる展示だと思う」(妻)
午後9時から1000機のドローンの光が万博の夜空を舞った。ショーを楽しんだのち、会場を後にした。
(この日、見学したパビリオンなどは韓国、英国、シンガポール、モンテネグロ、スロベニア、パナマ、イスラエル、ウルグアイ、ウクライナ、クロアチア。個人的なMVPはシンガポール)
■「全員、トルクメニスタンには行け」
2日目の5月5日は午前10時枠で入場した。この日もパビリオンの当日登録はかなわなかったが、昨日より1時間早いせいか、会場が空いていたので、中央アジア・トルクメニスタンのパビリオンを訪れた。国家の威信をかけている感がガンガン伝わってくるムービーは圧巻だった。思わず二度見してしまったほどだ。
後日、Xを見ると、同様の声が多数寄せられていた。
<これぞ海外という異文化オーラ炸裂>
<知らないことだらけで知識欲が刺激されまくり>
<万博に行くやつ、全員トルクメニスタンには行け>
ブラジルパビリオンに引かれたのは、建物の正面に、「我々の存在の真意とは。」と、大きく記されていたからだ。結局、哲学的な問いの答えは見つからなかったが、日本人のブラジル移住の歴史を紹介するビデオはとてもよかった。

■マレーシア館でドリアンアイスクリーム
ロケットの打ち上げを疑似体験できる米国パビリオンは入場まで2時間待ちの人気だった。
白亜のサウジアラビア王国館は異国情緒たっぷりな空間に魅了された。白い民族衣装を身に着けたスタッフは、「何でも聞いてください」と言い、気軽に来場者との記念撮影に応じていた。
夜、マレーシアパビリオンの見学を終えると、建物の前では民族衣装を身に着けた人たちが伝統的な舞踊のパフォーマンスを披露していた。しばらくすると、来場者に「一緒に踊ろう!」と呼びかけた。娘はこのパビリオンで購入したドリアンアイスクリームの不思議な味を堪能しながら、ステージで繰り広げられるダンスバトルに見入っていた。
(この日、見学したパビリオンなどはトルクメニスタン、バーレーン、国連、ブラジル、米国、ブルーオーシャン・ドーム、サウジアラビア、マレーシア。個人的なMVPはサウジアラビア)

■「バーモントカレーがあるんだね」
知られざる万博の醍醐味のひとつは、さまざまな国の人とのコミュニケーションだろう。家族もこれが最も印象に残ったと言っていた。
たとえば、強い日差しのなか、疲れ気味の子どもたちが米国パビリオンの列に並んでいると、流ちょうな日本語で、同パビリオンのスタッフが話しかけてきた。
「どこから来たの? ぼくはバーモント州出身なんだけど、日本には『バーモントカレー』なるものがあるのを知って、びっくりしたよ」
聞くと、バーモント州は緑豊かな地域だそう。
「となりのニューヨーク州と違って、日本人にはあまりなじみがないけれど、アメリカの田舎の雰囲気を味わいたいのだったら、バーモント州はおすすめだよ」(米国パビリオンのスタッフ)
しばし、バーモントカレーの話題で妻や子どもたちと盛り上がったのはいうまでもない。
小さなパビリオンや、「コモンズ」のブースでは来場者とスタッフの距離がさらに近い。「どこの国のパビリオンが面白かったですか?」と、話しかけてきたのは中東系の顔立ちの国連パビリオンのスタッフだった。よどみのない日本語で、お互いが訪れたパビリオンの情報交換をした。

■エルサレムの古代の「石」も
中欧・スロベニアのブースの一角には机が置かれ、観光案内所のような雰囲気だった。机の上に広げられた地図を指でなぞっていると、「スロベニアを訪れたことがありますか?」と、スタッフが英語で尋ねてきた。
「ええ。昔、中欧をドライブした際に立ち寄ったことがあります」
「今度、スロベニアを訪れたら、ブレッド湖に行くことをおすすめするよ。小さな島に教会があって、とても美しいところなんだ」(スロベニアブースのスタッフ)
イスラエルのブースの中央には1メートル四方の石が鎮座していた。これは、もしや「嘆きの壁」の一部では――。
「実は、エルサレムの古代の城壁の石なんです。本当は『嘆きの壁』の一部を展示するつもりだったのですが、ラビ(ユダヤ教の指導者)に反対されて、断念しました」と、スタッフは残念そうに内情を明かしてくれた。
たとえ英語や現地の言葉に自信がなくても、日本語で楽しくコミュニケーションできる。子どもたちも喜んでいた。
「たわいもない会話でも外国人スタッフと言葉を交わすと、その国との距離がぐっと近づく。実際に訪れてみたくなる」
妻の言う通り、万博とはワールドワイドな「おもてなし」の場なのだ。

(AERA編集部・米倉昭仁)