「二郎系ラーメン」が怖いZ世代がハマる疑似体験

(写真:アフロ)
今、あの「ラーメン二郎」を代表とする「二郎系ラーメン」に恐怖を感じているZ世代が増えていることをご存じでしょうか?
【バリエーション豊富な疑似体験】パンとラーメンが融合した「郎パン」、テイクアウトで楽しむ「鍋二郎ピクニック」の様子
私は慶應大学出身ですが、二郎の本店が三田キャンパスの隣にあり、当時の慶應生は暇があればラーメン二郎に並ぶ人が多くいました(今もそうかもしれませんが)。
「怖い」などと思ったことは一度もなく、むしろとうとう順番が回ってきた瞬間の幸せと後ろに並んでいる人への優越感たるや、きっと多くの卒業生の思い出の1ページとなっていると思います。
ところが今、実際には店舗によって接客や注文方法はまちまちなのでしょうが、TikTokでは二郎系ラーメンで店員に若者が怒鳴られていたり、食べ残し防止のために罰金制度が科されていたりする様子をおさめた映像が多く投稿されています。
そのため、本当は行きたいのに怖くて行けない、という声が多くのZ世代から聞こえてきます。
今回はZ世代にとって「恐怖の館?」と化した二郎系ラーメンを、実際に訪れなくても楽しめるさまざまなサービスを、現役の女子大生たちがレポートしてくれています。
女性YouTuberが二郎系ラーメンを大食い
近年、SNSを中心にあの“ラーメン二郎”がZ世代から新たな関心を集めている。火付け役となったのは、=LOVEの大谷映美里や美容系YouTuberのRちゃんなど、これまで二郎系ラーメンとは無縁に思えた「爆美女インフルエンサー」たちの大食い動画だ。
可愛らしい見た目と豪快な食べっぷりのギャップがバズり、「二郎系ラーメン=逆に映える」という新たな概念を広めている。
しかし、実際に二郎系らーめんを食べに行く際は、「コール」と呼ばれる独特な注文形式(例:「カラメ」「ニンニク増し」「ヤサイ増し」)や、店舗によっては常連文化に根ざした無言のプレッシャー、提供タイミングを一斉に合わせるロット制、行列における求められる立ち振る舞い、完食必須とされる空気感に尻込みするZ世代女子が多い。
こうした“行ってみたいが行けない”という心境に応えるかたちで、近年では「二郎系の味と雰囲気」をカジュアルに楽しめる商品・体験が急増している。
以下に事例を紹介する。
パンとラーメンが融合
① ちいかわ二郎系ラーメンパン「郎ぱん」
2024年10月29日東急プラザ表参道「オモカド」3階に、「ちいかわベーカリー」がオープンした。パンの上に二郎系ラーメンが盛られていて、焼きそばパンのような感覚で楽しめる。
「郎ぱん」は「ちいかわ」に登場するラーメン屋「郎」の看板メニューをイメージしたもので、ふんわりしたパン生地のうえに、二郎系風「焼きラーメン」風の麺、キャベツともやし、天かす、ゴロッとチャーシュー、そしてニンニクの風味がしっかり効いた具材がのっている。

(ちいかわベーカリー公式サイトより)
麺は「汁のないラーメン」のような食べ応えで、ラーメン好きの心をくすぐる濃厚さを味わうことができる。税込み2200円で、スーベニアどんぶり付き、購入制限は1人2個までとなっている。
本格的な二郎系ラーメンにハードルを感じるZ世代に対し “味”の要素だけを手軽に楽しませるアプローチで、キャラと香り、見た目のインパクトが強く、SNSを通じて話題になっている。
② 松屋 インスパイア系「ニンニク野菜牛めし」(※現在は販売終了)
2025年4月8日から全国(一部店舗除く)で発売されたメニュー「ニンニク野菜牛めし」。特徴は“野菜多め・味濃いめ・ニンニク強め”の本格的な二郎系に似た味付けで、背脂醤油ダレの別添も可能。自分好みにカスタマイズができる。価格は並780~890円、大盛・マシ盛は990〜1190円程度で、通常メニューに比べやや高めの設定だ。

(提供:https://www.instagram.com/yumei_mo?igsh=MXJzdWY1a2M0ZGVpcQ==/@yumei_mo)
③歌舞伎町の“コール無し”二郎系:「ラーメン 豚に恋してる」
2024年11月に新宿・歌舞伎町にオープンした「ラーメン 豚に恋してる」。居酒屋の一角を活用しており、朝5時まで通し営業。注文はタッチパネルの食券機で行い、「ヤサイ」「ニンニク」「アブラ」「カラメ」などの無料トッピングを選ぶことができる。
口頭で「マシ」「マシマシ」などの独特の“コール”が一切不要で、初心者にも優しい店舗システムとなっている。
通常の並サイズ(麺300g)〜超豚恋(450g)まで麺量を選択可能で、ミニ(150g)もあり、女性や初心者も挑戦しやすい。

FS.shakeリリースより
持ち帰って店外で気軽に楽しむ
④ 鍋二郎ピクニック
元々あったラーメン二郎の持ち帰り(テイクアウト)文化「鍋二郎」を、「おしゃピク」(おしゃれなピクニックの略)などに代表されるようにピクニックが大好きなZ世代のライフスタイルに取り入れた行為だ。
Z世代を中心に、屋外で気軽に楽しめる二郎体験としてSNSでも人気が高まっており、その様子がTikTok上でバズっている。
そもそも、鍋二郎とは、ラーメン二郎各店が、客の鍋やタッパーにスープ・麺・野菜・豚を詰めて持ち帰り用に提供するサービスのこと。独特のコールや食べ残し禁止などのルールに縛られずに、気軽に味を楽しむことができる。

(提供:https://www.tiktok.com/@baby_gch/video/7489774520748887301)

(提供:https://www.tiktok.com/@my_broz/video/7490569418540403975)
Z世代は、味や文化を体験したい一方で、普段のイメージとは違うような行動(例:かわいい見た目なのに二郎系を豪快に食べる)をSNSで発信し、そのギャップで注目を集めたいという欲求と、「独特な文化やルールを気にせず、失敗や恥を避けて食事をしたい」という両方の心理が強い傾向にある。

左から藤井涼花(桜美林大学教育探究科学群3年)、白幡円佳(立教大学文学部文学科4年)、森川有咲(お茶の水女子大学文教育学部人間社会科学科4年)
しかし、二郎系ラーメン独特の注文方法や店内の空気感といった“暗黙のルール”が心理的ハードルとなり、憧れはあるものの、実際には足を運びづらいZ世代女子も少なくない。
こうした背景から、事例のような本家の象徴的な要素(豪快な見た目・ニンニク・濃い目の味付け)は残しつつ、ルールやプレッシャーを省いた “二郎系風”コンテンツがトレンドとなっているのだ。
このトレンドは、心理的ハードルの高い文化を、初心者やライト層でも楽しめる形にアレンジして提供することで、新しいファン層を獲得できることを示している。
Z世代の安全志向に応えるために
現役女子大生たちによる「派生系二郎」についてのレポートはいかがでしたでしょうか?
長らくZ世代研究をしてきた私が、彼らと日々接していて感じるのは、「リスクをとってプラスを得たい」と思うよりも「マイナスを作るくらいならプラスマイナス0でいた方がいい」という「安全思考」な人が増えている、ということです。
かつてであれば、たとえば、漫画「課長 島耕作」などを読み、ちょっと背伸びをしてバーに飛び込んでみる(リスクをとってでもかっこいい大人の文化を経験したい)という若者も多かったように思います。
しかし、今のZ世代は、過ごし方やお作法が分からないうえに、上の世代が多いバーに行くのをしり込みし、怖い体験をするかもしれないくらいなら行かない、という選択をする人が多くなっているように思います。
「バーを知らない自分なんかが行って、周りの常連客に迷惑をかけやしないか」そんな心配をする大学生の声も多く聞きます。
よく言えば謙虚になっているとも言えますし、厳しい見方をすれば、好奇心は残っているものの、度胸や行動力が減っている、とも言えるかもしれません。
しかしZ世代をターゲットと考える企業は、このある種の「謙虚さ」を逆手にとれば、商品やサービスを考えると彼らの心をつかむ好機になる可能性があります。
Z世代の心情を汲んだビジネスも可能
今回のラーメン二郎の派生例のように、「入りやすいバー」や「(年上に気を使わなくてよい)学生限定のバー」や「自宅で友達と楽しめるバーキット」など、ジャストアイディアであれば無数に浮かぶはずです。
私事になりますが、私はYouTuberのひろゆきさんと「大人のかっこいい文化を次世代に伝えたい!」というコンセプトのチャンネル『今夜、銀座のバーで』というチャンネルを立ち上げました。
かつて若者が憧れたタバコやらお酒やら車やらあれやこれやのいわゆる「大人のたしなみ」。しかし、時代の大きな変革期、こうした文化が失われつつあります。
時代に合わせたい人は合わせたらよいと思いますし、「大人の文化」に憧れる若者はどうぞ飛びついて下さい! 人口ボリュームの多い中年で「大人文化」を盛り上げていきましょう!