カップ麺でもお茶漬けの素でもいい! 「何もしたくない日」に届く出前夜食のレシピ本

子どもの夏休みの昼ごはんは負担大

夏休みが始まり、学校の給食がなくなった。子どものいる多くの家では、平日のお昼も用意しなければならなくなる。

「子育て×夏休みアンケート調査」(2021年6月22日〜7月12日コクリコラボが実施した「AnyMaMa(エニママ)」登録者へのインターネットアンケート)では、子どものいる9割以上の家庭で、夏休みのお昼ごはんは家で用意しており、約8割がそれを負担に感じていると回答していた。

負担と感じるのは、当然のことである。現在、共働き世帯は全体の7割を超えている(総務省統計局2025年2月14日発表の「労働力調査(詳細集計)」の2024年平均結果より)。夫婦のどちらが用意するにしても、仕事の合間の炊事は、毎日のこと。料理が趣味でもないかぎり、「楽しみ」なんて言ってはいられない。

だが、「料理が大変」なのは、子どものいる世帯ばかりではない。

FRaU web編集者の筆者が20代、30代の頃を思い起こせば、シングルは仕事を頼まれやすく、時代もあったと思うが、つねに残業の毎日だった。ぐったり疲れて帰宅すれば、自分ひとりのために何か作ろうなんて、気力も起きない。あの頃は、ウーバーなんてものもなかった……

心身疲れたそんな日に、読みたくなるのが、2023年11月発売された『疲れた人に夜食を届ける出前店2』(中山有香里著/ KADOKAWA)、前年刊行の『疲れた人に夜食を届ける出前店』の続編である。

看護師とイラストレーターを兼業している著者の中山有香里さんは、2022年1月に初の創作漫画『泣きたい夜の甘味処』を出版し、第9回料理レシピ本大賞 in Japanを受賞。同年10月に出版した本書の1巻で、2年連続で第10回料理レシピ本大賞 in Japan コミック賞受賞している。

発売以来、SNSでは、「絵が可愛すぎる。彩りが綺麗です。心も体も癒されました」「体も心も疲れ切った私に染み渡る本でした」「明日も頑張ろう、大切に過ごそうと思えるようになりました」などの感想とともに、続編を待ち望む声が多くあがっていた。

『疲れた人に夜食を届ける出前店2』(中山有香里著 / KADOKAWA)

疲労のピークに達した“第9週目”以降の夜食として、食事系に加えて、クリームソーダやショートケーキなどもお目見えする。届けてくれるのは、今回も心優しいクマの店主や相棒のサケ、思いやりにはあふれるがちょっと図々しいゴリラに、成長著しい吉村などである。 

鮭ハラス丼イクラのせ、さらに追いイクラ

第9週目、初日の月曜日はカップ麺とサケおにぎり。時々食べるカップ麺は妙においしく、スープを汁がわりにおにぎりも進んでしまうものだが、会社までわざわざ出前してくれる気遣いもありがたい。

続く火曜日。帰宅した男性の家で、ソファに寝転んだゴリラが「イカゲーム」を見ている。驚く男性を尻目にそそくさと台所に立つゴリラ。大きな手から差し出されたのはごま油の香りのよい、「おかかチーズおにぎり」だった。

水曜日は雨の中、おつかれ女子の家に、ネコがおかもちを持ってやってくる。ネコは彼女の通勤時は塀の上でゴロゴロしているが、今夜はやけにてきぱきと動く。丸いちゃぶ台に、鮭ハラス丼イクラのせ、あおさ味噌汁を並べ、「追いイクラ」までしてくれる。「つらいときはイクラ かけすぎてもいいぞ」というネコの励ましを聞きながら、彼女はもりもり食べ始めた。 

週の折り返し、木曜日は、クマのお店の様子が紹介される。店主のクマが初めて会うのは、魔王がスカウトしてきた元ひきこもりの吉村くん。

かつては不幸のオーラをまとっていたが、最近では料理もするようになった。そんな吉村くんの作る夜食は、お茶漬けの素を使った「梅茶漬け」。

お茶碗にごはんを盛り、お茶漬けの素をかけて、種を取った梅干しをのせて、緑茶をかける吉村くんは、なんだか少し得意そう。 

梅干しのかわりに、天かす、あるいはとろろ明太、もしくは薬味をのせるのもいいと、吉村くんを陰に表に支える魔王様がアドバイスを添える。みんなが応援する吉村くんの成長っぷりは、みんなの喜びでもある。 

「一生懸命生きた、スゴイ! エライ!」

週末を目前にした金曜日は、そんな吉村くんが立つ屋台から「クリームソーダ」。メロンシロップで色と香りをつけたソーダにシュワワワと浮かぶバニラアイスがまぶしい。自分で作る時は、アイスをのせる時にグラスからあふれさせないよう、サイダーはグラスの8分目までに。そして缶詰の赤いさくらんぼも忘れずに。

週末の土曜日は、自分のできなさ加減に落ち込む男の子に、クマとサケが、ショートケーキとともに、元気になる言葉をたくさんかける。

「朝起きたの スゴイ」「一生懸命生きた スゴイ!! エライ!!」

実際、朝決めた時間に起きる、一日を全力で生きる、どちらもスゴイことではないだろうか。近くに「できる」人がいると、とかく私たちは比べて、うまくできない自分に落ち込みやすい。

50代半ばにして最近普通車の免許を取ったばかりのFRaU web編集の筆者は、パーキングの定位置に車を「まっすぐ停められる」人は、本当にスゴイと思う。誰かにとって「こんなこと、誰だってできる」ことも、他の人には「そんなこと、できるなんて本当にスゴイ」と思わせているかもしれないのだ。 できないことに落ち込むより、できることで自分を認めてあげたい。 

そして週の最後の日曜日、明日に備えて「寝たいのに寝られない」男性の家に届けられたのは、あたたかな月見うどん。

卵を落とし、ねぎとかまぼこをのせただけのシンプルな丼は、寝られずに焦る彼の心を和ませ、きっと安らかな気持ちにさせてくれるだろう。

◇ウーバー以上の、ホスピタリティ付き出前。こうした癒しを求めている人はまだまだいるはず。

文責:風間詩織(FRaU web)

後編「『焼き芋にはバニラアイスをトッピングして』疲れた心と体に効く甘やかしの夜食屋台」では、心の疲れ、モヤモヤが晴れない人たちと、そのモヤモヤをなんとかしようとしてくれる出前人たちの、第10週目のお話を紹介する。