180cc枡と80ccカップで120ccの水を枡に入れるには?これは目標から出発点を眺める「逆向きの思考」で簡単に解ける
迷路ゲームでは目的地から出発点に向かえば楽勝!?
日常生活でも逆向きに考えて問題を解決する場面はいろいろある。マナーの点では問題があるが、子ども向けの迷路ゲームでは目的地から出発点に向かうように考えると簡単に解決するものが多い。
また、地方へ出張するさいなど「新幹線→在来線特急→ローカル線普通列車」と乗り継いで時刻表を調べるときには、「目的地に間に合うローカル線普通列車→その普通列車に間に合う在来線特急→その特急に間に合う新幹線」というように、到着地の時刻から逆向きの順に調べることは、誰もが行っているだろう。
拙著『いかにして解法を思いつくのか「高校数学」(上)』では、「nを自然数、mを2以上の自然数とすると、nのm乗は相続くn個の奇数の和になることを証明せよ」という例題を、逆向きに考えて解決した。
ちなみに、「逆向きに考える」の仕組みを数学的に述べると、次のようになっている。
Aを問題の仮定(出発点)として、Bを問題の結論(目的地)とする。AからBに向かっての道筋は思いつかないが、BからAを眺めているとき、BとMは同値、すなわちBとMは本質的に同じことで、「BならばM」も「MならばB」が示せるMの存在に気づいたとする。この段階でAからMが導けたならば、結局、AからBは導けたことになる。
以下、2つの例を考えよう。
180ccの升と80ccのカップで、120ccを測るには?
檜(ヒノキ)で作った枡で冷酒を飲むと、木の香りもあって素晴らしい。また、プリンを底にあるカラメルを少し付けながら食べるのも美味しい。枡の容積は180ccで、プリンカップの容積は90ccのものが多いが、80ccのものもある。
いま、空の枡と80cc入りの空のプリンカップがあるとする。近くに水道の蛇口があって、水は自由に使えるとする。枡に水をいっぱいに入れて、溢さないようにして水をカップいっぱいに入れる。すると、枡には100ccの水が残ることになる。

ここで、次の例題を考えよう。
例題:枡とカップと水を自由に使って、ぴったり120ccの水を枡に入れてみよ。
解説:普通は、いろいろ試すことから始めるだろう。もちろん、それで成功すれば素晴らしいことである。しかし、意外と難しいのではないだろうか。そこで完成したとして、逆向きに考えてみよう。完成図は
枡に120cc、カップに0cc
である。これの直前の図として、次の図を考えられないだろうか。
枡に180cc、カップに20cc

この図に気づけば、枡の水を溢さないようにカップに一杯になるように入れると、枡には120ccの水が残ることになる。そこで、カップに20ccだけ入れた図を思いつけばよく、それゆえ枡に20ccだけ入れた図を思いつけばよい。
これは簡単である。枡に一杯の水を入れ、そこから空のカップに水を一杯に入れて、カップの水を捨てると、
枡に100cc、カップに0cc
となる。この作業をもう一度行うと、
枡に20cc、カップに0cc
となるのである。
ギャンブルの予想屋さんの確率
次の話題は、ギャンブルの予想屋さんの確率である。世の中には、ギャンブルの予想屋さんは少なからずいる。そんなに当たって儲けられるならば、他人に教えないで自分一人で大儲けすればいいのに、と思う人は多いだろう。
予想屋さんの広告に注目してみると、過去の戦績には不思議な特徴があることに気づく場合がある。最終的には勝ち負けの数が接近していても、必ず勝ちが先行しているのである。それゆえ戦績上では投資金額が途中で不足することもなく、最終的な収支は大きくプラスになる。初めのうちに負けが先行するようなことになると、投資金額が底をつく事態にもなってしまう。
たとえば、10万円のギャンブル資金をもっている人が、1回目と2回目は5万円を使ってそれぞれ6倍の30万円を得て、3回目と4回目は5万円を使って両方とも外れになると、2勝2敗の4回が終わったときの所持金は、
10+25+25-5-5=50(万円)
である。
一方、10万円のギャンブル資金をもっている人が、1回目と2回目は5万円を使って両方とも外れになれば、それで終わりである。
また、10万円のギャンブル資金をもっている人が、1回目は5万円を使って外れになって、2回目は用心して3万円を使ったものの外れになって、3回目も用心して1万円を使ったところ6倍の6万円を得て、4回目は強気が戻って3万円を使って6倍の18万円を得たとすると、2勝2敗の4回が終わったときの所持金は、
10-5-3+5+15=22(万円)
となる。
22勝18敗の予想屋さんの最終収支が投資額の10倍!?
予想屋さんは次のように言った。
「ワシの予想は正直に言うと、当たったり外れたり、まあ確率1/2というもんですわ。この戦績表にも書きましたが、ある期間の40戦について、勝敗の結果は22勝18敗でした。でも最終的な収支は、ホラ、投資金額の10倍ですよ、10倍!」
しかしながら、その戦績表では期間中のどんな時点でも、「のべ勝ち数」が「のべ負け数」を常に上回っていた。
確率1/2の勝負事で、結果は22勝18敗とする。その結果を前提として逆向きに考えて、どの時点でも「のべ勝ち数」が「のべ負け数」を常に上回っていたとする過程をたどる確率は求められないだろうか。
結論を先に述べると、その確率は0.1すなわち10%しかないのである。
この説明の本質部分にはグラフ上で考える面白い発想もあるので、この発想を紹介するようにその確率を求めてみよう。
まず、1勝を「+1」(ポイント)、1敗を「-1」(ポイント)として、第x戦までの累積ポイントをyで表すことにする。たとえば、第1戦で負け、第2戦で勝ち、第3戦で勝ち、第4戦で勝ち、第5戦で負け、第6戦で勝ち…とすると、そこまでの結果は表のようにまとめられる。なお、第0戦は開始直前の状態である。

40戦を通しての戦績が22勝18敗ということは…
さて、40戦を通しての戦績が22勝18敗ということは、22から18を引くと4になるので、40戦目にx座標が40、y座標が4となる点Bに到達することになる。
さらに、第40戦までの戦績を上図のような折れ線にして描くと、勝ちが先行するという条件から出発点の原点O以外ではx軸を通らないことになる。
したがって、第1戦は絶対に勝つことになり、x座標が1、y座標が1となる点Aはかならず通らなくてはならない。以上から、戦績を表す折れ線グラフは下図のようになる。

求める確率は次のように計算できる。
OからBに至る可能な折れ線全部の本数を□とし、OからAを経由してBに至る可能な折れ線全部の本数を★とし、それら★本のうちx軸を通らないものの本数を△とするとき、
求める確率=△/□
である。ただし、可能な折れ線とは、xが1増えるごとにyが1増える(右上行き)か1減る(右下行き)か、そのどちらかの状態を保って変化する折れ線のことである。
上記の計算を行うとき、難しい部分は、OからAを経由してBに至る折れ線全部の★本のうち、x軸を通るものの本数☆を求めるところである。
実はこのような折れ線を考えるとき、最初にx軸とぶつかる所までを、下図のようにx軸に関して対称にひっくり返してみる。すると、x座標が1でy座標が-1となる点Cを必ず通過することになる。

よって本数☆は、OからCを経由してBに至る折れ線全部の本数と等しくなる。ここは面白い発想の部分であり、それを用いて求める確率が0.1と等しくなることが以下のようにして分かる。
なお、nCrは相異なるn個のものからr個を取り出す組み合わせの総数で、次の式で与えられる。
nCr=(n!)/[{(n-r)!}(r!)]
n!=n×(n-1)×(n-1)×……×2×1
まず、
□=OからBに至る折れ線全部の本数
=勝ち負け合計40回中、勝ちが22回、負けが18回となる場合の数
=40戦から勝ちの22回を選ぶ組み合わせの総数
=40C22
が成り立つ。ここで、それら40C22通りの経過は、どれも同様に確かであることに留意する。同様にして、
☆=CからBに至る折れ線全部の本数
=勝ち負け合計39回中、勝ちが22回、負けが17回となる場合の数
=39戦から勝ちの22回を選ぶ組み合わせの総数
=39C22
★=AからBに至る折れ線全部の本数
=勝ち負け合計39回中、勝ちが21回、負けが18回となる場合の数
=39戦から勝ちの21回を選ぶ組み合わせの総数
=39C21
となるので、
△=★-☆=(39C21)-(39C22)
が成り立つ。したがって、
求める確率=△/□
={(39C21)-(39C22)}/(40C22)
=(22/40)-(18/40)=1/10
を得る。予想屋さんは、確率0.1の現象をさり気なく語っていることが分かったのである。