北陸新幹線延伸 「舞鶴・湖西ルート」がゾンビ復活! 小浜ルートへの不信が生んだ構造変化とは
京都選挙区で延伸が争点に浮上
参院選京都選挙区の論戦で北陸新幹線大阪延伸について舞鶴、湖西ルートを推す声が出ている。ともに過去のルート選定で落ちているが、何があったのだろう。
【画像】「えぇぇぇぇ!」これが候補となった「3ルート」です! 画像で見る(14枚)
「京都を破壊する北陸新幹線延伸に決着をつけよう」
「小浜・京都ルートを止めるのがこの参院選だ」
京都市伏見区で街頭演説の女性候補が声を張り上げれば、京都市南区のショッピングセンター前では別の男性候補がボルテージを上げる。
反対運動の高まりに防戦一方に見える小浜・京都ルート派も負けていない。京都市中京区でマイクを握った男性候補は
「府民の懸念を積み残して着工することなどない。懸念解消に向け、説明を尽くす」
と力を込めて反論する。
京都選挙区の2議席を争う9候補のうち、小浜・京都ルート支持はNHK党、立憲民主党、自民党の3候補。日本維新の会、国民民主党、参政党、無所属の4候補は別のルート検討を訴え、れいわ新選組、共産党の2候補は延伸不要と主張している。20日投票の参院選京都選挙区は終盤戦に突入したが、新幹線延伸問題で最後まで激しい舌戦が続く。
迷走する4案再浮上の衝撃

京都選挙区の2議席を争う9候補(画像:高田泰)
大阪延伸は2016年、福井県敦賀市から小浜市を経て地下トンネルで京都市へ向かう小浜・京都ルートに決まっている。しかし、京都府内の反対運動が高まり、着工できない状態に陥った。
早期延伸を望む石川県議会や日本維新の会国会議員団などは、敦賀市から滋賀県米原市へ南下し、東海道新幹線に接続する米原ルートを推している。
小浜か米原かの二者択一が問題になっていたわけだが、ここに来てそれとは別の2ルート再考を求める声が出てきた。小浜・京都ルートの選定過程で落選した
・舞鶴ルート
・湖西ルート
だ。京都選挙区に出馬した候補者のなかにも再考を主張する声がある。四つのルートが議論される様子は、ルート選定前に逆戻りした感じがする。
最長200km案の現実味

シャッターを閉めた店舗が並ぶ舞鶴市のマナイ商店街(画像:高田泰)
舞鶴ルートは敦賀市から小浜市を経由して京都府北部に入り、京都市を目指す全長約200km。過去に検討された大阪延伸ルートで最も長い距離になる。舞鶴市議会や京都商工会議所の堀場厚会頭が再考を提案している。
舞鶴市と京丹後市、宮津市、与謝野町、伊根町で構成する京都府丹後地方は人口約16万人。1970(昭和45)年に比べて30%以上も減り、将来が危ぶまれる事態に追い込まれている。天橋立(宮津市)、伊根の舟屋(伊根町)など有名観光地もあるが、京都市や大阪市から電車や高速バスで2時間ほどかかり、観光客を十分に引き寄せられていない。
中心都市は人口約7万4000人の舞鶴市。古くからの港町として発展してきたが、中心市街地のマナイ商店街は空き地とシャッターを閉じた店舗が続き、全長約500mに100店以上が営業していたかつての面影はない。
舞鶴市はルート再考に動く構え

舞鶴ルートが付近を通過すると考えられるJR西舞鶴駅(画像:高田泰)
舞鶴市議会は参院選公示直前の6月末、小浜・京都ルートを見直し、舞鶴ルートを再考するよう求める決議をした。舞鶴市企画政策課は
「決議を重く受け止めている」
とし、新幹線延伸を地域振興の起爆剤にするため、地元経済界などと対応協議に入る構えだ。
舞鶴ルートは小浜市を通過することから、小浜延伸を強く希望する福井県の賛同を得やすいと考える声もあるが、建設費は小浜・京都ルートを上回り、費用対効果を示す費用便益比も2016年の段階で効果があると判断される1を下回るとされている。
北陸選出の自民党国会議員は
「小浜・京都ルートの優位性を示すため、最後まで候補に残したとも聞く。運賃が高く、時間がかかるうえ、京都市をトンネルで通せば、小浜・京都ルートと同じ問題が起きる」
と指摘した。
舞鶴、湖西ルートの課題はそのまま

高架で整備されたJR大津京駅付近の湖西線(画像:高田泰)
湖西ルートは敦賀市から滋賀県高島市付近を通って京都市へ向かう約80km。京都駅(京都市下京区)手前で東海道新幹線に接続することが想定されていた。米原ルートより工期が長く、費用もかかるが、小浜・京都ルートより安上がりで、工期も短いとみられる。石川県選出国会議員の自主研究会が米原ルートとともに再考の対象にしている。
だが、問題は「比良おろし」と呼ばれる強風だ。在来線の湖西線はしばしば、強風で運休に追い込まれ、京都市や大阪市と敦賀市を結んで湖西線を走るJR西日本の新快速が遠回りして米原経由で走ることもある。
しかも、東海道新幹線を運行するJR東海は過密ダイヤを理由に北陸新幹線の乗り入れを拒んでいる。京都駅手前での接続が実現する可能性は低い。滋賀県交通戦略課は
「いろんな意見があるのは理解できるが、県としては小浜・京都ルート以外考えていない」
と意に介さない口ぶり。重い建設費負担や湖西線の並行在来線化を考えれば、そう簡単に同意しそうもない。
地下水問題の壁

参院選京都選挙区立候補者のポスターが掲示されたJR西舞鶴駅前の掲示板(画像:高田泰)
過去に落選したルートの復活を求める声が次々に上がる背景には、小浜・京都ルートへの反対運動が勢いを増すなか、京都府市が2024年末に示した地下水への影響などへの懸念を国土交通省や鉄道建設・運輸施設整備支援機構が解消できないことがある。
京都府民の多くは小浜・京都ルートを
「もう無理」
とみているのでなかろうか。
その結果、新幹線を求める地元の声、代替路線を探す動きが活発化し、落選した路線がゾンビのように復活してきたのだろう。だが、過去に指摘された問題解消のめどは立たないままだ。今のところ、膠着状態が続く未来しか見えない。