ペダル踏み間違い「7割削減」──ワンペダル運転は「高齢者事故」を救うのか? 日産e-POWERが拓く新時代の可能性とは
e-POWER専売化が後押し
近年、電動車の普及により、従来の運転スタイルが変化してきた。象徴的なのが「ワンペダル運転」である。アクセルペダルのみで加速・減速・停止までを制御する方式で、主に日産のe-POWERや電気自動車(EV)に採用されている。
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従来のAT車はアクセルとブレーキの2ペダル操作が基本だったが、ワンペダル運転ではアクセルを離すと回生ブレーキが強く作動し、車種によってはそのまま停止まで持ち込める。ただし、停止保持にはブレーキ操作が必要な場合もある。
この技術は2017年に登場した2代目日産リーフ(ZE1)で「e-Pedal」として初めて搭載され、国産EVでは先駆的な導入となった。以降、e-POWERシリーズにも展開され、2020年発売の新型ノートではガソリン車が廃止されe-POWER専売に。ワンペダル運転がより日常的な存在となった。
最大の特徴は、加減速をアクセルだけで制御できる点にある。ブレーキとの踏み替えが減ることで操作が簡素化され、運転時の身体的負担も軽減される。
だが、この運転スタイルが今後どこまで広がるのか。ワンペダル運転の定着性は、まだ検証の途中にある。
事故防止への期待

アクセルペダルのみで運転するメリットは?(画像:写真AC)
ワンペダル運転の導入により、交通事故の抑制効果が期待されている。特に注目されるのが、高齢者による
「ペダル踏み間違い事故」
への防止効果だ。警視庁のデータでは、2018年から2022年に発生した同種の死亡・重傷事故のうち、60歳以上の高齢者が7割以上を占めていた。誤操作が重大事故につながりやすい傾向が浮き彫りになっている。
日産の試算では、ペダルの踏み替え回数を
「約70%削減」
できるとされる。使い方によっては90%の削減も可能という。これは運転中の判断ミスや操作ミスを減らす余地を示す数値でもある。反応速度が落ちやすい高齢者にとっては、明確な利点となる。
さらに、ワンペダル運転は回生ブレーキによって減速する仕組みのため、ブレーキパッドの摩耗が抑えられる。結果としてメンテナンスコストの削減につながる。加えて、回生エネルギーをバッテリーに再充電できる点から、燃費性能の向上にも寄与する。安全面と経済面の双方で、導入効果は無視できない。
違和感や操作性の課題

ワンペダルになることの危険性とは?(画像:写真AC)
安全性と経済性の双方から評価されるワンペダル運転は、将来的に主流の運転スタイルとなる可能性がある。
一方で、普及にはいくつかの課題が残る。とくに従来のAT車に慣れたドライバーにとっては、アクセルから足を離した際の減速感に違和感を覚えることが多い。2024年モデル以降のノートe-POWERでは、アクセルを戻すと時速5km程度まで減速するが、完全停止には至らず、最終的にはブレーキペダルを踏む必要がある仕様に変更された。
操作に慣れないうちは、急な減速によって後続車との車間が詰まりやすくなる。とくに高速道路や渋滞時には、交通の流れを乱すリスクがある。滑らかな減速を求められる場面では、アクセル操作に細心の注意が必要になる。
また、坂道で停止する際に
「車両がずり落ちた」
といった報告もある。日産はこのような状況を踏まえ、ブレーキペダルの併用を推奨している。こうした操作性の違いに対応するには、ユーザー教育や体験試乗などの機会を拡充する必要がある。
普及を後押しするには、回生ブレーキ制御の最適化も重要だ。加えて、ドライバーの習熟度に応じて制御を調整できるモード選択機能の拡充も求められる。技術と教育の両面からの対応が、次世代運転スタイルの定着に向けたカギとなる。
脳波が示す快適運転体験

ワンペダル操作の方がより運転を楽しめる?(画像:日産自動車)
EVやハイブリッド車の普及が進むなか、ワンペダル運転が主流の選択肢となる可能性は十分にある。日本自動車会議所の発表によれば、2023年の国内電動車販売台数は前年比26.6%増の200万9725台に達し、電動車の販売比率は50.3%を超えた。この市場拡大の流れの中で、ワンペダル運転を標準装備とする車種が増加するかどうかが注目されている。
実用性だけでなく、心理的な側面からもワンペダル運転には関心が集まる。産業技術総合研究所と日産自動車が行った共同実験では、ペダル操作が運転者の心理や脳活動に与える影響を検証した。実験は2018年1~3月に茨城県内の一般道路で実施。12人の被験者が日産「ノートe-POWER」を用いて、アクセルのみのワンペダル操作と、従来のツーペダル操作を交互に体験した。その結果、ワンペダル操作中の方が
「運転が楽しい」
と感じる傾向があり、脳波の分析でも自然な集中が高まる可能性が示された。
ワンペダル運転には、長距離走行時の疲労軽減や、ストップ&ゴーの多い都市部での操作簡素化といった利点もある。アクセル操作のみでの減速が可能なため、渋滞時の運転ストレスも軽減されやすい。
今後は、メーカーによる操作性の改善や、ユーザーへの情報提供が進むことで、受け入れの裾野が広がると考えられる。日産はすでに、体験試乗イベントの実施やオンラインでの操作説明コンテンツの提供など、普及を後押しする取り組みを始めている。
現時点では、すべてのEV車種でワンペダル運転が標準装備となっているわけではない。ただし、技術革新とユーザー理解が進めば、この運転スタイルはEV時代における新たな常識となる可能性を秘めている。