「音がない世界」へ行って分かった「何もしないでも楽しいと感じること」が導く幸福感

お金がないなかでも、できることを探す, 自分で楽しさを見つけることも大切, 「音がない世界」で体験したこと, 幸せとは「小さなことの積み重ね」

「音がない世界」へ行って分かった「何もしないでも楽しいと感じること」が導く幸福感

先日発表された世界各国の幸福度をランキングで示した「世界幸福度報告書」2025年版では、フィンランドが8年連続で1位となり、デンマーク、アイスランド、スウェーデンが続き、上位は北欧諸国が占めました。

そんな北欧・デンマーク発のライフスタイル「ヒュッゲ」を日本に広めた功労者で、北欧流ワークライフデザイナー兼ウェルビーイングアドバイザーの芳子ビューエルさんに、幸せやチャンスをつかむために必要なことを教えてもらいました。

「身体的、精神的、社会的に良好な状態にあること」を意味する「ウェルビーイング(Well-being)」は、ワークライフバランスなどが見直される昨今、注目されている考え方です。では、心身ともに満たされたウェルビーイングな生き方を叶えるためにはどうしたらいいのか? ビューエルさんの最新著書『 北欧流 幸せになるためのウェルビーイング 』(キラジェンヌ)より抜粋してご紹介します。

お金がないなかでも、できることを探す

私は「会社の経営がこんなにも大変であると事前に知らされていたら、間違いなく起業しなかった」というくらいに苦労してきました。

苦労の一番はやはりお金の問題ですね。それまでの貯金や自由になるすべてのお金を会社に入れてしまったので、「貧困」と呼んでもさしつかえない時代がのべにして10年近くありました。

“やめたくてもやめられない”とはこういうことを言うんだなと。会社経営をやめるということは、仕事を請けないようにしながら経費を払っていくという業務が続くわけですが、本当に厳しくてお金を払えないということが何度もあって。

もちろん、プライベートも犠牲になります。家族と何かをするにしてもお金がないと何もできません。子供たちの夏休みや冬休みなどをどう過ごすかも問題で、お金がないなかでもできることを探しながらたくさん工夫して子供たちと過ごしました。

今になって子供たちと昔話をしたときによく言われるのは、「お母さんは、はちゃめちゃなことをいっぱいしていたから面白かった」ということ。

たとえば娘からは「雪が降ったときに私が熱を出して残念がっていたら、お母さんが外に行って洗面器に雪をどっさりもってきてくれたことがうれしかった」と言われましたし、他にも「(お金がなくても)できることを探す」という思いで創意工夫をしながら色々なことを子供たちと一緒にやって楽しんでいました。その渦中は必死だったので、何年も経ってから言われて思い出すことが多かったのですが。

夏休みなどの長期休暇でもお金を使わない遊びはよくやりましたね。特によくやっ ていたのがキャンプ。とはいえ、キャンプ場に行くとお金がかかるので、家の庭にテントを組み立ててそこで寝るというだけなんです。また当時は三菱のデリカという車に乗っていたので、後部座席を倒して寝袋を並べてあげると子供たちはとても喜んでいました。キャンプ場に行かなくてもキャンプ気分を味わえるし、非日常を演出することができます。

お金をかけないでできることというのは、やっぱり「何かしてもらう」ということではなく「自分から率先して何かを探し出す、発見する」というのが大切になってきます。それは北欧に行ったときにレゴランドへ行って感じたことでもあります。

自分で楽しさを見つけることも大切

日本だとディズニーランドに行けば、そこに入園しただけで楽しいじゃないですか。すべてのエンターテイメントがあって、見ていたり乗っていればいい。それだけで楽しむことができます。

それが、レゴランドに行ったとき、最初は「こんなのなんでお金を払ってわざわざ見に来るの?」と思ったのです。でも、色々なことを理解してきたときに、「そうじゃないんだ。ディズニーランドのように楽しませてもらうのではなく、自分で楽しさを見つけて楽しむんだ」ということに気づいたのです。

北欧の人たちは「何もしないでも楽しいと感じる」ことに長けていますが、日本人の場合は休みがあれば、「あれもこれも予定をつめこまないと楽しくない」という人が多い。その国民性の違いは大きいかもしれません。前者は精神的な豊かさであり、後者は物質面の豊かさ、と表現することも可能だと思いますが、その両方の喜びを知っているとより人生が楽しくなると思いました。

確かに、「自然のなかで何もしない」というのは贅沢なんですよね。だけど日本人は黙って座り続けることが苦痛という人が多く、何かをしないといけないと思いがちです。

余暇の楽しみ方の優劣をつけたいわけではありませんが、間違いなく言えることは、こと「自然との触れ合い」に関して言えば、現代の日本人にとって著しく欠けているものだと思います。

北欧の人たちは自然の中にいることの幸せを満喫することが体にとってもいいと思っていますし、精神面も落ち着かせることができます。自然から得られるエネルギーを体全体で感じること。たとえば、鳥のさえずりであったり、風が吹いて木々がゆらいだときの音だったり、それがもたらすものの大きさは、私が「音がない世界」に行ったときに気づいたことです。

「音がない世界」で体験したこと

デンマーク人の友人に何度かチュノー島に連れて行ってもらったことがあります。とても小さな島ですが、税率の高いデンマークでは、この島に別荘を持てる人、または退職後に移住できる人は本当に限られた富裕層です。とはいえ、島内では車に乗ることができません。島での利用が許されているのは、トラクターとバイクのみ。

私がチュノー島での滞在中に体験した「音がない世界」。

日本にいるとなかなかそういう場所に身を置くことは難しいですが、飛行機のジェット音も聞こえてこなければ、前述の通り自動車そのものがないからエンジン音もない。

そして、島内の人口も少ないから生活音もしませんし、動物の鳴き声も聞こえてこない。「音がないとはこういうことなんだ!」と身をもって体験しました。

そのときに唯一聞こえてきたのが、風が鼓膜を震わせる音だけでした。「こういう体験は日本ではできない」と思った瞬間です。

チュノー島の人たちは、春になれば外に椅子を並べて座って、炭酸水を飲みながら日がな一日太陽の光を浴びて過ごしていました。「こんな贅沢はないでしょう?」と言われたとき、最初は言葉に詰まりました。

私はその贅沢の度合いが最初はわかりませんでした。「一日何をするの?」と思ったりもしたし落ち着かなかったけれど、だんだんわかってくるようになります。

「こういう過ごし方ってあるんだなあ」と思えたら、ほんのちょっとの風の動きなどに気が付くようになっていきます。心身が音がない世界に適応しはじめていくのです。

幸せとは「小さなことの積み重ね」

気取らないこと、見栄を張らないこと。ウェルビーイングに関して言えばそこを目指していくことが重要になってきます。気取ったり見栄を張ってしまうと、自分の意識が“他人が自分をどんな風に見るか”というところにシフトしてしまうものなので、そうではなく自分にフォーカスすることが大切なのです。

日本人の多くの人に共通していることなのですが、「あなたにとっての幸せは何ですか?」と訊いたときにかえってくる答えは、しばしば大きな望みや想像であることが多いのです。なかなか容易には実現不可能なものであり、それが大きいからこそ、いつまでたっても自分は幸せでないと思ってしまう。

やっぱり、「幸せとは小さなことの積み重ね」と思うことからはじめないといけません。いきなり宝くじが当たって6億円が手に入ることもなければ、突然白馬に乗った王子様が迎えにきてくれるわけもないのです。そういったことを幸せと感じているとしたならば、一生涯不幸せだと思います。

だからこそ「自分サイズの幸せ」ってなんだろうということを考えることが大切です。とはいえ、あまりに小さくまとめてしまうと幸せ度が低いので、等身大以上で多少は大きめに考えた幸せのサイズ感を見つけるようにしましょう。