「日傘で登校はダメ」の不思議 各地の小学校で突っ込みどころだらけの暑さ対策

■「日傘はNG、雨傘はOK」に疑問, ■「両手がふさがらないもの」に突っ込み, ■日傘を差すかどうかは本人が決めること, ■日傘推奨の自治体も

 じりじり照りつける太陽。いまや「災害級の暑さ」とまで言われる日本の夏。外を歩くには日傘が必須な状況で、男性も日傘を使い「日傘男子」という言葉もすっかり定着した。けれど、子どもの日傘はあまり見かけない。さらに、学校によっては禁止しているところもあるという。なぜなのか。

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「学校から日傘は禁止と言われています」

 そう話すのは、小学2年生の息子がいる東海地方に住む40代の女性。

 自宅は小学校から遠く、子どもの足だと30~40分かかる。子どもたちは登下校の際は帽子をかぶってはいるが、特に下校時は最も暑い午後3時ごろ。40分も炎天下を歩いて帰ってくるので、熱中症が心配だ。

 息子は、顔を真っ赤にして、グッタリと帰宅する日もあり、水風呂に浸かってクールダウンしているという。

 そこで、学校に「下校時だけでも日傘を使わせてほしい」と頼んだが、「両手がふさがると、特に低学年は転んだりして危険なので」とやんわり断られた。でも、と女性は言う。

「手がふさがって危ないというなら、雨傘だって同じはず。もし子どもが熱中症で倒れたら、誰が責任を取ってくれるのでしょう」

■「日傘はNG、雨傘はOK」に疑問

 女性の疑問はもっともだ。

 日傘はNG、雨傘はOK--。こうしたルールは各地の学校で見受けられる。

 SNSには、「通学路が狭くなって、他の通行者が迷惑するので日傘はダメと言われた」「視界が遮られて危ないからNGと言われている」といった声が散見される。

 では、子どもたちは、日傘についてどう考えているのか。

 医療脱毛専門院の「リゼクリニック」は2024年5月、小学生(4~6年)・中学生・高校生の女性400人を対象に「夏の紫外線対策と美容調査」のネット調査を実施。その中で「日傘」について聞いたところ、小学生の7割、中学生は約6割、高校生は5割強が「日傘を使いたい」と回答した。

「使いたい(使う)理由」(複数回答)は、小学生は「日焼けしたくない」が79.2%とトップ。続いて「直射日光がまぶしい/肌を綺麗に保ちたい」が同率で58.3%、「暑い」が54.2%となった。実際、日なたで日傘を差した状態と差していない状態で比較すると、体感温度は4度近く低下するという。

 にもかかわらず、「雨傘はOKで日傘はNG」という、ダブルスタンダードといえるルールに、保護者たちの間で戸惑いが広がる。

■「日傘はNG、雨傘はOK」に疑問, ■「両手がふさがらないもの」に突っ込み, ■日傘を差すかどうかは本人が決めること, ■日傘推奨の自治体も

■「両手がふさがらないもの」に突っ込み

 小学2年生の娘がいる都内在住の会社員の女性(44)も、日傘についてモヤモヤしている。

 先月、学校から届いたお便りには、「熱中症対策」として「首に巻くタイプのように両手がふさがらないものが安全上よい」「扇風機(ハンディーファン)のように動いたり音が出たりするものは使用しない」といった記載があった。

 日傘については明記されていなかったが、「両手がふさがらないものが安全上よい」ということは「日傘はNG」と受け取れる。そういうこともあり、娘は首に巻くタイプのネッククーラーを着けて通学している。周囲に日傘を差してくる児童は見当たらず、やはり日傘はダメなのかと思っていたら、娘から「友だちが持って来ているから欲しい」と魔法瓶型の氷嚢をねだられて購入したという。女性はこう漏らす。

「両手がふさがらないものが安全上よいと言いつつ、氷嚢はOKというのがよくわかりません。雨傘はどうなんですか?と突っ込みたくもなりますし……」

 そこで、東京都教育委員会に聞くと、都として熱中症対策で日傘に関する「基準は設けていない」という。

「最終的には、学校の実情を踏まえ校長先生が決めることになりますので、都としては(日傘を)推奨することも禁止することもしていません。今後、議論が必要になってくれば、基準を設ける可能性もあります」(都指導企画課)

■「日傘はNG、雨傘はOK」に疑問, ■「両手がふさがらないもの」に突っ込み, ■日傘を差すかどうかは本人が決めること, ■日傘推奨の自治体も

■日傘を差すかどうかは本人が決めること

 だが、新渡戸文化学園理事長で、放課後NPOアフタースクール代表理事の平岩国泰さんは、「日傘使用の『可否』を大人が議論すること自体が行きすぎた考え」と指摘する。

「雨の日に傘を差すかどうかを本人が決めるのと同様、日傘の使用は子どもの健康や個人の権利に関わる問題です。特に、これほどの猛暑の中で日傘を禁止する権利は、大人にはないと思います」

 例えば、プールの授業で紫外線防止などを目的とした「ラッシュガード」も、かつては着用禁止のところもあったが、今では禁止できない流れになっている。日傘についても、熱中症を心配したり日焼けをしたくないという個人の希望があったりすれば、大人側が「ダメ」と言う合理的な理由はない、と平岩さんは言う。

「日傘を差すことで両手がふさがり安全上の問題があるのなら『上手に使おうね』と教え、通学路が狭くなっているのであれば『広がらないようにしよう』と指導することで解決します。日傘自体を禁止するのではなく、どうすれば安全に使えるかを子どもと一緒に考えるのが大人の役目です」

■日傘推奨の自治体も

 そうした中、日傘を推奨している自治体もある。

 栃木県の県央南部に位置する壬生町。町では、気温が高くなる6月中旬から9月下旬の間、「傘差し登下校」として小学校に日傘の利用を推奨している。

 同町教育委員会によれば、取り組みが始まったのは新型コロナ禍の20年度。ソーシャルディスタンスの確保による感染防止と、熱中症対策を目的に導入された。

 当初は両手がふさがることでの安全性を懸念する声がごく一部にあったが、6年目の今ではすっかり浸透。町内に八つある小学校で7~8割の児童が日傘を差して登下校しているという。同町教育委員会学校教育課主幹兼指導主事の高橋唯拓(ただひろ)さんは、「傘の使用は個人の判断に委ねておりますが、『暑ければ傘を差す』という子どもたちは増えています」と話す。

 子どもの日傘と学校――。おかしなルールを見直す、そんな夏にしよう。

(AERA編集部・野村昌二)