ドローン攻撃で破壊されたロシア戦略爆撃機「Tu-95」、今後のゆくえは?

モスクワ市内 2021年5月7日撮影 ツポレフ Tu-95MS Russian Aerospace Force
2025年6月初め、ウクライナがロシア国内の空軍基地4か所に対して実施したドローン攻撃により、爆撃機や早期警戒管制機など41機が標的となり、複数の機体が破壊されました。ウクライナ保安庁(SBU)が公開した攻撃映像や攻撃後の衛星画像によると、特に戦略爆撃機Tu-95(NATOコードネーム)“ベア“が狙われ、破壊されていることが確認できます。
今回の攻撃で集中砲火を受けたTu-95とは一体どのような機体なのか、破壊によるロシア空軍の今後の動向とあわせて紹介します。
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派生型豊富、核戦略まで担うTu-95
Tu-95は、銀色で細身の胴体、後退翼、そして特徴的な二重反転プロペラを備えた爆撃機です。Tu-95MSの諸元は全幅50.04m、全長49.13m、エンジンはNK-12ターボプロップ×4、最高速度830km/h、航続距離10,500km、乗員7名です。試作機の初飛行は1952年11月12日。1965年に一度生産が終了しましたが、1981年から1986年にかけて、巡航ミサイル発射母機型のTu-95MS”ベアH”などが再生産されました。
派生型には、対潜哨戒機のTu-142、早期警戒機のTu-126、旅客機型のTu-114などがあり、さらには原子炉を搭載した実験機Tu-95LALといった特殊機体も存在します。派生型を含めた製造数は500機を超えており、実戦での使用は、2015年のシリア内戦および2022年以降のウクライナ侵攻において、巡航ミサイル攻撃に用いられています。
多くの派生型が作られ、実戦投入も経験したTu-95ですが、可変後退翼をもつ世界最大の爆撃機Tu-160”ブラックジャック”と共に、大陸間弾道弾(ICBM)、潜水艦発射弾道弾(SLBM)、戦略爆撃機という「核戦力三本柱」の一翼を担っています。ロシア軍にとって、核抑止体制を維持する上で重要な機体なのです。

© FlyTeam ちゃぽんさんジュコーフスキー空港 2012年8月12日撮影 ツポレフ Tu-160 ロシア航空宇宙軍
Tu-95 現在の状況は?
2025年現在、ロシア空軍は約55機のTu-95MSを保有していると見られていますが、今回の攻撃によって保有数の約1割に相当する6機が破壊されたとみられます。その損失はロシアにとって極めて深刻な問題です。
Tu-95は製造終了からすでに約40年が経過しており、Tu-160は再生産が始まっているものの、配備数はまだ限られています。さらに、次世代爆撃機として開発中のPAK DA(ロシア版ステルス爆撃機)は、実機の初飛行すら行われておらず、配備までにはまだ相当の時間がかかると見られます。

© FlyTeam ちゃぽんさんジュコーフスキー空港 2012年8月12日撮影 ツポレフ Tu-95MS ロシア航空宇宙軍
ロシアはこの事態にどう対応する?
実はロシアには、退役した兵器をスクラップにせず基地の一角に保管しておき、必要に応じて部品取りや再整備を行って現役復帰させるという運用文化があります。ウクライナも、ロシアの侵攻によって航空機を失った際に、退役させていた機体を整備し直して再び使用しています。アメリカ空軍でも、事故や老朽化で損耗したB-52爆撃機を「飛行機の墓場」から引き揚げ、整備して現役復帰させた事例があります。
ロシアはTu-160の再生産速度を上げるのか? PAK DAの開発を急ぐのか? あるいは、保管中のTu-95を再整備して戦力の穴を埋めるのか?いずれにしても、今回の攻撃を受けて、ロシアの戦略航空戦力がどう再編されていくのか、今後の動向に注目が集まります。