欧州をなじった口でインドを絶賛...バンスの頭には中国に対抗することしかないのかも

プライベートな旅行のはずなのに、ジャイプールで演説をするバンス Vishal Bhatnagar/NurPhoto-Reuters
<プライベートなインド旅行を楽しむバンス米副大統領の一家。しかしなぜか、インドで演説をした挙句、モディ首相とも会談してしまう>
J・D・バンス米副大統領は、「21世紀の未来は米印パートナーシップの強さによって決まる」と述べた。2カ月前、ヨーロッパで伝統的なアメリカのNATO同盟国に浴びせた痛烈な叱責とはあまりにも対照的だ。
この発言は、訪印中のバンスがインド北西部の歴史都市ジャイプールでの演説で述べたもの。第2次大戦以降のアメリカによるヨーロッパ諸国との強固な関係から離れ、トランプ政権が「より友好的」と見なす新たな強国との関係構築を目指すアメリカの路線変更を示す兆候といえる。
インドは世界最大の人口を擁するだけでなく、軍事、経済、外交の各方面で中国への対抗勢力となっている国でもある。インドを率いるナレンドラ・モディ首相も、ドナルド・トランプ米大統領と同様、強いナショナリズムを掲げるポピュリスト的指導者だ。
「インドとアメリカがうまく協力できれば、私たちは繁栄と平和の21世紀を見ることになると信じている」と、バンスは演説した。「しかし、うまく協力できなければ、人類全体にとって非常に暗い時代になる可能性もあるだろう」
さらに、「アメリカはインドがより強くなることが経済的繁栄をもたらすと同時に、インド太平洋地域全体の安定につながるだろう。これはこの場にいる我々全員が共有する目標であり、米印双方にとっての共通目標だ」とも述べている。
バンスはまた、インドがアメリカ製兵器をさらに多く購入できる可能性や、アメリカのエネルギー企業がインド市場で活躍する見通しにも言及した。
そんな演説をぶったバンスだが、実は「ほぼプライベート」なインド訪問中の出来事だった。インドにルーツを持つ妻ウーシャと3人の子供と共に訪問していた。
私的な旅行であるにもかかわらず、関係強化を訴える演説を行ったほか、首都ニューデリーでモディ首相とも会談。トランプがインドをも対象とした関税の問題や、2国間貿易協定に向けた計画についても話し合った。
バンスのインドに対する前向きな発言は、今年2月に開催されたミュンヘン安全保障会議での発言とは対照的だ。バンスは同会議で、NATO加盟国を含むヨーロッパ諸国が言論の自由を弾圧していると言い張り、大量の移民を止められないと非難した。
「私が懸念しているのは、内部からの脅威だ」と、バンスはヨーロッパの指導者たちに向けて語った。「自国の有権者を恐れて逃げ回るようでは、アメリカがあなた方のためにできることは何もない。それどころか、あなた方自身もアメリカ国民のために何もできない」
ウクライナ戦争が続く中、トランプ政権がウクライナへの支援を削減していることからも、ヨーロッパが最早アメリカの優先事項ではなくなり、中国への対抗がより重要視されていることが明白になっている。
トランプ政権がインドを極めて重要な存在と見なしている背景にも、中国への対抗がある。中国との貿易戦争によって止められる可能性のある製品の代替供給元としても、インドに期待を寄せている。
一方、インド側の反応はどうか。外務省のランドヒール・ジャイスワル報道官はX(旧ツイッター)に、「インドとアメリカのパートナーシップは、戦略、経済、技術の各分野で引き続き深まっている」と投稿した。
次に注目されるのは、両国が貿易協定を締結できるかどうかだ。これまで多くの国々がアメリカとの交渉に苦戦していることからも容易ではない。同様に、安全保障面での協力も重要となるだろう。
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マシュー・トステビン、ダニシュ・マンズール・バット