「じいちゃんたち、最高です」 田んぼのあぜ道の草を刈り残した理由 優しさに大反響

草刈りをしたはずが、真ん中にこんもりとした刈り残しが…【写真提供:パフまりこ たぬき社/稲作本店(@farm1739)さん】
田植えが終わり、苗が青々と茂り始める初夏。田んぼでは、まるで自然のビオトープのように、カエルやアメンボなど、さまざまな小さな命が芽吹いています。栃木県の那須高原で米農家を営む、稲作本店のパフまりこさんこと井上真梨子さんは、そんな田んぼの草刈りを依頼したところ、なぜか手つかずで草が残っている一角を発見。その理由に気づいた投稿が、14万件もの“いいね”を集め、感動を呼んでいます。詳しいお話を伺いました。
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「こういう日本人らしさ、ずっとあってほしい」
「草刈りの一部を、シルバー代行さんに頼んでいるのですが、1か所だけ草が残っていて。なんで? と見に行ったら、鴨の卵がありました。じいちゃんたちのこういうところ、大好き」
そんなコメントとともに投稿された2枚の写真。1枚目には、初夏の田園が広がる、のどかな光景が映し出されています。ところが、あぜ道の真ん中に、こんもりとした刈り残しが見えます。
そして2枚目には、草むらの奥にそっと隠されるように、11個の鴨の卵が入った巣が。寄り添うように並ぶ卵の様子から、親鳥に大切に守られてきたことが伝わります。
この投稿は、14万件もの“いいね”を集めました。リプライ(返信)には、「じい様ナイス」「こういう日本人らしさ、ずっとあってほしいですね」「じいちゃんたち、最高です」「よく気づきましたよね 優しい」「こんな歳の取り方したいわぁ」「昭和の優しさ!」など、温かな声が続々と寄せられています。

刈り残された場所には鴨の卵が…【写真提供:パフまりこ たぬき社/稲作本店(@farm1739)さん】
草刈り未完了の謎 確認したその先には…
投稿者の井上さんが草の刈り残しに気づいたのは、シルバー代行の5人のおじいさんたちに草刈りを依頼した翌日のことでした。田んぼでドローンによる除草作業を進めていたとき、いつもと違うあぜ道の様子に気がついたといいます。
「『じいちゃんたち、刈り忘れちゃったのかなぁ……』といぶかしんでいたので、まさかの光景に『うわぁ! 鴨の卵だぁ!」と感動し、じいちゃんたち素敵ー! と思いました」
珍しい出来事に思わず驚きつつも、鴨の誕生が稲作に影響する心配は、ほとんどないといいます。
「鴨がたくさんいると、稲が食べられてしまうこともありますが、数が少ないので問題ありません。ヘビに卵を食べられてしまわないかが心配です」

ジェラート販売をする「たぬき社」を創設するなど、さまざまな取り組みを行っている【写真提供:パフまりこ たぬき社/稲作本店(@farm1739)さん】
おじいさんたちから「人生の先輩として『働く姿勢、生きる姿勢』」を学ぶことも
実は、8年前にお父さんが脳卒中で倒れたことをきっかけに、夫や子どもたちとともにUターン就農したという井上さん。お父さんは、左半身に麻痺が残ったものの元気に過ごしていますが、農業についておじいさんたちから教わることは多いそうです。
「シルバーさんに以外にも、80代のスタッフさんがいます。どんな仕事でも妥協がなく、つらいことでも率先して行ってくれるので、人生の先輩として『働く姿勢、生きる姿勢』を勉強させてもらっています。以前、『田んぼに草が生えちゃうんだよね』などと愚痴ったら、『あんまりよく見ないほうがいいぞ~、疲れちゃうから!』と慰めてくれました」
現在は、政策に頼らず、持続可能な農業ができるよう試行錯誤を続けている井上さん。昨年12月には、米粉バームクーヘンとジェラートのお店「たぬき社」を開店しました。
また、講演や小学生への出前講座を行うほか、SNSで農業の現状についても継続的に発信中。水利組合や地域の祭りなどへの積極的な参加で、地域の人たちと力を合わせて、農村の維持にも努めています。
○取材協力:パフまりこ たぬき社/稲作本店(@farm1739)さん