「マグニチュード10」の地震は起こらない…? 地震学者が語る知られざる地球の「限界」!

2025年8月25日、ブルーバックスより

『カラー図解 アメリカ版 大学地球科学の教科書』

の第1巻、第2巻が上梓された。

本書はアメリカの名門大学が採用する地球学教科書

『UNDERSTANDING EARTH』(8th edition)

を全3巻の構成で翻訳したものである。

第1巻と第2巻では、プレートテクトニクスから、マントル対流など地球内部の動き、それらによって生みだされる火山や地層、岩石変成など、地球の固体部分の大きな仕組みが手に取るように理解できるつくりになっている。

また、第3巻では、大気・海洋の大循環システムから、いまや避けられない関心事である温暖化、マクロ的視点でとらえた気候大変動など、地球の表層部分の大きなメカニズムを中心に学べるようになっている。

 本シリーズは、基礎から専門的な知識までしっかりと学びたい高校生や大学生の教科書として最適であるだけでなく、さらに専門的な地球科学、惑星科学、地質学の科学書を知解するための基本知識を得ることのできる良質な入門書である。

この度ブルーバックス・ウェブサイトにて本書の一部を特別公開。

我々が住む地球の「真実」をご覧ください。

*本記事は、『カラー図解 アメリカ版 大学地球科学の教科書 第2巻』(ブルーバックス)を再構成・再編集してお送りします。

地震の大きさを計測する

震源の特定は、地震の理解へとつながる小さな一歩にすぎない。私たちは地震の大きさ、すなわちマグニチュードも特定しなくてはならない。

ほかの条件(震源からの距離や広域地質など)が等しい場合、マグニチュードは地震により発生する地震波の強さと継続時間、ひいては地震の潜在的な破壊力を決定する最大の要素となる。

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photo by gettyimages

リヒター・マグニチュード

1935年、カリフォルニアの地震学者チャールズ・リヒターは、個々の地震の規模を数字で表すための単純な手法を考案した。この尺度は現在、リヒター・マグニチュードと呼ばれている(図10.11)。

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リヒターは若いころ天文学を学んでいて、きわめて幅広い値をとる恒星の光度を計測するために、天文学者が対数スケールを使っていることを知っていた。そこで彼はこの手法を地震に応用し、「基準となる距離に設置した標準型の地震計に記録される地面の最大振幅」の対数を地震の規模の尺度として採用し、これをマグニチュード・スケールと定義した。

リヒターのマグニチュード・スケールでは、ある地震計から等距離で2つの地震が発生した場合、マグニチュードが1違えば、それらの生み出す地面の最大振幅の違いは10倍になる。

したがって、マグニチュード3の地震による地面の揺れは、マグニチュード2の地震の10倍の大きさとなる。同様に、マグニチュード6の地震はマグニチュード4の場合の100倍の地震動を引き起こす。

地震波として解放されるエネルギーはさらに急激に増加し、マグニチュードが1上がるごとに約32倍になる。たとえば、マグニチュード7の地震ではマグニチュード5の地震と比べて32 × 32、つまり約1000倍のエネルギーが解放される。このエネルギー尺度によれば、東北で起きた巨大地震はマグニチュード5の地震の100万倍もの威力をもっていたことになる。

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チャールズ・フランシス・リヒター(Charles Francis Richter、1900~1985) photo by gettyimages

震源から遠ざかるにつれて地震波は減衰するので、リヒターは自分の発案したマグニチュード・スケールをどんな地震計にも等しく適用できるように、震源から地震計までの距離に応じて地震動の計測値を補正する方法を見出さなくてはならなかった。

そこで彼は、地震計が震源からどれほどの距離にあったとしても、各地の地震学者がほぼ同一のマグニチュード値をかんたんに算出できるような単純なグラフを考案した(図10.11参照)。この手法はほどなく、世界中で使用されるようになった。

モーメント・マグニチュード

「リヒター・スケール」はマグニチュードの代名詞として一般によく知られているが、地震学者が好んで使うのは、地震の原因となった断層運動の物理的性質にもっと直接的に相関する地震規模の尺度だ。

それがモーメント・マグニチュードで、断層運動の生じた面積と平均すべり量の積に比例した数字で断層運動の大きさを定義した地震モーメントに1対1で対応する。モーメント・マグニチュードは、断層運動の面積が10倍になるごとにおよそ1大きくなる。

リヒター・マグニチュードとモーメント・マグニチュードのどちらの手法で計算しても、おおむね同じ結果となるが、モーメント・マグニチュードのほうが地震計からより正確な値を算出でき、場合によっては断層のフィールド調査の測定値から直接求めることも可能だ。

地震の規模と頻度

大地震の頻度は小さな地震よりもはるかに低い。この経験則は、地震の頻度と規模の単純な相関関係として表せる(図10.12)。

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世界では毎年、マグニチュード2を上回る地震が約100万回起きている。年間発生数は、マグニチュードが1上がると10分の1になる。したがって、マグニチュード3を超える地震は年間約10万回、マグニチュード5超は約1000回、そしてマグニチュード7超は約10回となる。

この統計に基づけば、マグニチュード8超の地震は平均で1年に1回程度、マグニチュード9超では10年に1回程度と考えられる。

実際、2011年に日本近海の沈み込み帯にある衝上断層で発生した地震(モーメント・マグニチュード9.0)、2004年のスマトラ島沖地震(同9.2)、1964年のアラスカ地震(同9.1)、1960年(同9.5)と2010年(同8.8)のチリ地震のような巨大地震の頻度も、長い目で見れば、おおむねこの統計に沿っている。

しかし、沈み込み帯に存在する世界屈指のメガスラストでさえも、マグニチュード10の地震を引き起こすには大きさが足りないため、そのような超巨大地震はこの法則にはあてはまらない、つまり、マグニチュード10クラスの地震は100年に1度以下の頻度になるはずだと地震学者は考えている。

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