寝台特急「サンライズ出雲」で駅弁が買えるウラ技

サンライズの旅にまだ知らないことがあった, 臨時のサンライズは乗車時間が15時間超え, どうすれば駅ホームで弁当を受け取れる?, 特急「やくも」もOK, 知る人ぞ知るサービスだった, 駅弁文化を維持するためにできることは?

実は寝台特急「サンライズ出雲」に乗ったまま駅弁が買える(写真:坪内政美)

サンライズの旅にまだ知らないことがあった

大好きな寝台特急「サンライズ」には、今まで22回乗車した。頻繁に乗るのはもったいないので、特別なときでないと乗らないよう、セーブしつつの回数だ。それなりに乗ってはいるし、サンライズについてのコラムや記事もある程度書いてきたから、サンライズの旅については、もう全部知っている気になっていた。

【はじめに写真を見る】▶どの駅弁が食べたい?▶大阪屋の定番「幕ノ内弁当」のほかに「さらば381 勇退辨當」「ヒャクジュウゴ伯備線勇姿弁当」

しかしまだ私にも知らないことがあった。なんと、サンライズに乗ったまま、駅弁を買うことができるというのである。

昨年、お盆の時期に、初めて臨時便の寝台特急「サンライズ出雲91号」(下り)に乗った。そのとき、実際に駅弁を買う体験をした。2025年も臨時便は年末年始、GW、お盆などの繁忙期に設定されている。まずはこちらの臨時便サンライズの説明からさせてもらいたい。

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8番線の列車案内表示器に「サンライズ出雲91号」の表示(筆者撮影)

通常の寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」は、瀬戸と出雲、それぞれ7両編成が2つつながって14両編成で走り、岡山で分離(または連結)をする。しかし臨時便は出雲市行きのみで、単独の7両編成で走る。つまり岡山で切り離しもないし、それに伴う長時間の停車もない。

一番大きな違いは、その乗車時間だ。通常の寝台特急「サンライズ出雲」下りは、東京駅の9番ホームから21時50分に出発し、終点の出雲市駅には翌朝10時に到着する。乗車時間は約12時間。

臨時のサンライズは乗車時間が15時間超え

ところが臨時列車の「サンライズ出雲」下りは8番ホームから22時21分に発車し、出雲市駅に到着するのは翌日の昼過ぎ、13時40分。通常のサンライズより、3時間20分も長く、乗車時間はなんと15時間20分となる。ちなみに上りはもっと長い。

なぜそんなに時間がかかるのかというと、ほかの列車のダイヤに支障がないよう運行しないとならないからだ。つまり、定期列車を優先的に走らせないとならないため、途中での停車回数も多く、通常は停車しないような駅や信号所で長時間停まる。そういうマニアックなことからも、この便は鉄道ファンの間で大変人気だという。

そんなこととはつゆ知らず、臨時列車でもシングルなら取れるだろうとタカをくくっていたら、なんと激戦で希望日のきっぷが取れなかった。びっくりして再度、日を変えてチャレンジ。ようやくシングル1階の喫煙個室が取れた。いつもなら2階でないうえ、禁煙ではなくがっかりするところだが、今回は取れただけありがたい。

さらに寝台列車や夜行列車にできるだけ長く乗っていたい私としては、これだけ長く乗車できる列車はひさしぶりでワクワクしていた。夜行列車に揺られながら、景色を眺めつつお酒を飲んだり、駅弁を食べたりすることが大好きだからである。

サンライズは知ってのとおり、車内販売はない。あるのはソフトドリンクの自販機のみ。食べ物やお酒は、調達して乗らなければならないのは周知の事実だ。しかも今回は終点への到着が昼過ぎなので、いつもより1つ多く駅弁を買っておかねば、と思っていた。

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代金はおつりのないよう用意する(筆者撮影)

どうすれば駅ホームで弁当を受け取れる?

ところが、ここでなんと、寝台特急「サンライズ出雲」に乗りながら、駅弁を買えると知る。どういうことかというと、「サンライズ出雲」下りが通る伯備線の新見駅で、かつて駅や特急「やくも」車内で駅弁販売を行っていた地元の「大阪屋」という駅弁屋さんが、駅弁をホームまで届けてくれるというのである。つまり、列車から降りることなく、お金と引き替えに、駅弁を買えるのだ。

にわかに信じられなかったので、実際にやってみた。手順は以下のとおりだ。

1. 乗車日の2日前までに大阪屋さんに電話して駅弁の予約をし、当日、自分が乗る号車を伝え、受取場所の確認をする。

2. 乗車する前に、お釣りのないようお金を用意し、当日、受取時間が近づいたら、その号車の出入り口で新見駅到着を待つ。ちなみに臨時サンライズ出雲91号が新見駅に到着するのは10時20分頃。

3. ドアが開くと同時に駅弁とお金を引き換え、終了。

無事に買うことができた。買ったのは一番ノーマルな幕の内弁当。かつて特急「やくも」の車内で販売されていたものと同じだという。あまりのうれしさに、さっそくラウンジで駅弁を開き、食べることにした。その際、反対側の端の席からじっと見つめる若者がいた。この日は車内でさまざまな出会いがあったのだが、その話について詳しくは新刊『ひとりで楽しむ鉄道旅 駅弁めぐり篇』(玄光社)に収録の旅行記「臨時便の寝台特急サンライズ出雲で駅弁を」で書いているので、ぜひ読んでみてほしい。

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大阪屋さんの定番、「幕ノ内弁当」(筆者撮影)

お弁当は白ごはんに梅干し、煮物や揚げ物、鶏の照り焼きにエビチリ、デザートにオレンジなど、バラエティに富んだ幕の内弁当だった。おかずの種類が多いので、飲みのアテにも良さそうだ。これは私の自論だが、西日本の駅弁は、全体にご飯がやわらかめな気がする。

特急「やくも」もOK

ちなみに大阪屋さんの営業時間は8〜17時。その間に新見駅に停車する特急「やくも」や、この臨時便サンライズ下りであれば、ホームまで届けてくれる。通常の寝台特急「サンライズ出雲」が新見駅に到着する時間は7時44分だが、そこにも届けてくれるそうだ。大変ありがたいサービスである。

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坪内さんプロデュースの「さらば381 勇退辨當」(大阪屋)( 写真:坪内政美)

その事実を教えてくれたのは、お世話になっている鉄道カメラマンでコーディネーターの坪内政美さんだった。

坪内さんは、特急やくもの撮影などの縁で新見市とはもともと親しくしており、伯備線のイベントなどに関わっていた。その過程で、今も日本鉄道構内営業中央会の会員で、駅弁マークを保有している「大阪屋」があることを知る。

一方、特急「やくも」が2022年に引退表明した頃、近隣の駅弁屋さんが「さよなら弁当」を出し始めた。そこで坪内さんは大阪屋さんに引退記念駅弁を作らないか、と2024年4月に話を持ちかけた。そして生まれたのが「さらば381 勇退辨當」だった。

そのときのやりとりから、坪内さんも「サンライズでお弁当の受け渡しをしている」ことを知り、私に教えてくれたわけだ。ちなみに坪内政美さんは2025年4月から新見市の「鉄道観光アドバイザー」として鉄道を使ったイベント企画など新見を盛り上げる活動をしている。

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大阪屋の社長、竹井正樹さん(筆者撮影)

このときの旅で、大阪屋さんに興味を持った私は、臨時サンライズの旅の帰りに新見駅で下車し、店舗まで予約した駅弁を買いに行ってみた。大阪屋さんは駅からすぐ。駅弁の話をしつつ、社長の竹井正樹さんに話を聞いた。

「大阪屋は江戸時代中期から、酒屋に始まり旅館業を営んだとのことでした。昭和になっても、当時新見は物流・交通の中継地として賑わっていたようです。お客様には、あの自由民権運動の父・板垣退助、将棋の大山十段、横綱の千代ノ山、当時関脇の力道山(その後プロレスラー)、歌手の春日八郎さんなどがいて、色紙が残っています。同時に駅弁事業を昭和20年代後半まで並立させていました」

知る人ぞ知るサービスだった

1929年に大阪鉄道局から新見駅構内営業が認可され、新見駅でのホーム立売を開始。同年、岡山鉄道局から伯備線社内営業が認可され、列車内の立売も開始する。

「長年、特急『やくも』の車内販売に大阪屋のお弁当を積んでいましたが、2009年9月末に廃止。現在は、市内を中心に仕出し料理やお弁当の店頭・ご予約販売をしております」

寝台特急「サンライズ」に駅弁を届けるサービスは、「昔から、JRの要望があれば届けていました」とのこと。知る人ぞ知るサービスだったようだ。

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同じく坪内さんプロデュースの「ヒャクジュウゴ伯備線勇姿弁当」(大阪屋)(写真:坪内政美)

このとき、私が受け取った駅弁は、前出の「さらば381 勇退辨當」。新見は日本初のキャビアの養殖に成功したことで有名なので、大阪屋さんは最初はキャビアを入れる予定で工場へ視察に行ったが、あまりに単価が高くて断念。そこで別の新見名物を探し、地元産の和牛「千屋牛」(ちやぎゅう)を入れた。許可取りなどを経て、完成した弁当は、6月に300食販売すると報道したら、予約だけで完売。あわててそこから500食を追加した。

もうひとつ、湘南色車両の掛け紙「ヒャクジュウゴ伯備線勇姿弁当」は、2024年9月に販売した。ちょうど115系湘南色が引退する時期で、撮影会イベントが行われ、そこで出されたお弁当を一般発売した。

これら2つは、在庫があれば、今でも買える。

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現在の新見駅(筆者撮影)

駅弁文化を維持するためにできることは?

「昭和40年代には大阪屋でも1日にお弁当を1000個売り、従業員も50人ほどいました」と竹井さんが話すように、かつてはターミナル駅として賑わった新見駅だが、1日の乗車人数は、2004年度以降、1000人を下回り、減り続ける一方だ。

しかし今回のように、イベントなどで新しく駅弁を作って宣伝すれば、かなりの反響があることがわかった。これは駅弁業界にとっても良いニュースなのではないだろうか。

駅弁は、その土地のおいしいものをギュッと詰め込んだ宝箱のようなもの、とつねづね話をしているが、なくなってしまったら、元も子もない。昨今の人手不足や材料費の高騰など、作り手にとっても問題は多いが、その火を絶やさないためにも、私たちができることは、日頃から駅弁を買い続けることしかない。私の本が、駅弁に興味を持ち、手に取ってもらえる、ひとつのきっかけになれば大変ありがたいと思う。

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