2010年代に起きた「アースミュージック&エコロジー」ブームと「カジュアル系女子」たちのゆくえ

ファッションが細分化していた2010年代, 宮崎あおいのピュアな雰囲気が印象的だったCM, 青文字系雑誌のなかのカジュアル系女子, リアルなファッションスタイルとしてのニーズ, 細分化していたなかでの「普遍性」, アースミュージック&エコロジーの変化, カジュアル系ファッションはどこへ行ったのか

2010年代に起きた「アースミュージック&エコロジー」ブームと「カジュアル系女子」たちのゆくえ

ファッションが細分化していた2010年代

原宿系ファッション、お姉系ファッション、姫ギャル系ファッション、ガーリーファッション……。2010年代頃は、ファッションや系統が細分化されて、様々な流行が生まれた時代だ。

この時代に人気だったファッションのひとつに「カジュアル系ファッション」がある。当時の「カジュアル系女子」は男女ともに好感度が高く、人気があった。そして、そのカジュアル系女子からの人気のブランドとして、「アースミュージック&エコロジー」がある。

ナチュラルで程よいトレンドと可愛さがあるアースミュージック&エコロジーは、カジュアル系ファッションを好む女子のポイントを抑えて、2010年代はカジュアル系女子にとって欠かせないブランドとして君臨していた。

なぜアースミュージック&エコロジーはカジュアル系女子に支持されていたのだろうか。今回はアースミュージック&エコロジーを軸として、細分化されていたカジュアル系女子を振り返りたい。

宮崎あおいのピュアな雰囲気が印象的だったCM

アースミュージック&エコロジーは、1999年に誕生したストライプインターナショナルが展開するレディースブランドだ。

ブランド名である「アースミュージック&エコロジー」の語源は、「earth」=「eden(エデンの園=理想郷)」、「art(芸術)」、「heaven(天国)」の頭文字の組み合わせたものになる。「music(音楽)」は「世界共通の言語」を意味し、「ecology」は、長く愛される「普遍性」と「耐久性」を表している。

「あした、なに着て生きていく?」をテーマにオシャレで着やすく、買いやすいアイテムを揃え、メインターゲットは10代から40代と幅広い。

「アースミュージック&エコロジー」 といえば、宮崎あおいのCMの印象が強い。テレビCMが流れる前は、ファッション誌を中心にブランドのプロモーションを図っていたものの、当時の認知度は17%とまだ低かった。

「アースミュージック&エコロジー」のブランド名を広めたのは、2010年から放送されたこのCMの影響が大きいだろう。服をアピールせず、ブランドコンセプトを訴えるCMによってブランド認知度は一気に上がり、楽しげにブルーハーツの曲を歌う、宮崎あおいの姿はシンプルに世界観を伝えるCMとして観る人にインパクトを与えた。

また、余計な情報がないので、「トレンドを抑えたカジュアルでナチュラルなアパレルブランド」という、アースミュージック&エコロジーの最大の強みを浮き彫りにした。

そして、宮崎あおい自身も「自然体でかわいい女の子」というイメージがより強くなっていき、男女ともに彼女に憧れる人が増えていった。当時の宮崎あおいはピチレモンの専属モデルを経て、人気女優へと既に変貌を遂げていたが、同時代は森ガールのアイコンとしても人気が高かった。

彼女自身が、森ガールが理想とする少女性と、アースミュージック&エコロジーのような自然体のイメージを使い分けていたかは、本人にしか分からない。しかし、少なくとも彼女を観る側からすると、両方の宮崎あおいに対して、当時は何も違和感を感じなかったのが、現在も活躍する女優としての片鱗がうかがえるように思う。

また、このことに関しては、同じく当時、森ガールのアイコンでもあった蒼井優にも当てはまるだろう。

青文字系雑誌のなかのカジュアル系女子

今宿麻美、宮崎あおい、田中美保、蒼井優……。人気モデルや人気若手女優が雑誌の表紙を飾っていたこともあり、当時のカジュアル系ファッションは、憧れる女子が多かった。

アースミュージック&エコロジーを始めとして、2010年頃は「カジュアル系女子」の人気は確かに高まった時期だった。

しかし、実際の記憶や印象は人によってイメージが異なるのではないのだろうか。邦ロックと古着が好きなカジュアル系女子、裏原ブランドを好むカジュアル系女子、モード系をMixさせたカジュアル系女子、森ガールのようなフェミニン要素の強いカジュアル系女子……。

「カジュアル系女子」を一言で語るのが難しいのは、当時は様々な雑誌が乱立していたところにあるだろう。

平成の女性ファッション誌は、赤文字系・青文字系・ギャル系雑誌と大きく3つに分かれていたが、その中でも青文字系雑誌の数は多かった。当時の青文字系雑誌の代表的な存在が、まさしく『Zipper』と『CUTie』であるが、改めてカジュアル系女子を振り返ってみると、『Zipper』と『CuTie』のファッションとは一線を画していた。

例えば、『Zipper』は服飾学生が主に読者モデルとして誌面に登場しており、同じカジュアル系ファッションでもストリートファッションが好まれていた。活動するエリアも、主に原宿であり、他と被らない「個性」や「クリエイティブ」というのを重要視していた。

また、ファッションは自己表現という意識が高く、同じ系統でも、目指しているところが違うように感じる。

リアルなファッションスタイルとしてのニーズ

その中で、2010年代頃は原宿系に特化していない青文字系雑誌は、リアルなファッションスタイルとして非常にニーズが高かった。

赤文字系雑誌が『JJ』、『ViVi』、『CanCam』の3誌に対して、『Zipper』と『CUTie』を含まない青文字雑誌は、『mini』、『mina』、『PRETTY STYLE』、『Soup』、『SEDA』、『JILL』と数える限り、 6誌以上はあった。

同じファッションの系統でも、各雑誌のコンセプトも明確に分かれており、それぞれの雑誌の購入層も細分化されていたことがわかる。

現在はコンセプトやテーマが変化してリニューアルされた雑誌もあるが、それでも2010年頃は「カジュアル」を軸にした雑誌が微細に異なるさまざまなコンセプトや系統とともに存在していた。

例えば、2000年に創刊した『mini』のコンセプトは「モテるボーイシュ」。

2001年に創刊した『JILLE』(ジル)は、「20代の女性+ワンランク上のリアルカジュアル」、『PRETTY STYLE』(プリティー・スタイル)は、20代前半の"カジュアルファッションが大好きな女のコがテーマだった。

細分化していたなかでの「普遍性」

彼女たちの愛用するブランドも、各雑誌によって多少の相違点があった。

『mini』の読者には、「X-girl」や「BEAMS BOY」などといった裏原宿系ブランドの人気が高く、『PRETTY STYLE』の「かっこいいのにカワイイ」というスタイルが好きな読者には、「And A」や「JENASIS」「E hyphen world gallery」などのブランドが人気だった。

また当時は、古着なども人気だった為、2010年代のカジュアル系ファッションを一言で語るのにも困難になってくるが、総じてマスとして流行していたのがよく分かる。

平成はたくさんの雑誌が創刊された時代でもあった。当時の青文字系雑誌のどれか一冊を愛読した、という人も多いのではないだろうか。

そして、当時のアースミュージック&エコロジーは、トレンドを取り入れたカジュアルファッションというだけではなく、その求めやすい価格も含めて、各雑誌のカジュアル系女子の微妙なスタイルの変化に関わらず、普遍的に愛用されていた。

また、「ナチュラル」というワードも、カジュアル系ファッション女子以外の層にも訴求され、「アースミュージック&エコロジー」という程よい価格でトレンドを抑えた安心感のあるブランドとしてのイメージを強めたように思う。

アースミュージック&エコロジーの変化

平成後期に近づくと、スマホの普及とともにWebメディアの勢いが増してきた。それに伴い、青文字系雑誌も休刊と廃刊が相次いだ。なかには、まだ継続している雑誌や、コンセプトを変えてリニューアルされた雑誌もあるが、当時を知る者からすると、かなり減ってきたように感じる。

そして、時代の移り変わりとともに、人気ブランドのアースミュージック&エコロジーも変化していった。

2024年には25周年を迎えた「アースミュージック&エコロジー」は、その後リブライディングを図り、ブランドパーパスも新たに更新した。かつての「あした、なに着て生きていく?」から「いいことある服」にリニューアルし、セール強化と「ナチュラルかわいい」のイメージ脱却を試みている最中だ。

現在では、既存のファンも手に取りやすいデザインを展開しつつも、様々なテイストを揃え、各世代に合わせた新たなファン層を獲得している。

カジュアル系ファッションはどこへ行ったのか

当時、青文字系雑誌が人気だったのは、雑誌が元気だったというのもある。

しかし、それに加えて、絶妙に異なるさまざまなコンセプトの雑誌が用意されていたことで、「クラスタ分けに沿った安心感」を得られるということも大事な要素としてあっただろう。同じ青文字系でも「何の雑誌を買って、どのブランドを着るか」というところは重要視されていたように思う。

そして、『Zipper』や『CUTie』のような個性的でレベルが高すぎるおしゃれを目指すというよりも、「自分にとって心地良いおしゃれ」というものが落とし所になって、青文字系のなかでもカジュアル系ファッションがマスの支持を得ていたのではないのだろうか。

現在のカジュアル系ファッションは、ファストファッションの人気に伴い、当時と比べるとどこか均一化されたような印象があるが、まだまだその人気は健在である。以前はカジュアル系ファッションも、若い世代だけのように思えたが、大人のカジュアルファッションも安定した人気を誇り、かつて支持を得ていたカジュアル系ブランドのターゲット層は、いつの間にか30代、40代と年齢の幅が広くなっている。

平成後期から令和にかけ、愛読していた雑誌の相次ぐ廃刊と休刊は、思い出が削られたような少し寂しい気持ちになる。しかし、その代わり、クラスタ分けの境界線が薄れ、雑誌や他者に決めつけられない自由さを得たのではないだろうか。

カジュアル系ファッションと青文字系雑誌が乱立した2010年代……。かつてカジュアル系ファッションに身を包んでいた女子たちは、クラスタ分けから解放され、やっと自分らしいカジュアルファッションにたどり着いたのかもしれない。