添乗員が語る外国人観光客のリアル 自由すぎる行動や時間感覚に戸惑いながら学んだこととは

今年も過去最高を記録しそうな訪日観光客(写真はイメージ)【写真:PIXTA】
旅は、その土地のものを見たり体験したりするだけでなく、そこで出会う人たちや、文化の違いを肌で感じられる貴重な機会でもあります。旅アドバイザー&トラベルライターのAnaさんは、コロナ禍以降離れていたツアーの添乗業務に、今年になってときどき携わるようになりました。日本人の団体旅行と訪日外国人のツアーでは、思わぬところに違いがあることを体験したそう。その印象的なエピソードを、数回にわたって紹介します。
◇ ◇ ◇
アメリカのバックグラウンドは実に多様
先日担当した、関西と関東を1週間ほどでめぐるインバウンドツアーでのことです。お客様は全員アメリカ在住。ただ、ひと言で「アメリカ人」といっても中国系、メキシコ系、インド系、そして日系など、そのルーツは実にさまざまでした。

食の嗜好もばらばら【写真:Ana】
ですから、食事ひとつとっても、好みや考え方はまったく異なります。たとえば、ツアー参加者のうち数人の方はベジタリアンで、なかには味の好みや体質ではなく、思想的な理由で食べない方もいました。
一方で、魚や野菜は苦手だからとお肉しか食べない方。さらに「自分の父は日本人だから、日本の料理は大好き!」とお寿司やお刺身を好んで食べる方もいれば、「生の魚はちょっと気持ち悪い。しょうゆも味が濃くてちょっと……」という方も。日本人の好き嫌いとはまた違う多様性を、目の当たりにしました。
日本のバスは意外に小さい?
これまでは海外ツアーの添乗が多かったため、日本の観光バスのサイズをあまり意識したことはありませんでした。しかし今回、40名という大人数のインバウンドツアーを担当して「日本のバスは小さい!」と実感しました。

欧米の大型バス【写真:Ana】
シートの幅は、欧米の大型バスに比べてややコンパクト。体格の良い男性同士が並ぶと窮屈そうで、少し気の毒に思ってしまうほどでした。
さらに問題だったのは荷物です。7~10日間の滞在ということもあり、みなさん大きなスーツケースを持参。なかには2つ以上持ち込む方もいて、人数以上の荷物が集まってしまいました。
バスのトランクルームは日本の観光需要を前提に設計されているため、そこまでの容量が想定されていません。日本人の国内旅行で、大型スーツケースを持参する方はほとんどいないですし、ましてや1人で複数個持ってくることはまずありません。
その結果、毎朝の荷物の積み込みはまるでテトリス。ドライバーさんと一緒に、空間を見極めながら少しでも多く積めるよう、工夫する日々でした。
集団行動でも「自由」が基本
日本人のお客さまに添乗すると、多くの方は自然と“集団での行動ルール”を守ってくださいます。たとえば、観光地に到着しても「まずは添乗員やガイドの案内を聞こう」と一度足を止めたり、ほかの人の様子を見たりして、暗黙のうちに「周囲に合わせよう」という意識が共有されているのです。
一方で、今回のアメリカ在住のお客さまは、実に自由。ランチの際、添乗員はたいてい、別室で食事を取りながら様子を見ています。終わりかけの頃にこのあとの案内を伝えよう……と、しばらくして部屋に行ったところ、早く食べ終わった人が店を出てしまって、すでにいないということもありました。「一緒に行動する」というより「自分のやることが終わったら次へ」というスタイルが当たり前のようでした。
日本では「全員が足並みをそろえる」ことが当たり前ですが、海外では「それぞれが自分のペースで行動する」ことが自然。それを尊重するからこそ、周囲もあまり気にしない――そんな違いがあるのだと思います。
時間感覚も違う
ツアーをスムーズに進めるうえで大切なのが「時間」です。日本のお客さまに「10時に出発です」とお伝えすれば、ほとんどの方が5分前にはロビーに集合してくださいます。むしろ「5分前集合が当たり前」という空気すらあるでしょうか。
ところが、「10時出発なので、5分前にはロビーに来てくださいね」と海外のお客さまに伝えても、バスにやってくるのは10時ぴったり。そこから荷物を積み込むので、10時発は当然、不可能です。最初は戸惑いましたが、感覚の違いと気づいてから、集合時間を少し早めに伝えるよう工夫。10分早く伝えておけば、なんとかオンタイムに出発できました。
ただ、これも全員が遅いわけではありません。ある一組のカップルだけは、いつも集合時間の5分前くらいには来ていて「私たちは遅れるのが嫌だから。でも、だいたいアメリカ人は時間に適当よね」と。
日本では「時間を守らない=他人に迷惑をかける」と考える傾向が強いですが、海外では「自分がどうするか」が重視されるのでしょう。他人が遅れても「自分は自分」で、あまり気にしない。どちらが良い悪いではなく、単なる違いと捉えているのだと感じました。
日本人にとって当たり前のことが、海外の人にとっては当たり前ではない。価値観や習慣よりももっと奥深いところにある、感覚や認識の違いに改めて気づかされました。その差に驚かされ、ときに困らされつつも、大きな学びを得られた経験だったと思います。
Ana(アナ)
旅アドバイザー&トラベルライター。学生時代から海外旅行に魅了され、これまで世界約50か国をめぐってきた大の旅好きで、海外添乗員として活動していた経験もある。行った旅の数と比例して、経験してきたトラブルや事件は数知れず。コロナ禍を経て、再び海外へ飛びながら旅に役立つ情報、異文化を楽しむ知恵などを日々発信中。
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