小学校の時間割、どうやって決めているの? 現役教師が語る「思い通りには絶対に組めない」時間割事情

 小学校の時間割、いったい誰がどのように決めているのか、疑問を持ったことはありませんか? 大阪の公立小学校の現役教師・松下隼司先生に、学校の先生たちがどのように時間割を組んで知るのか教えてもらいました。

■どうして国語が2時間続くの?

 公立小学校の教師(23年目)をしている松下隼司と申します。小学生のお子さんがいる知り合いのママさん友だちから、「マジなんで体育が1時間目なの? プールが1時間目からとかイミフ。誰が決めているの?」と、時間割への疑問や不満を教えてもらいました。国語の授業が1日2時間あると、それだけで学校に行きたくない理由にもなるそうです。

 そこで、小学校の時間割を学校はどうやってつくっているかを紹介します。

 まず、国語の授業が1日2時間あることへの疑問・不満についてです。

 各教科の授業時間は、学校教育法施行規則という国が定める基準「標準授業時数」をもとにしています。例えば、小学1年生の各教科の標準時数は、国語:306時間、算数:136時間、生活:102時間、音楽:68時間、体育:102時間、道徳:34時間、特別活動:34時間となっています。

 小学1年生の国語の標準授業時数が306時間というのは、小学1年生の国語の教科書の内容を指導するには、1年間で306時間(45分間×306コマ)ぐらいが適当ということです。

 小学校1年生~6年生の国語の標準授業時数の合計は、1年生が年間306時間、2年生が年間315時間、3・4年生が年間245時間、5・6年生が年間175時間です。小学2年生は1年生よりも年間9時間、国語の標準授業時数が多いです。これは、1年生よりも2年生の方が9時間分だけ授業するべき内容が多いということです。

 そして、その標準授業時数をもとに1週間あたり何時間、国語の授業を入れればいいかを計算します。1年間365日のうち土日を除くと240~250日です。ここから祝日や夏休みや冬休み、春休みを除くと、子どもが登校する日数は約200日です。ちなみにアメリカの小学校の年間の授業日数は、州や地域によって異なりますが約180日と日本より少ないです。

 200日間の授業日数で、標準授業時数が200時間以上ある1年生~4年生の場合、時間割に1日2時間国語の曜日があることは当然になります。だから教師としては、国語の授業時数を減らすことよりも、授業の改善に力を入れています。

■時間割の土台づくりは、無数のパズルみたいに大変!

 次に、「なんで体育が1時間目なの?」というご意見についてです。

 時間割の大枠を決めているのは、教務主任の先生です。例えば、体育の授業は、週に2~3回あります。この2~3回を決めるのがとても神経を使うのです。担任としては、体育の授業は2時間目か3時間目がいいです。2時間目だったら授業後に中休みがあるので片づけの時間も余裕があり、子どもも体を休められます。3時間目だったら、準備に余裕があります。給食後の体育も気持ち的に軽いです。食後の眠たくなる時間帯に頭を動かすよりも、体を動かすほうがいいなと思います。

 でも、当たり前ですが、学校は1クラスだけでなく、他の学年、他のクラスもあります。学校全体のことを考えて、教務主任の先生はさまざまな考慮をして時間割の大枠を決めます。

 例えば、「低学年は5時間目までで下校するので、6時間目に体育を入れることはできないな」「1年生は、給食後の5時間目に体育の授業を入れると、食べたものをもどしてしまうかもしれない。それに、着替えに時間がかかるので下校が遅くなってしまうかも。5時間目の体育は入れないほうがいいかな」「4時間目の体育は、給食があるから慌ただしい。1時間目の体育も登校後すぐだからかわいそう。4時間目の体育と1時間目の体育、どちらもあるのはやめとこう」などと考えに考えるのです。

 でも、1学年2クラスの小学校の場合、全部で12クラスです。12クラスに週3時間の体育があるということは、学校全体としては、週36時間の体育があるということになります。1日6時間授業としても週5日で、30コマです。週30コマパンパンに毎時間体育の授業を入れても36時間の体育が確保できません。そこで、クラスごとの体育の授業でなく、学年での合同体育にしたり、運動場や講堂の場所を割り当てたりすることになります。

 体育だけでなく、理科室や音楽室、図書室、図工室、家庭科室の各学年・各クラスの割り当てを教務主任の先生が考えます。他のクラスと重ならないようにだけではなく、専科の先生の事情も考慮しながら時間割の大枠を考えます。算数を習熟度別少人数指導にし、2クラスを3つのコースに分けて授業する場合は、3つのコース分の教室の割り当ても行います。特別支援教育担当の先生との調整も大切です。

 時間割の大枠づくりは、無数のパズルのピースを組み合わせるような大変な仕事というイメージです。

「毎年、同じものを使いまわせるんじゃない?」「AIで簡単に時間割を作れるんじゃない?」と思われるかもしれません。でも、毎年人事は違いますし、専科の先生の勤務形態もさまざまです。転勤で教員の異動もあるので、確認と調整が必要になります。

■時間割は、担任の思い通りには絶対に組めない

 教務主任の先生が、あーでもない、こーでもないと試行錯誤の末にようやく作ってくださった時間割の枠を、春休みに学級担任としてもらいます。1学年2クラス以上の学校になると、教務主任からもらった時間割には、すでに国語・算数・理科・図書・体育・音楽・図工・外国語が当てはめられていることが多いです。時間割で空白になっているマスは、7マスぐらいです。その7マスに社会(3時間)・道徳(1時間)・特活(1時間)・総合(2時間)を当てはめるのが学級担任の仕事です。

 若手のころは、教務主任の先生から年度始めに時間割の大枠をもらったとき、とにかく自分の都合のことばかり考えていました。「え~!」とか「この体育の時間、〇曜日の〇時間目に移動してもらえないかな」と不満を口にしてしまうこともありました。

 でも、教務主任の先生と職員室の席が隣になったことがあり、時間割づくりに苦心されている姿を見て猛省しました……。それ以来、時間割の大枠をもらったときは、自分のクラスのところだけでなく、他の学年・他のクラスのところも見るように心がけています。学校全体としてできるだけ不公平感が出ないように組まれた時間割の全体像を見るようにしています。そこには、教務主任の先生の配慮がたくさんちりばめられているのです。

 最後に、「プールが1時間目からとかイミフ」のご意見についてです。私は、最近、1時間目のプールはラッキーだと思うようになりました。以前は、朝イチは気温も水温も低いし、登校後すぐは慌ただしいから嫌に思っていました。でも、最近とても暑くて、朝イチでもぬるま湯のように温かいです。暑さ指数が「危険」になる前に、プールに入れる可能性が高い1時間目は、ラッキータイムです。実際に2時間目からは「危険」でプールが禁止になった経験がこれまで何度もありました……。

(文/松下隼司)

○松下隼司(まつした・じゅんじ)/1978年生まれ。奈良教育大学卒業。大阪の公立小学校に勤める現役教師。2児の父親。文部科学大臣優秀教職員表彰を受賞。令和6年版教科書編集委員を務める。著書に絵本『せんせいって』(みらいパブリッシング)、『ぼく、わたしのトリセツ』(アメージング出版)、教育書『むずかしい学級の空気をかえる 楽級経営』(東洋館出版社)、『教師のしくじり大全 これまでの失敗とその改善策』(フォーラムA企画)などがある。最新著書に『先生を続けるための『演じる』仕事術』(かもがわ出版)。教師向けの情報サイト「みんなの教育技術」で連載を持つほか、Voicy「しくじり先生の『今日の失敗』」でパーソナリティーを務める。