ウーバー「配達員に解決金」が全然笑えないワケ

SNSの投稿を見る限り、ウーバー配達員のアカウントが停止されるケースは、どうやら少なくないようだ(筆者撮影)
「ウーバー配達員に解決金」が話題だ。5月17日付の読売新聞オンラインによると、宅配代行サービス「ウーバーイーツ」の配達員が、稼働に必要なアカウントを一方的に停止されたなどとして、損害賠償を求めて訴訟を提起。ウーバーイーツジャパンが解決金(金額は不明)を支払う内容で、配達員と和解していたことがわかった。
【画像】悲惨!時給換算400円を切っている、筆者のウーバーでの売り上げ
訴訟記録によると、配達員男性は2022年8月、突如アカウントが停止。男性は同年11月、代理人弁護士を通じてアカウント復旧、停止期間中に働いていれば得られたはずの「逸失利益」の支払いを求めた。
その後、アカウントは復旧したが逸失利益の支払いは拒まれたため、2023年9月に提訴。2025年4月11日、ウーバーが解決金を支払うことで「和解」したという。
同社は裁判でアカウント停止の理由を「システムの誤検知」と認めていたようだ。ただし停止期間中に他社で働くこともできたとして、逸失利益の支払いを拒んでいたらしい。
配達員の「アカウント停止」は珍しくない
この報道を受けて、ネットのコメント欄には「ひどい会社だなぁ」「アカウント停止は争う価値あり。いい前例になった」「氷山の一角。泣き寝入り案件のほうが圧倒的に多そう」「個人事業主だから仕方ないのでは?」などなど、賛否様々な多くの声が寄せられている。
SNSの投稿を見る限り、ウーバー配達員のアカウントが停止されるケースは、どうやら少なくないようだ。具体的な理由としては、お客様から安全性にかかわる報告があった。お客様から虚偽の報告をされた……。
配達員歴6年の筆者もアカウント停止の経験者
実は、ウーバー配達員として6年目の活動に突入した私も、過去にアカウント停止を経験したことがある。当時の私は、お客様と飲食店からの「満足度」が100%だった。しかし、突如としてアカウントが停止された。

配達員はお客様と飲食店からの「満足度」を確認できる(著者撮影)
2024年8月19日18時頃、私はいつものように自転車にまたがり、配達用アプリを起動させた。スマートフォンに表示された「出発」のマークをタップする。通常はこのタイミングでアラーム音が鳴り、仕事がスタートしたことを知らせてくれる。
しかしこの日は、スマホの液晶画面に「アカウントを更新してください」「本人確認書類の提出をお願いします」といったメッセージが表示され、出発をすることができなかった。どうやら私のアカウントが、何らかの理由で一時停止されたようだ。
仕方なく、私はウーバーの指示に従って手続きを進めた。プロフィール写真を撮り直し、身分証を提出した。けれど待てども待てども「確認中」と表示されるだけ。一向にアカウントが復活しない。
SNSで検索すると、「ウーバーの仕事できないんだけど」「アカウント停止された!?」「これお客様からしても問題だよな」などの投稿が見つかった。どうやら私以外の配達員も仕事ができずに困っているようだ。
私の正直な気持ちを隠さずに言うと、「まじで頼むぜウーバー。ディナータイム1回分、2000~3000円くらいの報酬を損したじゃないか」といった苛立ちが少しだけあった。この気持ちは、他の配達員も同じだったように思う。
結局、私のアカウントが復活したのは3日後だった。なおウーバー側から、稼働できなかった分への補填等は一切なかった。
配達員の怒りを買った「詐欺クエスト」

ウーバー側から配達員へ送られた謝罪文(著者撮影)
保障や補填がないことについて、私は仕事の特性上や雇用形態上、仕方ないと思う部分がある。配達員はいつ、どこで稼働するかわからない。権利の反対語は義務であり、自由な働き方を求める私たち配達員に、手厚い保障がないことは一定の納得ができる。
しかしウーバーのシステムトラブルは、これ以外にも不定期で発生しており……。例えば今年だと、こんなトラブルがあった。
2025年の年明け頃、各種メディアで「ウーバーの配達遅延」の問題がクローズアップされたことを覚えているだろうか。ウーバーの利用者の中には「2時間待っても配達員が来ない」といった声が散見されるなど、配達員不足により現場は大混乱に陥っていた。
ウーバー運営が講じた対策は「クエスト」と呼ばれる追加報酬(インセンティブ)の増設だった。

ここ最近のクエストの一例(著者撮影)
クエストとは「30件配達したら1500円」といった条件で、通常は1週間単位で設けられる。
また雨の日などの悪天候時に「1件配達したら200円」といった条件で、ランチタイムとディナータイムの時間限定(半日単位)で設けられる。
ウーバー運営は、この後者のパターンを採用することで、配達員の確保を試みようと考えたようだ。晴れの日にもかかわらず、クエストが設けられたことに私は大喜びした(不適切な表現かもしれないが、お年玉を得たような感覚だった)。
ところがどっこい。とある配達員がSNSに「名古屋の配達員用のクエストが東京に届いている」と投稿しているのを発見。
慌てて自分のクエストを確認したところ、私のクエストも「名古屋限定」となっていた(私は神戸市と芦屋市で主に稼働している)。
どうやらウーバー運営が、誤って他地域のクエストを全国配信したらしい。私はその日、少しだけ肩を落としながら自転車のペダルを回した(後日改めて神戸用のクエストが出現した)。
システム障害を疑いたくなる、注文数激減の現状

時給換算400円を切っている筆者の売り上げ(著者撮影)
物価高による国民の生活苦が影響しているのだろうか。ここ最近ウーバーの現場では、システム障害を疑いたくなるほど、注文依頼を知らせるアラーム音が「鳴らない」状況が続いている。
ウーバー配達員への仕事の割り振りは、人間ではなく機械が自動で行っている。注文依頼はいつ、どこで「鳴る」かわからない。
待てども待てども1件も注文が来ず、閑古鳥が鳴く状況に、システム障害を疑ってオンライン・オフラインを切り替える操作(パソコンで例えると、一度シャットダウンをして、再起動するイメージ)をしたことのある配達員は、私を含めて少なくないはずだ。
もちろん稼働地域や時間帯、天候や気温などにより、注文数(売り上げ)は大きく変動する。しかしこれは視点を変えると、悪条件が揃った場合、これっぽっちも稼げなくなることの裏返しともいえる。

筆者の配送実績。2キロ強の距離で、報酬は324円だった(著者撮影)
このトホホな状況は、ウーバーのシステム障害ではないけれど、システムそのものの脆弱性を露呈しているように私は感じてならない。
ウーバー配達員は1件あたり300〜500円前後の報酬で働いている。注文数が増加する、昼と夜のピークタイムだけ稼働するなら、まだ何とか「形」になるかもしれないけど……。
例えば15時や22時といった、注文数が減少する時間帯に稼働することは、労働者として割に合わなくなる可能性が生まれる。
ギグワーク、スポットバイトとはいえ、最低時給を大きく下回る状況が続けば、働く魅力は減少するだろう。
もしもピークタイム以外の稼働を控える配達員が増加すれば、配達員不足という形でウーバー利用者に「ツケ」が回ってくるかもしれない。
サービス維持のため、システム見直しは急務
記事冒頭で紹介した配達員のアカウントが停止されたのは、コロナの影響で国民のほとんどがマスクをしていた、2022年8月〜11月だった。
当時のウーバー配達員は、私自身がそうだったが、ウーバーの仕事だけで生活を回すことができた。正当な理由のないアカウント停止に「異議あり」を申し出たのは、もしかしたら副業ではなく本業として、毎日のように働いていた背景があったのかもしれない。
しかし「今」はどうだろうか。ウーバーという仕事そのものが、副業として稼働せざるをえない、そんな状況に変化しつつあるように私は思う。
システムトラブルが原因で仮に今日、アカウントが停止されたとしても、おそらく私は、ウーバーに自身の状況を訴えない。なぜならウーバー側から支払われるかもしれない解決金と、訴訟で失う費用と労力が釣り合っていないから。
誰もが安心して利用できる、持続可能なシステムをどう構築していくかが、今ウーバーには問われている。