ガソリン車・ハイブリッド車が敗北! JAF実験が示すEV「冠水60cm突破」の実力、しかし火災リスクの落とし穴も
冠水試験に見るEV優位
異常気象の常態化により、日本各地でゲリラ豪雨が頻発している。短時間に集中して降る雨が都市部の排水能力を超え、日常的に使う道路でも冠水被害が相次いでいる。車両の水没による損害も深刻だ。
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では、車はどの程度の冠水に耐えられるのか。日本自動車連盟(JAF)は、
・ガソリン車
・ハイブリッド車(HV)
・電気自動車(EV)
の3車種を使い、水深30cmおよび60cmの冠水路で走行実験を実施。速度を変えて各車両を水中走行させ、深さと速度の違いによる影響を比較した。
走行距離は100m。まずガソリン車は、30cmの浅い冠水路を低速で進んだ場合のみ走行可能だった。それ以外ではエアクリーナーやエンジン内部、車室内に水が入り込み、走行不能となった。
HVも同様に、60cmの深さで高速走行するとエンジンが停止し、動かなくなった。基本構造がガソリン車と近いため、影響はほぼ同じだったとみられる。
一方、EVは水深60cmの冠水路に高速で進入しても走破に成功。複数の警告灯が点灯したが、走行機能そのものに大きな問題は見られなかった。
この実験から見えるのは、冠水環境におけるEVの相対的な強さだ。水に対する電気部品の防水設計や吸気機構の違いが、結果の分かれ目となった。都市型災害への備えとして、EVがひとつの選択肢となる可能性も示唆される。
冠水路走行時の構造差

EV充電スタンド(画像:写真AC)
EVが深い冠水路を走破できた最大の要因は、内燃エンジンを搭載していない点にある。
ゲリラ豪雨や台風の後、冠水路で立ち往生する車両を多く見かける。その大半はエンジンが停止し、走行不能に陥ったガソリン車やHVだ。これらの車両は空気を取り込むことでエンジンを動かしている。吸気ダクトはエンジンルーム内にあり、水に浸かるとエンジン内部に水が侵入する。
この水の侵入が致命傷となる。わずかな水分でも点火不良を起こすうえ、内部部品を破損させる可能性がある。最悪の場合、エンジン全体の交換が必要になる。
一方、EVはモーターで駆動するため、外気を取り込む構造が不要だ。この構造上の違いが、水没時の耐久性に大きく影響している。冠水した路面でも、致命的な障害がすぐに発生するリスクは低い。
もちろん、EVにもリスクはある。実験では複数の警告灯が点灯しており、電装系のセンサーなどが一時的に異常を検知した可能性がある。車両内部の電装品は原則として防水設計が施されているが、水圧や浸水時間が影響するケースもある。
加えて、走行直後には問題がなくても、時間が経過してからトラブルが顕在化することもある。冠水路への進入は車種に関係なく、極めてリスクの高い行為と認識すべきだ。
EV火災を招く内部浸水

EV(画像:写真AC)
冠水路を脱出できたとしても、車両内部には深刻なリスクが残る。最悪の場合、火災につながる危険がある。
2021年8月、佐賀県で発生した豪雨では市街地が浸水し、多くの車が水没した。そのなかにはEVも含まれていた。あるEVは浸水から2週間後、突如発火して全焼。けが人はなかったが、車両は完全に焼損した。所有者は一度も車を動かしていなかったという。
火災の主な原因として、電気系統の漏電やショートが挙げられる。水が車内に浸透し、基盤や配線に異常を引き起こした可能性がある。
JAFの実験では、EVが冠水路を走行できたものの、警告灯が複数点灯していた。走行可能だからといって、内部にダメージがないわけではない。とくに電気系統は目に見えにくいが、浸水によって劣化やトラブルを抱えている場合がある。
警告灯が示す異常箇所以外にも、潜在的な問題は存在する。EVであっても冠水した場合は、安全を確保するために速やかに点検と処置を行う必要がある。
浸水後対応の重要性

EV充電スタンド(画像:写真AC)
冠水した車には、見えない場所にも水が侵入している可能性が高い。そのまま使用を続ければ、被害が広がる恐れがある。
冠水の程度には差がある。タイヤが浸かる程度ならともかく、車の底面を超えるレベルになると危険度は一気に増す。この深さになると、エンジンルームや車内にも水が入り込む。こうした状態の車両は、必ず専門業者の点検と処置が必要になる。
国土交通省は、冠水した車の対処方法として3つの基本対応を示している。なかでもHVやEVは、高電圧バッテリーを搭載しているため、特に慎重な対応が求められる。
まず、自分でエンジンをかけてはいけない。次に、車を再び使用したい場合は、すぐに販売店や整備工場へ相談するべきだ。加えて、補機バッテリーのマイナス端子を外すことで、発火リスクを最小限に抑えられる可能性がある。
ただし、ユーザーが自分でできる対応には限界がある。初期対応を終えたら、速やかにプロによる点検を受ける必要がある。これを怠れば、2021年の佐賀県での事例のように、浸水から時間が経ってから突然の火災が起こるリスクがある。周囲を巻き込む二次被害に発展する可能性も否定できない。
ゲリラ豪雨は、想像を超えるスピードで道路を冠水させる。不運にも冠水してしまった場合は、迷わず販売店や整備工場に連絡し、適切な処置を講じることが安全確保の第一歩となる。