配信開始「火垂るの墓」初めて見る若者が急増の訳

「初めて観た」「子どもと一緒に観た」などの声, ジブリになじみがない世代が増えている?, 久しぶりに観てみると……, 戦後80年の今こそ、思い出したい重み

ジブリの名作『火垂るの墓』がついにNetflixで公開された(出所:Netflix Japan公式X)

戦後80年の夏に、スタジオジブリ不朽の名作が帰ってきた。

【画像】大人になると共感する?「西宮のおばさん」"正論"シーン

『火垂るの墓』(1988年)のNetflix国内配信が今月スタートし、反響を呼んでいる。海外Netflixでは昨年9月から配信されていた同作だが、国内での配信はこれが初めてだ。

地上波での放送は、高畑勲監督の逝去を受けた2018年4月の特別番組が最後。現在まで7年もの空白があり、この10年でも2度しか放送されていなかった。

「初めて観た」「子どもと一緒に観た」などの声

そんな久しぶりの登場がジブリとしてのサブスク初解禁とも重なったことで、今回大きな注目を集めている。SNSで映画の感想を探すと、今回『火垂るの墓』を初めて観たという人の反応がいくつも目に留まった。特に二十歳前後や学生など若い世代の投稿主から「人生初だった」「衝撃がすごい」「落ち込んでる」といったコメントが並んでいる。

大人からは久々に観た、という反応も多い。「子どものときは怖いイメージだったけど、今はひたすら悲しい」「小学生の子どもと一緒に観た。親になったからよりつらく感じる」などの声もあり、配信をきっかけに幅広い層に作品が届いている様子がうかがえる。

その中でふと目に留まったのが、「タイトルは知ってたけど、ジブリ作品だったのか」というコメント。意外ではあるものの、『火垂るの墓』が長らくテレビ放送も配信もされていなかった状況を考えると、そのような人がいても不思議ではない。

ジブリになじみがない世代が増えている?

ジブリの旧作を国内で観るための方法は、今のところ「DVDやBlu-rayを購入・レンタルする」か「地上波の再放送を待つ」のどちらかしかない(『火垂るの墓』は今回配信されることになったが)。

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「観たいけど配信してなくて残念」という声も多いジブリ映画(出所:Netflix Japan公式X)

だが最近ではレンタルビデオショップの閉店ラッシュが続いていて、生活圏内でDVDやBlu-rayを借りられる場所がないという人も珍しくない。そのため実質的には、「地上波の再放送」がほぼ唯一残されたジブリ作品の入り口である。

けれどテレビで流れる映画は、ご存じのとおり見逃し配信されない。ドラマやバラエティのようにTVerで無料視聴できるわけではないため、「観たくてもちょっと面倒」なのが難点と言えるだろう。

「テレビ視聴習慣があまりない」「テレビを持っていない」という若い世代を中心としたテレビ離れ層にとっては、ジブリ作品に触れる機会がもっと少なくなっているはずだ。

LINEリサーチによる調査レポート(2023年)によると、単身世帯のテレビ保有率が全世代では7割台後半であるのに対し、10代では5割台後半、20代では7割弱と平均より低い傾向。対してパソコンの所有率は10代・20代ともに7割台で、テレビよりもパソコン保有率が高い結果だ。この傾向は今後も加速化していくだろう。

若年層の“テレビ離れ”が進むにつれ、その陰では“ジブリ離れ”も静かに進行しつつあるのかもしれない(そうなってしまうのは、個人的には寂しい限りだが……)。

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「西宮のおばさん」の台詞が耳に焼き付いている人も多いだろう(出所:Netflix Japan公式X)

久しぶりに観てみると……

だからこそ今回のNetflix解禁は、ジブリにこれまで縁がなかった層や、しばらく触れていなかった層に作品が届く好機である。幼少期にビデオやDVDでジブリ作品をひと通り観て育った平成初期生まれの筆者も、久しぶりに『火垂るの墓』を観た。

今観ると、子どものときに感情移入していた清太が幼く感じる、というよくある印象の変化はあったものの、観終わったあとの無力感ややるせなさは、やはり変わらなかった。名作であるがゆえに「あまりに悲しくて直視できない」という声もよく聞くが、なぜ『火垂るの墓』はこんなにも人の感情を強く引き出すのだろう。

観る者の五感や身体感覚に訴えかけてくるリアリティが、そこにあるからだと筆者は考えている。だからこそ視聴者は、戦時下を生きる清太や節子を自分の感覚に引き寄せ、より身近に感じずにはいられない。

よく知られているドロップ缶は、「味覚」によって兄妹にひとときの幸福をもたらす象徴的なモチーフだ。飴がなくなったあと、空き缶に注いだ水を美味しそうに飲む節子の姿に、その微かな甘みをつい想像してしまう。

「初めて観た」「子どもと一緒に観た」などの声, ジブリになじみがない世代が増えている?, 久しぶりに観てみると……, 戦後80年の今こそ、思い出したい重み

節子役を演じた白石綾乃は、当時5歳の子役だった(出所:Netflix Japan公式X)

日常に溶け込む死の気配は、「嗅覚」や「触覚」を伴って生々しく描かれている。神戸大空襲によって全身やけどを負って命を落とした清太と節子の母親が、いくつも重なった遺体の山に投げ込まれる場面は衝撃的だ。夏の炎天下に無数の遺体が淡々と火葬される様子に、清太が感じたであろう熱気やにおいを想像してしまう。

戦後80年の今こそ、思い出したい重み

そして、清太と節子の横穴での暮らしがしだいに困窮していく物語の後半。やせ細った節子の肌に広がるじくじくした湿疹は、見ているだけで自分の「触覚」まで刺激されているような感覚になり、胸が痛む。4歳の小さな身体に抱えた不調はどんなにつらいものだっただろう。その後の結末は、多くの人が知るところだ。

本作には少年の頃に戦争を経験し、栄養失調で1歳の妹を亡くした原作者・野坂昭如の実体験から来る罪の意識が込められている。視聴負荷が少なく気軽に見やすい作品が好まれやすい今だからこそ、『火垂るの墓』のような作品と向き合う気持ちを忘れずにいたい。戦後80年という節目の今年、作品を通して時代の記憶に耳を傾けてみてはいかがだろう。

「初めて観た」「子どもと一緒に観た」などの声, ジブリになじみがない世代が増えている?, 久しぶりに観てみると……, 戦後80年の今こそ、思い出したい重み

(出所:Netflix Japan公式X)

「初めて観た」「子どもと一緒に観た」などの声, ジブリになじみがない世代が増えている?, 久しぶりに観てみると……, 戦後80年の今こそ、思い出したい重み

(出所:Netflix Japan公式X)