27歳の長女が2週間「無断欠勤」50歳会社経営者が悩む「前妻との子」の”癖”
子供の仕事に関する相談も増加
2025年7月30日、退職代行サービス『モームリ』を運営する株式会社アルバトロスは、2025年度新卒の退職代行の利用状況の調査結果を発表。退職代行利用者は1,072名にのぼり、昨年(805名)と比べて267名増加していた。男女比率は女性54.2%、男性44.9%で、女性の方がやや多い。
女性の個別の退職理由として、大声の挨拶の強要、研修合宿で30キロ歩く、業務上の罰金制度などを挙げていた。
キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さんは、メンタル心理アドバイザー、夫婦カウンセラーの資格を持つ。「私たちは家族から依頼を受けることも多いです。最近、増えているのは“子供が突然退職して音信不通になった”という問い合わせ。その背景には、実際の求人とは違う条件から脱出したというケースもありますが、ご本人がもともと困難を抱えやすい性質を持っていることもあります。その場合、福祉や医療につなげることもあるのです」
山村さんは「困っている人を救える人になりたい」という気持ちが強い。学生時代は警察官を希望していたが、当時は身長制限があり、受験資格はなかった。一般企業に勤務するが、目の前の人を助けたいという思いは強く、探偵の修行に入る。探偵は調査に入る前に、依頼者が抱えている困難やその背景を詳しく聞く。山村さんは相談から調査後に至るまで、依頼人が安心して生活し、救われるようにサポートをしている。
これまで「探偵が見た家族の肖像」として山村さんが調査した家族のことをお伝えしてきたが、この連載「探偵はカウンセラー」は、山村さんが心のケアをどのようにしていったのかも含め、さまざまな事例から、多くの人が抱える困難や悩みをあぶりだしていく。個人が特定されないように配慮をしながら、家族、そして個人の心のあり方が、多くの人のヒントとなる事例を紹介していく。
今回山村さんのところに相談に来たのは関西地方に住む50歳の会社経営者・哲夫さん(仮名)。「上京した娘と音信不通になった」と山村さんのところに相談してきたのだ。
山村佳子(やまむら・よしこ)私立探偵、夫婦カウンセラー。JADP認定メンタル心理アドバイザー、JADP認定夫婦カウンセラー。神奈川県横浜市で生まれ育つ。フェリス女学院大学在学中から、探偵の仕事を開始。卒業後は化粧品メーカーなどに勤務。2013年に5年間の修行を経て、リッツ横浜探偵社を設立。豊富な調査とカウンセリング経験を持つ探偵として注目を集める。テレビやweb連載など様々なメディアで活躍している。
「このままだと懲戒解雇になる」
依頼者・哲夫さんは日曜日の夜に私たちに電話をしてきました。表示された番号は関西地方の番号です。
「娘の勤務先から、『2週間無断欠勤しており、このままだと懲戒解雇になる』と連絡がありました。本人とも音信不通です。おそらくいつもの“病気”かもしれません。娘のことを調べてほしいのです」と話しています。

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その翌日、哲夫さんは上京し、カウンセリングルームでお会いしました。目が大きくキリッとしており、日に焼けた肌がたくましい。白髪を全く染めていないのに、50歳という実年齢より若く見えます。ネイビーのポロシャツに黒のパンツを合わせて、全体的に清潔感が漂っています。よく見ると、衣服にもハンカチにもアイロンがかかっています。
私がハンカチを見ていることを察すると、「あ、今の妻がやってくれているんです」とはにかんでいました。地元で保険代理店と農業関連の法人を経営しており、全体的に豊かな雰囲気が漂っています。まずは、娘について伺いました。
「娘は27歳で、半年前に上京したというか、させたというか……娘は本当に難しくて、私は手に負えないんです」
「子育てに疲れた」と妻が家出
哲夫さんの話をまとめると、娘は哲夫さんが20代前半に結婚した前妻との間の子でした。前菜は娘が2歳の時に「子育てに疲れた」と離婚届を置いて家を出てしまった。それ以来、音信不通だそうです。

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「一人では育てられないので、実家に戻り両親と共に子育てをすることに。以降は無我夢中で働き、30歳の時に家を建て、33歳の時に会社を興して今に至ります。娘は私の母が育てたようなものです」
哲夫さんは仕事に邁進し、40歳の時に現在の妻と知り合い、一男一女を授かります。妻は現在45歳、哲夫さんの5歳年下で、出会ったときは35歳でした。
「私が再婚した時、娘は高校生でした。妻との新居を実家の近くに建てたのですが、一緒に住まず、私の実家にいます。かといって仲が悪いわけでもなく、弟や妹を可愛がってくれるいいお姉ちゃんでもあるんです」

哲夫さんは仕事で忙殺され、哲夫さんの両親が娘を育てた(写真はイメージです。写真の人物と本文は関係ありません)Phto by iStock
哲夫さんはそう言いますが、娘にしてみれば母はおらず、父は別の家庭を持っているという環境です。哲夫さんは「何不自由なく育てた」と続けます。
「高い私立高校の学費も払って、美容の専門学校も入学させてあげました。でもそこも半年で辞めてしまった。家でぶらぶらしているのも良くないと思い、私のコネで地元のメーカーに入れてやったのですが、10日目から出社拒否して、無断欠勤を続けた後に退職したんです」
その後、娘はアルバイトや派遣社員の仕事をしながら生活していました。恋人と同棲して一時的に出ていったこともありましたが、1年もしないうちに戻ってきたとか。
「私の両親は孫が可愛い。猫っ可愛がりして甘やかしているから、娘はまともに育たなかったのかもしれません」
哲夫さんの言葉には、娘を軽視するようなニュアンスが見え隠れしています。そこで私は哲夫さんが電話で「病気」とおっしゃったことについて伺いました。
人間関係がうまく行かずに転職を繰り返す
「嫌なことがあると、仕事をプイッと辞めちゃうんです。仕事で失敗した、人間関係がうまく行かずに転職を繰り返すことです。まあこの尻拭いが大変なんですよ。健康保険証やら、年金やらそんな手続きはみんな私ですからね」
また恋愛もうまく行っておらず、同棲しては解消したことは数えきれないと言います。
「去年、結婚しそうな彼氏がいて、娘にしては珍しく、1年も同棲した後にその男と別れてしまったんです。理由を聞くと“蛙化だ”って。娘は、好きだった相手に大切にされると、急に気持ちが冷めてしまったり、嫌悪感を抱いてしまうと言っていました。人生も世間も舐めているんですよ。やはりそれは、どんなことがあっても、ウチの両親が受け入れているからでしょうね」
哲夫さんは経営者の表情で娘を分析しています。今回、娘と音信不通になっていますが、放っておけば、哲夫さんの両親が待つ実家に帰ってくる可能性も高い。それにそもそもなぜ、娘を東京に出したのか、そしてなぜ探偵に頼もうとしたのか、さらにお話を伺うことにしました。

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地元には働ける場所がなくなった
「娘を東京に出したのは、もう地元には働ける場所がなくなったからです。田舎は世間が狭いので、あれだけ仕事をバックレていたら、誰も雇いません。あと、娘には自立してもらいたかった。“可愛い子には旅をさせよ”と思い、娘と話し合って東京に出したのです。正直、厄介払いしたい気持ちもありました」
娘が住むマンションは哲夫さんが契約し、引越し代と礼金敷金を支払います。2年間は10万円の家賃を哲夫さんが支払いますが、その後は娘が払うように取り決めをします。

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「もしもの時のために200万円を持たせました。そこで覚悟を決めたのか、自分で就職活動をして、美容関連会社の契約社員になったと報告を受けました。最初のうちは母に“寂しい”と電話をかけていたみたいですが、やがてそれも少なくなり、東京の生活に馴染んでいたと思っていた矢先にこれですよ」
哲夫さんは、娘に対して「今回ダメだったら、もうパパは知らない。見捨てる」と言ったそうです。
「だから、本当に私が手を出してはダメなんです。自分から連絡できないし、様子も見に行けない。私がそれをしてしまったら、また娘が甘え、元の木阿弥になる。やはりこの辺りで娘と決別しなければならないんです。とはいえ娘のことが心配で……娘の生活を調べて報告してほしいのです」
話を聞いていると、哲夫さんは娘を本当に突き放すというよりも、自立させなければならないという思いで関わってきたことがわかります。2歳のときに母親が家出をしたのは胸の痛くなる話ですが、哲夫さんのご両親が娘さんのそのままを受け入れてきたという話が少し安心材料にはなります。とはいえ、娘さんの行動は娘自身も困っていることがある可能性が高いと思われます。急ぎ調査をした方がいいと感じました。
◇後編「「2週間無断欠勤」27歳娘に悩む50歳会社経営者の父が思わず涙した「原因」」では東京でどのように暮らしているのかを調査し、改善策を考えていく。