元バレリーナがデザイナー「羽衣シャツ」なら、日常、旅行、「異世界」...ふわり、跳び上がれる【吉岡久美子/JAXURY】

毎日使うもの、愛するものについて語るとき、なぜか、大切にしている言葉や物語になってしまう。わたしたちは、ものをものだけとして見て、愛することはできない。その背景にある「ものがたり」を愛しているから。

 

元バレリーナがデザイナー「羽衣シャツ」なら、日常、旅行、「異世界」...ふわり、跳び上がれる【吉岡久美子/JAXURY】

コットンの白シャツの上に、チュールシャツが二重になっている。元バレリーナのデザイナー幾左田千佳による、バレエのエレガンス、パンクの生命力――儚さと強さ、相反するイメージの融合から生まれる「強いエレガンス」がコンセプトの「チカキサダ」。仕草や動きにともなって漂う人間の美しさを生かしている。

長い休みは、日常の外に、身も心も動かしたい。一枚でも、アウターでも使えて、空気と光をはらむ羽衣のようなこのシャツは、日常でも旅行でも、大活躍する。「羽衣」が、古来、現実世界と異世界とのスイッチアイテムだった伝説は、偶然ではなさそうだ。

イベントやアート体験、読書もふくめ、日常とは異なる世界に浸るだけでも、それは「旅」。

「異世界」もの、と呼ばれる、フィクションでは定番人気のジャンルに没入する人も多い。そこで気づく。「異世界」とは言うけれど、「非世界」とは言わない、という事実。

日常慣れ親しんだ「世界」とは違う、「別の世界」というリアリティにこそ、人は夢中になる。ならば、非日常ではなく、異日常という視点で、旅をとらえてもいい。

私たちが「日常の外」に求めているのは、「非日常の世界」ではなく、私たちの生活の基盤となる日常とは違う場所で、日々営々と行われている、「異日常の世界」かもしれない。

そこだけに流れる空気があり、生活がある「異日常」。旅先での、朝市、土地の人との触れ合い……いつもの日常とは別の日常が流れている世界に触れることで、元の日常に戻っても、旅を経験する前にはなかった、新鮮な感覚が生まれている。

「羽衣」といえば、天女の羽衣。天女はまさに異世界=天から来た女性だ。数ある羽衣伝説の中、日本最古の物語「竹取物語」では、月からの使者が、かぐや姫に羽衣を着せかけようとすると、人間界でのことをすべて忘れてしまうから、少し待って、と姫は言う。

現代に生きるリアルな私たちは。チュールシャツという羽衣で、日常も「異日常」も自由にスイッチして、その多様な世界をまるごと忘れない「光かがやく姫=かぐや姫」気分を味わいたい。