もったいない!? 飛行機がわざわざ空中で「燃料」をばらまく根本理由

燃料投棄という現実

 航空券は、私たちが購入する商品のなかでも高額な部類に入る。さらに燃油サーチャージという費用が上乗せされる。これは原油価格などの市場相場によって大きく変動し、旅行費用を一段と押し上げる。結果として、海外旅行は手の届きにくい存在になりがちだ。

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 その一方で、飛行機は上空で燃料を投棄している。まるで現金を空にまき散らしているような行為に見える。だが、これは航空機の安全運航を維持するために必要な措置とされている。

 一見すると非効率に思えるこの投棄が、なぜ航空業界で許容されているのか。燃料投棄という決断の背後に、どんな合理性や事情があるのかを探っていく。

航空機燃料投棄の合理性

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飛行機(画像:Pexels)

 国際エネルギー機関(IEA)によると、航空機のCO2排出量は2023年に約9億5000万トンに達し、これは世界のエネルギー関連CO2排出量の2.5%に相当する。2050年までにネットゼロ排出を達成するためには、低炭素燃料の使用割合を増やし、機体やエンジンの設計改善、運航の最適化、そして需要の抑制が必要だ。

 そんななか、燃料投棄は「最適化」の反対の行動に見える。

 世界の航空燃料市場は2023年に390億ドル(約5兆7000億円)に達し、今後も拡大する見込みだと国際航空運送協会(IATA)は予測している。

 航空券の高額な理由のひとつは、航空機が大量の燃料を消費するからだ。それだけのコストがかかるものを、なぜあえて捨ててしまうのだろうか。その答えの一端は、2016年11月28日のラミア航空2933便墜落事故に見ることができる。

 ブラジルのサッカークラブ、シャペコエンセがコロンビアでの試合のために手配したチャーター機が遭難。乗客71人、乗員を含む乗客全員が命を落とし、わずか6人が生存した。事故の原因は「燃料不足」だったと後の調査で明らかになり、大きな衝撃を与えた。

航空機重量と緊急時の対応

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飛行機(画像:Pexels)

 航空機は燃料不足を避けるため、予定されるフライトに必要な燃料以上に余分な燃料を積んでいる。目的地の空港にすぐに着陸できない場合、上空で待機したり、代替空港に変更したりすることもある。逆に、早期に着陸を余儀なくされる場合もある。例えば、乗客の急病や機械的な不具合による緊急着陸だ。この場合、機体には多くの燃料が残っていることもあるが、問題となるのは機体の重量である。

 航空機には

・最大離陸重量

・最大着陸重量

が設定されており、後者は軽量に設定されている。着陸時の負担が大きく、損傷や事故のリスクが高いためだ。飛行中に燃料を消費するため、着陸時には機体が軽くなる。しかし、航行状況によっては最大着陸重量を超えることがある。その場合、燃料を投棄して機体を軽くし、着陸のリスクを減らす必要がある。

 緊急時には、燃料投棄が適切でないと判断され、最大着陸重量を超えて着陸することもある。機体は過積載を想定して設計されており、直ちに破損することは稀だが、着陸後には点検が義務付けられている。この手間やリスクを考慮すると、燃料投棄を行ったほうが得策であることが多い。

緊急時とリスク管理

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飛行機(画像:Pexels)

 燃料投棄には、人体や環境への影響を最小限に抑えるためのガイドラインが存在する。

 燃料投棄は、航空機が特定の高度と速度で飛行している際に行われる。投棄エリアや高度は事前に指定されており、可能な限り人口密集地を避け、洋上などの上空で行われる。これにより、投棄された燃料は空中で霧状に拡散し、地上に到達する前に気化する。

 過去には手違いにより、低高度で燃料が散布され、皮膚や肺に不調をきたす事故も発生した。また、軍用機では、意図的に燃料を近くの航空機に吹きかけることがある。

 大型機には基本的に燃料投棄ノズルが設けられているが、小型機には装備されていない場合が多い。そのため、小型機は着陸前に空中で旋回して燃料を消費する必要がある。

 非常に稀なケースだが、降着装置が作動しないなどの不具合で胴体着陸を行う場合、燃料が引火して火災が発生しないように、可能な限り燃料を投棄するか、使い果たしてから着陸を試みる。

 一見すると、飛行機が着陸前に燃料を捨てる行為は無駄に思えるかもしれない。しかし、安全運航のためには欠かせない措置である。

 燃料投棄は全てのフライトで行われるわけではなく、特定の状況下で必要になる。

 なお、電動航空機では液体燃料を積んでいないため、基本的に燃料投棄は行われず、機体の設計もそれを前提にしている。