「大阪モノレール延伸」実際どれだけ進んでいるか

大阪モノレールの延伸工事が最も進んでいる工区では支柱の上に鋼製の軌道桁を設置済み(撮影:伊原薫)
多くの大都市と同様、大阪の鉄道はその多くが大阪市中心部から周辺都市へと放射状に延びている。たとえば大阪府北部の周辺都市間を移動する場合、かつてはいったん大阪駅など中心部に出る必要があった。そこで、利便性向上のため建設されたのが大阪モノレールだ。
【図と写真でわかる】大阪モノレールには大阪空港―門真市間の本線と途中の万博記念公園から分かれる彩都線がある。現在、2033年度の開業を目指し、門真市から南へ本線を延伸する工事が進行中。沿線の現状はどうなっているのか?
大阪中心部をぐるりと囲む
周辺都市間を結ぶ環状鉄道の構想は、1960年代にさかのぼる。このころ北摂地域では日本初の国際博覧会、大阪万博の開催が計画されており、環状鉄道には会場アクセスの役割も期待された。結果的に万博には間に合わなかったものの、この計画は引き続き検討が進められる。
想定される利用者数や用地確保などの観点から、同路線は一般的な鉄道ではなくモノレールとして建設されることに。1980年に大阪高速鉄道株式会社(2020年に大阪モノレール株式会社へと改名)が設立され、その10年後にまず千里中央―南茨木間が開業した。
個人的な話で恐縮だが、筆者は当時この沿線に住んでおり、開業当日には学校の授業が終わった後でさっそく乗車。筆者にとってはこれが初めてのモノレール乗車で、これまで体験したことのない、空を飛ぶかのような車窓に感動したのを覚えている。
モノレールとして「世界最長」だった
その後、大阪モノレールは徐々に路線を延伸。1994年には柴原(現:柴原阪大前)―千里中央間が、1997年には大阪空港―柴原間と南茨木―門真市間が相次いで開業し、本線が現在の形となる。同時に、その路線長は21.2kmとなり、世界最長のモノレールとして翌年にはギネス世界記録に認定された。

かなりアップダウンがある大阪モノレール。ゴムタイヤ式なので坂道には強い(撮影:伊原薫)
続いて、支線にあたる彩都線の建設も進められ、1998年に万博記念公園―阪大病院前間が、2007年に阪大病院前―彩都西間が営業を始めた。これにより、路線長は合計28.0kmに。国内第2位の東京モノレール(路線長17.8km)を大きく引き離したものの、2011年には中国の重慶市でこれを超える路線長のモノレールが開業したため、世界一の座を明け渡した。
ちなみに、この重慶モノレールの建設にあたっては日本が資金面や技術面で支援を行った。同線の車両が大阪モノレールと瓜二つなのも、その関係からである。

新型車両の搬入はクレーンを使って行われる=2018年7月(撮影:伊原薫)
周辺都市間をラクに移動できる
こうして現在の路線網となった大阪モノレールは、「放射状に延びる大阪の鉄道路線を結び、周辺都市の移動を便利にする」という役割を存分に果たしてゆく。
開業時に約470万人(ただし、開業が6月だったため10カ月弱での数)だった輸送人員は、6年後の1995年度に1000万人を突破。本線が全通した1997年度は前年度のほぼ2倍を記録した。
倍増の主たる原因が路線延伸にあることは間違いないが、一方で阪急や京阪、Osaka Metro御堂筋線と直通する北大阪急行など計6路線と接続し、「大阪市中心部に出ることなく周辺都市を移動できる」という強みを十分に発揮した結果でもある。
沿線には大阪国際空港(伊丹空港)や大阪大学、万博記念公園とその敷地内に開設されたサッカースタジアム、さらにはショッピングモールや映画館、水族館を備えた大型複合施設「EXPOCITY」など、集客施設が多数立地。駅で眺めていると、ラッシュ時だけでなく昼間時間帯や土休日も、多くの人々が利用しているのがわかる。
輸送人員はその後もほぼ右肩上がりで増加を続け、2019年度には4930万人を超えた。コロナ禍を受けて翌2020年度は3600万人弱へと落ち込んだものの、順調に回復。直近の2024年度は4960万人とコロナ禍前を上回り、史上最高となった。5000万人を達成するのも時間の問題だろう。

本線と彩都線が分岐する万博記念公園駅。軌道桁が複雑な形を描く(撮影:伊原薫)
2007年に全線開業した彩都線
とくに筆者が注目するのは、彩都線の利用状況だ。全線開業した2008年度は4駅合わせて1日平均約6700人だった輸送人員が、2024年度は約1万2600人と1.9倍にまで伸びている。
しかも、線内の公園東口駅近くにある万博記念競技場は、2015年までプロサッカーチームのガンバ大阪がホームスタジアムとして使用。翌年以降はその観客が利用しなくなったにもかかわらず、ここまで伸びているというのは驚きである。
これを受け、開業当初から長らく本線の半分だった日中時間帯の列車本数も、現在は本線と同数に増加。平日の朝と夕方以降はほぼ全列車が本線へ直通するようになった。終点・彩都西駅の周辺に広がる「彩都」こと国際文化公園都市の開発は思うように進まなかったが、彩都線の利便性は格段に向上している。
大阪モノレールは、線路にあたる1本の軌道桁を跨ぐ形の「跨座式モノレール」である。そのほとんどが道路上に建設されているのに加え、一般的な鉄道の高架橋と違って壁などがないため、見晴らしはすこぶるよい。
少路―千里中央間では大阪市中心部の高層ビル群だけでなく、晴れた日には明石海峡大橋まで見通すことが可能。大阪空港駅手前での離着陸する飛行機との“共演”、摂津―南摂津間で東海道新幹線の車両基地を横目に本線を跨ぎ越すシーンなど、見どころがいっぱいだ。
毎回満員御礼のイベント列車
そして、これらの景色をさらに楽しめるのが、イベント列車である。大阪モノレールでは、不定期で様々なイベント列車を運行。なかでも、毎月運行される「日本酒列車」は、回ごとに選ばれた地域の日本酒が特製の弁当と共に味わえるとあって、毎回満員御礼となる人気ぶりだ。暮れなずむ景色と美味しい酒……“呑み鉄”にはたまらない列車であるに違いない。

日本酒列車の車内。通路部分にテーブルが設置された(撮影:伊原薫)
そんな大阪モノレールでは、現在延伸事業が進められている。門真市駅から近畿自動車道にほぼ沿って南下し、近鉄奈良線に至るルートで、終点の瓜生堂駅(仮称、以下新設駅は全て同じ)を含め、5駅を新設。このうち4駅で既存の鉄道路線と乗り換えできる。
各駅には4両編成対応の島式ホーム1面が設けられるが、将来の6両編成への増結にも対応できる構造となっている。駅舎は既存駅を踏襲した形状やカラーとしつつ、各駅のコンセプトを踏まえたアクセントカラーを採り入れる予定だ。

門真市駅の南側で途切れているレール。延伸を考慮した構造となっている(撮影:伊原薫)
延伸工事の現状は?
2019年3月に運輸事業特許を取得。延伸事業は用地買収と支柱や軌道桁、駅の躯体といった「インフラ部」の整備を大阪府が、駅の機器や信号通信機器、変電所や延伸で新たに必要となる車両(3000系4編成を予定)といった「インフラ外部」の整備を大阪モノレールが主体となって行う。
2020年12月には支柱の、2024年3月には駅舎の建設工事に着手し、2025年4月時点で支柱建設工事は約7割、駅舎建設工事は5駅のうち門真南駅と鴻池新田駅の発注を終えた。
工事が最も進んでいる桑才新町工区では、鋼製の軌道桁がすでに支柱の上に設置されるなど、日に日に景色が変化。瓜生堂駅の北側には長さ750m、幅25mの細長い敷地に車両基地も設置されることになっていて、周辺の歩道や近鉄奈良線の車窓から工事の様子を見ることができる。

瓜生堂駅(仮称)付近の工事の様子。奥に近鉄奈良線が見える(撮影:伊原薫)
開業予定は2033年ごろに
当初は2029年の開業を予定していたが、一部エリアの地盤が想定よりも軟弱であり、駅舎の基礎工法の変更が必要となったことなどから、現在は2033年度の開業を予定。その暁には、6社10路線を結ぶ一大バイパス路線へと変貌を遂げる。一日も早い延伸開業に期待したい。