GeForce RTX 5060 Ti 16GBをゲーム13本で性能検証、RTX 5070の微妙な立ち位置が浮き彫りに

レビュー用にお借りしたPalit製カード「GeForce RTX 5060 Ti Infinity 3 16GB」
2025年4月16日、NVIDIAの最新GPU「GeForce RTX 5060 Ti」(以下、RTX 5060 Ti)を搭載したビデオカードの販売がスタートした。実売価格は9万円前後でWQHDゲーミング向けとなる。グラフィックパイプラインにAIを採り入れる「ニューラルレンダリング」時代に照準を合わせた設計が最大の特徴だ。
しかし、ゲーマー的には「DLSS FG(Frame Generation:フレーム生成)」のさらに上をゆく、「DLSS MFG(Multi Frame Generation:マルチフレーム生成)」のほうが目を引く話題だろう。さらに、eSportsシーンで効果が期待される「Reflex 2」(RTX 50シリーズで先行解放)も注目すべきポイントになる。
前回のレビューでは、AI学習モデル使用時に発生する「VRAM使用量が12GBを超える状況」において、RTX 5060 Ti 16GBの性能が上位モデルであるRTX 5070を上回ることが確認できた。また、1世代前のRTX 4060 Ti 8GBに対しては20%程度の性能向上を確認し、その源泉がGDDR7メモリーにあることもわかった。
RTX 5060 TiもRTX 4060 Tiもメモリーバス幅は128bitと狭いが、RTX 5060 TiではGDDR7を採用したことでメモリー帯域が約1.6倍に拡大している。このメモリーまわりの強化が、ゲームに置いてはどう影響するのかを後編となる本稿で検証していく。
メモリー帯域が強く影響する4K解像度では、RTX 5060 Ti 16GBはどの程度ほかのGPUより強くなるのか? RTX 5070やRTX 4060 Ti 8GBと差がつく場合はどんな状況になるのかなどの観点から考察していきたい。
歴代xx60 TiやSUPERと比較
検証環境は前編とまったく同じだ。RTX 5060 Ti 16GBの上位であるRTX 5070やRTX 4060 Ti 8GBを比較用に用意したほか、やや古めだがRTX 3060 TiやRTX 2060 SUPERを取りそろえた。
また、ベンチマーク中に各ビデオカードが消費する電力はHWBusters「Pownetics v2」で直接計測する。各カードに接続した補助電源ケーブルを流れる電力のほか、PCI Express x16スロット経由で供給される電力についても漏れなく計測ためだ。
ただし、スロット経由の電力を計測するためのアダプター(ライザーカード)を接続する関係上、マザーボードのBIOS設定でPCI Express x16スロットのリンク速度はPCI Express 4.0(Gen 4)に制限している。
今回もGPUドライバーは検証用に配布されたGameReady 575.94を使用した。Resiazble BARやSecure Boot、メモリー整合性およびカーネルモードのハードウェア適用スタック保護、HDRなどはひと通り有効化。ディスプレーのリフレッシュレートは144Hzに設定した。
さて、ゲーム検証編ではおなじみのフレームレートの測定条件は下記となる。RTX 5090レビュー時より解説している内容なので、改めて解説はしない。
1)PCI Expressのリンク速度はGen 4に固定
2)「CapFrameX」でフレームレートを計測
3)フレームタイムは「MsBetweenDisplayChange」基準とする
立ちはだかるRTX 5070の高い壁
ここからさまざまなゲームにおけるフレームレートを検証する。解像度はフルHD(1920×1080ドット)、WQHD(2560×1440ドット)、4K(3840×2160ドット)の3通りで、画質は最高あるいはそれに準じる設定とした。まずはDLSSやDLSS FGを利用しない状況で検証する。
「Overwatch 2」
Overwatch 2ではAPIはDirectX 11、画質は「エピック」をベースにレンダースケール(RS)を100%、フレームレート上限を600fpsに設定。マップ「Eichenwalde」におけるBotマッチを観戦中のフレームレートを計測した。

Overwatch 2:1920x1080ドット時のフレームレート

Overwatch 2:2560x1440ドット時のフレームレート

Overwatch 2:3840x2160ドット時のフレームレート
Overwatch 2ではRTX 5060 Ti 16GBは常にRTX 5070から30%程度下の性能になっている。この点は前編で検証した「3DMark」のスコアーと傾向は同じだ。1世代前のRTX 4060 Ti 8GBに対して、RTX 5060 Ti 16GBは20〜30%上のフレームレートを示している。
ここで注目したい点は、RTX 4060 Ti 8GBとRTX 3060 Tiの差だ。フルHD〜WQHDまではRTX 4060 Ti 8GBが上回っているものの、4KになるとRTX 3060 Tiが僅差で逆転する。解像度が低くRTX 40シリーズが抱える巨大なL2キャッシュが効いている状況ではRTX 4060 Ti 8GBが優勢だが、4KになるとRTX 3060 Tiのメモリー帯域の太さが優位になるというわけだ。
RTX 4060 Ti 8GBはフルHDにターゲットを絞った設計だ。ゆえに、4Kで負けてもいたしかたないと言えるが、メモリー帯域に対する依存度はゲームの作り(メモリーの使い方や取り扱うアセットの大きさ)に依存する。あくまでOverwatch 2ではこうなる、ということだ。

Overwatch 2:ベンチマーク中におけるTBPの平均値(左3つ。単位:W)、および10Wあたりのフレームレート(右3つ。単位:fps)
上の表はベンチマーク時にPownetics v2を通じて観測したTBPと、10Wあたりのフレームレート、すなわちワットパフォーマンスの一覧を解像度別にまとめたものである。RTX 5060 Ti 16GBはフレームレートこそRTX 5070に圧倒的な差をつけられたが、ワットパフォーマンスでは健闘している。さらに言えば、フルHD〜WQHDまではRTX 4060 Ti 8GBとの差もないことがわかる。
「Call of Duty (Black Ops 6)」
Call of Dutyは「Black Ops 6」を使用した。画質は「極限」に設定。ゲーム内ベンチマーク再生時のフレームレートを計測した。

Call of Duty (Black Ops 6):1920x1080ドット時のフレームレート

Call of Duty (Black Ops 6):2560x1440ドット時のフレームレート

Call of Duty (Black Ops 6):3840x2160ドット時のフレームレート
このBlack Ops 6の結果は、今回検証したゲームの中でやや異彩を放っている。トップはRTX 5070で、その30%したにRTX 5060 Ti 16GBが続くが、そことRTX 4060 Ti 8GBが肩を並べているのだ。
このゲームに限っては、平均フレームレートの差は誤差と言っていい。とはいえ、RTX 5060 Ti 16GBのほうがSM数が2基多いことを考えると、今回の評価用ドライバーでは性能がまだ出し切れていないことになる。
RTX 4060 Ti 8GBとRTX 3060 Tiの差も注目してほしい。Overwatch 2ではメモリー帯域の太いRTX 3060 Tiが4Kで逆転していたが、Black Ops 6ではRTX 4060 Ti 8GBが終始優勢である。つまり、このBlack Ops 6に関してはメモリー帯域の影響は少なく、RTX 40シリーズのL2キャッシュが決め手になっていると考えられる。

Call of Duty (Black Ops 6):ベンチマーク中におけるTotal Board Powerの平均値(左3つ。単位:W)、および10Wあたりのフレームレート(右3つ。単位:fps)
RTX 5060 Ti 16GBのTBPは143〜155Wと、定格の180Wに比べるといささか小さい。そして、RTX 4060 Ti 8GBとの差はせいぜい10W程度である。RTX 5060 Ti 16GBやRTX 3060 Tiのメモリー帯域に太さが活きてないことを考えると、妥当な値と言える。
Black Ops 6はVRAMへのアクセス頻度が少ない、あるいはアクセスの効率が悪い設計の描画エンジンではないか、という仮説を立てられる。ただし、これを検証するにはCapFrameXのデータだけでは不足している。
「Sid Meier’s Civilization VII」
Sid Meier’s Civilization VIIでは画質を「高」、アンチエイリアスはFSR 3の「ネイティブAA」に設定。ゲームに内蔵している2種類のベンチマークのうちグラフィック向けベンチマーク再生時のフレームレートを計測した。

Sid Meier’s Civilization VII:1920x1080ドット時のフレームレート

Sid Meier’s Civilization VII:2560x1440ドット時のフレームレート

Sid Meier’s Civilization VII:3840x2160ドット時のフレームレート
かつてRTX 5070 TiやRTX 5070のレビューでこのタイトルを使用した際は、4Kでないと最低フレームレートの出方が安定しないという奇妙な不具合があったが、ようやくこれが改善。フルHDやWQHDでもきちんと最低フレームレートが伸びるになっった。ついでに、ベンチマーク機能のグラフも正しく描画されるように改善していた。
全体の傾向はOverwatch 2に近いものの、RTX 4060 Ti 8GBとRTX 3060 Tiに決定的な差が出ていない点に注目。Black Ops 6と異なり、こちらはメモリー帯域の太さがRTX 3060 Tiのフレームレートを押し上げていると考えられる。

Sid Meier’s Civilization VII:ベンチマーク中におけるTotal Board Powerの平均値(左3つ。単位:W)、および10Wあたりのフレームレート(右3つ。単位:fps)
フレームレートがきちんと出るようになったので、フルHDやWQHDのTBPは4Kと同程度に上昇している。RTX 4060 Ti 8GBから見て、RTX 5060 Ti 16GBはおおよそ30〜40W増しのポジションにある。TBPが増えたぶんフレームレートも上がっているため、ワットパフォーマンスに大きな差は出ていない。
DLSS FGには太いメモリー帯域が必要
ここから先はアップスケーラーやフレーム生成を使用して検証する。最近のゲームはアップスケーラーとフレーム生成において、DLSSとFSR 3を混在できる実装なっているものもある。しかし、DLSS FGに非対応のRTX 3060 TiやRTX 2060 SUPERでは、フレーム生成にFSR 3 FGを使用している。
「Monster Hunter: Wildsベンチマーク」
Monster Hunter: Wildsは公式のベンチマークツールを利用。画質は「ウルトラ」、レイトレーシングは「高」に設定。RTX 5070〜RTX 4060 Ti 8GBではDLSS「クオリティー」とフレーム生成を、RTX 3060 TiとRTX 2060 SUPERでは、FSR 3「クオリティー」とフレーム生成を使用している。
なお、Monster Hunter: Wildsにおいては、アップスケーラーとフレーム生成におけるDLSSとFSR 3の混在は現状実装されていない。ベンチマークシーン再生時のフレームレートを計測した。

Monster Hunter: Wildsベンチマーク:1920x1080ドット時のフレームレート

Monster Hunter: Wildsベンチマーク:2560x1440ドット時のフレームレート

Monster Hunter: Wildsベンチマーク:3840x2160ドット時のフレームレート
Monster Hunter: Wildsベンチマークは今回の検証で最も頭を抱えたテストだった。RTX 5070とRTX 5060 Ti 16GBの差は順当だが、RTX 4060 Ti 8GBはフルHDで平均30fps程度しか出せていないからだ。これはメモリー帯域の細さとDLSS FGの2つが関係している。
RTX 4060 Ti 8GBの場合、今回の検証条件だとフルHDでDLSS FGをオンにすると、逆にフレームレートが下がる。DLSS FGの処理過程においてより太いメモリー帯域が必要になるとすれば、RTX 5060 TiやRTX 5060のような製品にわざわざ高価で入手性の厳しいGDDR7を採用した理由は、DLSS FG(やMFG)がメモリー帯域不足で回らなくなる可能性をつぶすという合理的な判断なのだろう。

RTX 4060 Ti 8GBでDLSS FGを使用しない場合の解像度別フレームレート。上の結果と対比させると、DLSS FGはメモリー帯域の細いGeForceで動かすには厳しいということがわかるだろう

Monster Hunter: Wildsベンチマーク:ベンチマーク中におけるTotal Board Powerの平均値(左3つ。単位:W)、および10Wあたりのフレームレート(右3つ。単位:fps)
RTX 4060 Ti 8GBのTBPが低いワケは、DLSS FGの処理が滞りすぎて本来の描画処理が遅延していることを示している。RTX 5060 Ti 16GBのTBPは180W枠を使い切ってはいないが、将来のドライバー改善で変化する可能性がある。
「Last of Us Part II Remastered」
4月頭にリリースされたLast of Us Part II Remasteredは、まだDLSS MFGには未対応。画質は「非常に高い」、DLSSは「クオリティー」にしてフレーム生成も有効化した。RTX 3060 TiおよびRTX 2060 SUPERはFSR 3のフレーム生成を選択。冒頭付近、エリーが雪山を馬でパトロールするシーンにおけるフレームレートを計測した。

Last of Us Part II Remastered:1920x1080ドット時のフレームレート

Last of Us Part II Remastered:2560x1440ドット時のフレームレート

Last of Us Part II Remastered:3840x2160ドット時のフレームレート
ここでも再びメモリー帯域が最も細いRTX 4060 Ti 8GBの不遇が目立つ。このゲームは前作「The Last of Us Part I」よりはVRAMなどのリソース要求量が減った印象があるものの、それでもVRAMが8GBと少なくメモリー帯域が細いRTX 4060 Ti 8GBでは最低フレームレートの落ち込みが激しくなるのだ。

Last of Us Part II Remastered:ベンチマーク中におけるTotal Board Powerの平均値(左3つ。単位:W)、および10Wあたりのフレームレート(右3つ。単位:fps)
The Last of Us Part II RemasteredではTBPが全体的に低めに出ている印象がある。
DLSS MFG 3xでRTX 5070に並ぶ
ここからはDLSS MFG対応ゲームで検証していこう。先行するRTX 50シリーズの検証では、DLSS MFGは最もフレームレートが伸びる「4x」設定(1フレームの後に3フレームを生成して挿入)を利用していたが、1段落として「3x」設定(2フレーム挿入)とした。
RTX 5060 Ti 16GBのようなGPUでは、描画負荷が非常に重い「Indiana Jones and the Great Circle」をプレイすると、パワー不足でプレイに適さない遅延(E-Eシステムレイテンシー)が発生するためだ。ただし、今回は単なるDLSS FG(一部ゲームでは「2x」と表記されることもある)での動作も検証している。
「Assasin’s Creed Shadows」
Assasin’s Creed Shadowsでは、画質は「最高」、レイトレーシングは「全体的に拡散+反射」設定とした。DLSSは「クオリティー」にしてフレーム生成も有効化。RTX 3060 TiとRTX 2060 SUPERは、FSR 3のフレーム生成を利用した。ゲーム内蔵ベンチマーク再生中のフレームレートを計測。

Assasin’s Creed Shadows:1920x1080ドット時のフレームレート

Assasin’s Creed Shadows:2560x1440ドット時のフレームレート

Assasin’s Creed Shadows:3840x2160ドット時のフレームレート
単なるDLSS FGを利用したRTX 5070と、DLSS MFG 3xを利用したRTX 5060 Ti 16GBのフレームレートがほぼ横並びになる点に注目。つまり、E-Eシステムレイテンシーを重視するなら、VRAMを少々犠牲にしてでもRTX 5070を選ぶべきだし、VRAMを何より優先するならRTX 5060 Ti 16GBが良いということになる。
従来のGeForceとRTX 5060 Ti 16GBの関係については、これまでの検証で観測したパターンに近い。RTX 5060 Ti 16GBはRTX 4060 Ti 8GBに対し、フルHDでは平均フレームレート基準で25%程度向上しているが、WQHDになると43%とさらに差が拡大している。

Assasin’s Creed Shadows:ベンチマーク中におけるTBPの平均値(単位:W)、および10Wあたりのワットパフォーマンス(単位:fps)
DLSS FG(MFG 2x)を利用している限りでは、RTX 5070〜RTX 4060 Ti 8GBまでのワットパフォーマンスはほぼ同じである。それだけDLSS MFGにおけるフレームレートの向上は大きいということだ。
「S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl」
S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobylにおいては、画質は「ウルトラ」、DLSSは「クオリティー」でフレーム生成も有効化した。RTX 3060 TiとRTX 2060 SUPERはFSR 3のフレーム生成を利用。ゲーム中最初に到達する拠点内において一定のコースを移動した際のフレームレートを計測した。

S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl:1920x1080ドット時のフレームレート

S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl:2560x1440ドット時のフレームレート

S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl:3840x2160ドット時のフレームレート。RTX 4060 Ti 8GBより下のGPUは動作が重すぎるため検証から除外している
RTX 5060 Ti 16GBはDLSS MFG 3xを利用することで、単なるDLSS FGしか使わないRTX 5070を超えられる。ただし、どちらもDLSS MFG 3xを使っていれば、RTX 5070が圧倒的に強いことは疑いようがない。RTX 5060 Ti 16GBはWQHDならDLSS FGでも比較的快適だが、4Kになるとフレームレート的にちょっと辛いという感じだろうか。

S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl:ベンチマーク中におけるTBPの平均値(単位:W)、および10Wあたりのワットパフォーマンス(単位:fps)
TBPやワットパフォーマンスの傾向に特筆すべき部分はない。
「Marvel Rivals」
Marvel Rivalsでは画質は「最高」、DLSSは「クオリティー」に設定してフレーム生成も有効化した。RTX 3060 TiとRTX 2060 SUPERはFSR 3のフレーム生成を利用。訓練場で一定のコースを移動した際のフレームレートを計測した。

Marvel Rivals:1920x1080ドット時のフレームレート

Marvel Rivals:2560x1440ドット時のフレームレート

Marvel Rivals:3840x2160ドット時のフレームレート
平均フレームレートだけ見れば、RTX 4060 Ti 8GBも4Kで平均60fps以上だが、メモリー帯域の細さが災いして最低フレームレートの落ち込みが激しい。その点、RTX 5060 Ti 16GBはRTX 4060 Ti 8GBより42%高いフレームレートを出せている。
4K時のVRAM消費量は約8GBなので、RTX 4060 Ti 8GBにはやや厳しい状況と言える。VRAM消費量が下がるWQHD(平均6.7GB消費)だと、RTX 4060 Ti 8GBとの差は20%以内に収まるので、おもにメモリー帯域でRTX 4060 Ti 8GBとRTX 5060 Ti 16GBの差がついていると考えられる。

Marvel Rivals:ベンチマーク中におけるTotal Board Powerの平均値(左3つ。単位:W)、および10Wあたりのフレームレート(右3つ。単位:fps)
RTX 3060 Tiより上のGeForceは、フルHDから4Kへ解像度が上がるほどTBPも少しずつ上昇している。DLSS FG時のワットパフォーマンスはRTX 4060 Ti 8GB〜RTX 5070まで大きな差はない。
「Marvel’s Spider-Man 2」
Marvel’s Spider-Man 2では、画質は「非常に高い」、レイトレーシングは「アルティメット」に設定。DLSSは「クオリティー」にして、フレーム生成も有効化した。RTX 3060 TiおよびRTX 2060 SUPERはFSR 3のフレーム生成を利用。マップ内の一定のコースを移動した際のフレームレートを計測した。

Marvel’s Spider-Man 2:1920x1080ドット時のフレームレート

Marvel’s Spider-Man 2:2560x1440ドット時のフレームレート

Marvel’s Spider-Man 2:3840x2160ドット時のフレームレート
フルHDではRTX 5070>RTX 5060 Ti 16GBという関係だが、WQHDや4Kでは立場が逆転。理由はVRAMであろうことは容易に想像がつくだろう。実際、RTX 5060 Ti 16GB環境におけるVRAM消費量を見ると、WQHDで平均13GB(DLSS FGとMFGでほぼ変化なし)、4Kでは平均14GB消費していた。
そのため、VRAMが12GBしかないRTX 5070ではWQHDや4Kでは無理が出てくるのだ。このように大量のVRAMリソースを要求するゲームはまだ少数派とはいえ、RTX 5070がWQHD以上で負けてしまうとはなんとも残念である。RTX 5060 Tiでメモリー帯域の弱点が改善されたことで、RTX 5070のVRAM 12GBという仕様の微妙さが明確になってしまった感がある。

Marvel’s Spider-Man 2:ベンチマーク中におけるTBPの平均値(単位:W)、および10Wあたりのワットパフォーマンス(単位:fps)
RTX 5070もRTX 5060 Ti 16GBもTBPの実測値は本来のTGPからかなり低い値を示している。RTX 5070で90〜130W、RTX 5060 Ti 16GBで40〜60W下の値になるが、上位のRTX 5070のほうが落ち込みが大きい。特に4Kでは激しくTBPが下がっており、VRAMの要求量が大きすぎてGPU本来の描画処理が滞ったのだと推察できる。
「Indiana Jones and the Great Circle」
Indiana Jones and the Great Circleは、レイトレーシングよりさらに重いパストレーシングを利用できるゲームだが、GPUパワーに対する要求が極めて高い。RTX 5090クラスだと「超ウルトラ」設定でもいけるが、今回はRTX 5060 Ti 16GBのため、特例として画質は「高」、パストレーシングも「高」設定に下げた。
また、DLSSは「クオリティー」にしてフレーム生成も有効化。RTX 3060 TiおよびRTX 2060 SUPERはFSR 3のフレーム生成を利用。マップ「サンタンジェロ城」内の一定のコースを移動した際のフレームレートを計測した。

Indiana Jones and the Great Circle:1920x1080ドット時のフレームレート

Indiana Jones and the Great Circle:2560x1440ドット時のフレームレート

Indiana Jones and the Great Circle:3840x2160ドット時のフレームレート
これまでの経験からVRAM 12GBのRTX 5070ではWQHDが限界、4K+パストレーシングありで動かすにはVRAMは16GB必要とわかっていたが、今回の画質設定でも同様であった。加えて、VRAM 8GBのRTX 4060 Ti 8GB〜RTX 2060 SUPERまでの3モデルに関しては、フルHDでもゲームを起動させることすら不可能である(エラーが出て強制終了する)。
フルHDにおいて、RTX 5070はRTX 5060 Ti 16GBに対して30%程度高いフレームレートを出せたが、WQHDではVRAMの使用量が激増(12〜13GB)。4KではRTX 5070の重さは限界を超え、メニュー操作すらままならなくなる。
ただし、RTX 5060 Ti 16GBはDLSS MFG 3xを併用して4Kで平均60fps出ているが、実際には操作に対する描画のラグが大きく実用的ではない。今回の検証条件だと、RTX 5060 Ti 16GBでもWQHDまで、という設計コンセプトが計らずとも裏付けられた。
ただし、RTX 4060 Ti 8GBの名誉のために付記しておけば、パストレーシングなしで実行すればVRAM 8GB環境でも動かすことはできる。しかし、筆者はゲームの画質は可能な限り盛り、クリエイターの表現したいものを100%摂取したいという姿勢でゲームに挑んでいる。
そのため、パストレーシングなしでIndiana Jonesをテストすることは(筆者としては)許しがたい所業である。ゲームに数千円、ビデオカードに10万円投資して“あなたのシステムでは特定の設定は事実上使えません”は通らないのだ(偏屈な筆者の主観である)。

Indiana Jones and the Great Circle:ベンチマーク中におけるTBPの平均値(単位:W)、および10Wあたりのワットパフォーマンス(単位:fps)
動かなかった解像度とGPUの組み合わせが多かったので、ゼロの項目が多い。RTX 5070がフルHDで200W程度なのにWQHDでは95Wに激減している理由、VRAM不足で描画作業が止まってしまったからだ。RTX 5060 Ti 16GBに関しては、フルスペックで電力を使って処理しているということがわかる。
「Half-Life 2 RTX」
2004年に発売した名作「Half-Life 2」を、NVIDIAの「RTX Remix」を利用してリマスタリングしたタイトルだ。このリマスター版ではAIを利用して間接光の反射を計算する、ニューラルレンダリング技術「Neural Radiance Cache」を採用している。RTX 50シリーズはニューラルレンダリング時代を見据えた設計のため、RTX 4060 Ti 8GBとどの程度フレームレートに差がつくか注目したい。
画質は「Ultra」、DLSSは「クオリティー」にしてフレーム生成も追加した。DLSS 4の学習モデルはTransformerを選択。マップ「NOVA PROSPECT」で一定のコースを移動した際のフレームレートを計測した。

Half-Life 2 RTX:1920x1080ドット時のフレームレート

Half-Life 2 RTX:2560x1440ドット時のフレームレート

Half-Life 2 RTX:3840x2160ドット時のフレームレート
Indiana JonesよりずっとVRAMの要求量が低いため、VRAM 8GBのRTX 4060 Ti 8GBでも動作し、RTX 5070は常にRTX 5060 Ti 16GBを上回っている。全解像度においてRTX 3060 Ti以下のフレームレートがまったく伸びない理由は、GPUの世代的にDLSS FGが利用できず、かつHalf-Life 2 RTXがFSR 3 FGに対応していないためだ。
また、RTX 4060 Ti 8GBはWQHDこそRTX 5060 Ti 16GBの12%落ち程度だが、4KになるとVRAM不足から大きくフレームレートを落としている。ただし、RTX 5060 Ti 16GBでもHalf-Life 2 RTXを4Kで動かすことは現実的とは言えず、MFG 3xを併用する前提でWQHDが限界だろう。

Half-Life 2 RTX:ベンチマーク中におけるTBPの平均値(単位:W)、および10Wあたりのワットパフォーマンス(単位:fps)
TBPの傾向はほぼ同じ。RTX 5060 Ti 16GBとRTX 4060 Ti 8GB(ともにDLSS FG利用時)のワットパフォーマンスはWQHDまでほぼ同じだが、RTX 4060 Ti 8GBがVRAM不足で息切れする4Kに限り、RTX 5060 Ti 16GBのワットパフォーマンスがRTX 4060 Ti 8GBを上回る。
Smooth Motion利用時のパフォーマンスも検証
RTX 50シリーズはゲーム側の実装に関係なくフレーム生成が行えるSmooth Motionに対応している。というわけで、2本のゲームを検証してみた。グラフ中の「(SM)」がSmooth Motion利用時の結果である。
「BIOHAZARD RE:4」
BIOHAZARD RE:4は画質を最高設定とし、レイトレーシング「高」、FSR 2は「クオリティー」に設定。ゲーム序盤で訪れる村落マップを移動する際のフレームレートを計測した。

BIOHAZARD RE:4:1920x1080ドット時のフレームレート

BIOHAZARD RE:4:2560x1440ドット時のフレームレート

BIOHAZARD RE:4:3840x2160ドット時のフレームレート
RTX 5060 Ti 16GBはSmooth Motionを有効化すると、BIOHAZARD RE:4が起動後すぐ落ちてしまった。エラーの出方も落ち方も筆者が以前の検証で試した時と同じため、ドライバーの何かが不具合を起こしているものと考えられる。いずれバージョンアップで解消されるといいのだが……。
BIOHAZARD RE:4は画質を盛るとVRAMを大量に使用するが、今回の検証では4KでもVRAMの使用量は12GB程度に収まった。ゆえに、Smooth Motionを使わない状態でも、RTX 5070はRTX 5060 Ti 16GBに対して平均フレームレートで40%近く上回った。素のパワーもメモリー帯域もRTX 5060 Ti 16GBより高スペックなためだろう。
逆に、VRAM 8GB勢のGeForceはフルHDでも動作が怪しい。フルHDでは約11GBのVRAM(RTX 5060 Ti 16GB環境の平均値)がゲームに確保されるため、VRAM 8GB環境では最低フレームレートが激しく落ち込み、結果として平均フレームレートにも強い影響を与えてしまう。VRAM 8GBのGeForceで遊ぶなら、画質をもっと抑える必要があるだろう。

BIOHAZARD RE:4:ベンチマーク中におけるTotal Board Powerの平均値(左3つ。単位:W)、および10Wあたりのフレームレート(右3つ。単位:fps)
RTX 5070のみSmooth Motionありのデータが取得できた。そして、今回の検証環境においても、Smooth Motionを有効にするとTensorコアでフレーム生成処理をする関係で発生するオーバーヘッドの影響でTBPが下がった。ただし、フレームレートは向上するのでワットパフォーマンスは大きく伸びている。
「Kingdom Come: Deliverance II」
最後は、Kingdom Come: Deliverance IIだ。画質は「実験的」設定とし、DLSSは「クオリティー」、DLSS 4の学習モデルはTransformerを選択。マップ内の一定のコースを移動した際のフレームレートを計測した。

Kingdom Come: Deliverance II:1920x1080ドット時のフレームレート

Kingdom Come: Deliverance II:2560x1440ドット時のフレームレート

Kingdom Come: Deliverance II:3840x2160ドット時のフレームレート
BIOHAZARD RE:4とは異なり、RTX 5060 Ti 16GB環境でもSmooth Motionが効き、フレームレートが倍近く伸びた。RTX 5060 Ti 16GBは素の性能ではRTX 5070にかなわないが、Smooth Motionを併用すればいい勝負になる。
フルHD〜WQHDの領域では、RTX 5060 Ti 16GBはRTX 4060 Ti 8GBに対してわずか3%しか上回ることができていないが、4KでVRAM消費量が12GB近くになると20%近い差がつく。今回はRTX 4060 Ti 16GBを用意できなかったが、もしそれとRTX 5060 Ti 16GBを対決させた場合は、4Kでも大差はつかないと考えられる。

Kingdom Come: Deliverance II:ベンチマーク中におけるTotal Board Powerの平均値(左3つ。単位:W)、および10Wあたりのフレームレート(右3つ。単位:fps)
TBPの傾向はこれまでと同じだ。
まとめ:RTX 5070の立ち位置の微妙さが明確になる
以上でRTX 5060 Ti 16GBのレビューは終了だ。絶対的なパワーという点ではRTX 5070に勝てないものの、VRAMが多量に消費される状況(今回の場合、Marvel’s Spider-Man 2やIndiana Jones)では、RTX 5060 Ti 16GBのほうが快適になることがわかった。この逆転を許したNVIDIAは非常に罪作りだ。
もちろん、RTX 5060 Ti 16GBでもIndiana Jonesの4Kプレイは現実的ではないし、VRAM消費量が控えめなOverwatch 2やBlack Ops 6などのゲームでは、当然RTX 5070のほうがフレームレートは高い。しかし、RTX 5070のVRAM 12GBという制約は、RTX 5060 Tiの上位GPUとして少々頼りない。すでにRTX 5070を手にしたユーザーは非常に悔しい思いをしていることだろう。
一方で、RTX 5060 Ti 8GB版が今回のレビュープログラムに含まれなかった件については、むしろ良かったと考えている。フルHDであっても最高画質設定ではVRAM 8GBでは足りないゲームが、今回の検証では13タイトル中9本もあった。
筆者のゲーム選びにバイアスがかかっていることを承知で言えば、このような環境下において、RTX 5060 Ti 8GBはすでに現実味のある選択肢ではない。そして、RTX 5060 Ti 8GBはVRAM消費量のおとなしいゲーム中心で検証し、RTX 5060 Ti 16GBとは別の視点で評価すべきだろう。
無論誰しもIndiana Jonesをプレイするわけでもないし、プレイしたとしても大多数のプレイヤーはパストレーシングを有効化せずにいるだろう。Spider-Man 2で車のボンネットに背後のビルが正確に反射する光景に、どれほどの価値を見い出すプレイヤーがいるだろうかと考えると、RTX 5060 Ti 8GBも十分現実味のある選択肢という評価になる可能性もある。
ちなみに、上記は今回検証したゲームのフルHD設定時において、RTX 5060 Ti 16GBのVRAMがどの程度消費されたかをまとめたものだ。すべて平均値で比較しているが、13タイトル中9本が8GB以上を消費している(プログラム的には単に確保しただけの消費かもしれないが……)。
将来的にニューラルレンダリングが一般化すれば、同じシーンでもより少ないVRAMで描けるようになるだろう(参考:GitHub上のNeural Texture Compressionレポジトリ)。ただし、これがゲームに取りこまれるのはもっと先になる。DirectStorageの採用スピードを参考にすると2世代後くらいだろうか?

Neural Texture Compression(NTC)のGitHubレポジトリより引用。テクスチャーの圧縮技法であるBCn(ブロック圧縮)よりもVRAMの使用量はもちろん、ストレージ上のサイズも約7分の1になるという(NTC-on-Loadは低スペックデバイス向けの技術なので、NTC-on-Sampleで比較)。これが一般化すればVRAMは8GBでも十分になるかもしれない