家庭料理って何?ベテラン料理研究家が追求した「食べ飽きない味」とは

仕事や育児などで忙しい日には、食事はつい外食や中食で済ませてしまいがちですが、何といっても、家族への思いを込めて手作りした家庭料理は、日々の食卓に安心感と幸福感をもたらしてくれます。家庭料理のコツを凝縮した料理本「50年続く 料理教室の 十八番(おはこ) レシピ」(ダイヤモンド社)をこのほど出版した料理研究家の石原洋子さんに、家庭料理の魅力や、おすすめのレシピを教えてもらいました。

写真はイメージです

石原さんは、家庭料理を「一般的に家庭で日常的に作られ、食べられている料理」と定義します。「多くの人が、家にある材料で作る、和洋折衷の手軽な料理をイメージすると思います。私が考える家庭料理は、毎日食べても飽きない味、ほっとする味。自分で作るため、『信頼できる料理』とも言えますね」

今の時代は、安価でおいしい外食や中食が増えていますが、家庭料理には外食や中食にはない魅力があると、石原さんは言います。「外で食べる食事には添加物が含まれているものが多くて、いつも同じ味付けなので、マンネリ化すると思います。それに比べて家庭料理は、シンプルな調味料を使い、素材の味が楽しめます。家庭の味はそれぞれ違いますが、特別な材料でなくても自由に調理して、おいしく食べられるのです」

石原さんが手がける家庭料理は、栄養値が高く、新鮮で季節を感じられる旬の食材を使うメニューを基本としています。冷蔵庫にある材料を使い、その時の食欲に合った献立を考えるなどして、食材を無駄にしないことも意識しています。

「和」の家庭料理を作るコツは、シンプルな調味料を使うこと。きんぴら、煮物、魚の煮つけなどの甘辛煮は、調味料の比率を「酒:みりん:しょうゆ=1:1:1」として、好みで砂糖を少々加えると、おいしく作れます。「だしを取るのが面倒なため、和食は難しいと考える人は多いと思いますが、私は汁もの以外、基本的にだしを使いません。その方が素材の味を生かした『食べ飽きない味』になるからです」

石原さんが出版した料理本「50年続く 料理教室の十八番レシピ」(ダイヤモンド社/定価1760円=税込み)

石原さんの料理教室には、長期間通っている生徒が多いといい、料理教室は「何か新しいヒントに出会えるのではないか」と期待されていると、石原さんは感じています。

「昔の家庭は、作るものが毎日煮物で、味付けも同じようだったのかもしれませんが、今は世界各国の料理を自宅で作れるようになりました。私は、料理をしていると、『この調味料を入れたら、また違う料理ができる』といった面白さを味わえるのが好き。代々受け継がれる家庭の味もいいけれど、おいしいものを追求することに興味があります。忘れたくない味は受け継いで、新しいものも取り入れながら、幅広く家庭料理を楽しめたらいいですね」

とは言え、毎日料理を作っていると、献立を考えるのがおっくうになって、作りたくないと思う時もあるでしょう。石原さんは、「頑張りすぎないことが大切。息詰まったら簡単にできるレシピを選んだり、味付けを変えたりするだけで違う料理になるので、工夫してみてください」と話します。

そもそも、「料理が苦手」という声も少なくありません。そんな人に、石原さんは「簡単なものでいいから家庭料理を作ってみてほしい」とアドバイスします。「料理は買って食べることもできますが、家で作って食べることで、家族が喜び、みんなで食事をすることが好きになると思います。気軽に料理をすることを覚えてもらえたら」

石原さんの料理教室で人気の家庭料理のレシピを二つ教えてもらいました。

【豚肉と新じゃがのこっくり煮】

「角煮と肉じゃがの、いいとこ取りのレシピです。あくと脂を取り除くことで、すっきりとした味わいに仕上がります」(石原さん)

豚肉と新じゃがのこっくり煮(撮影/福尾美雪)

<材料 2~3人分> ◇豚肩ロースかたまり肉…400g ◇新ジャガイモまたはジャガイモ…300g ◇卵…2個 ◇ショウガ(薄切り)…1かけ分 ◇水…500ml ◇酒…100ml

A ◇しょうゆ…大さじ2と2分の1 ◇みりん…大さじ2と2分の1 ◇砂糖…大さじ1と2分の1

<作り方> (1)豚肉は4~5cm幅に切る。鍋に入れ、水を加えて中火にかける。煮立ったら、あくと脂を取り除き、ふたをして弱火で40分ほど煮る。 (2)(1)から豚肉を取り出し、ゆで汁はペーパータオルをのせたざるでこして、脂を取り除く。 (3)鍋に(2)の豚肉と、豚肉がかぶるくらいのゆで汁(全量で足りない場合は水を足す)、酒、ショウガを入れて中火にかけ、煮立ったら落としぶたと鍋ぶたをして、弱火で30分ほど煮る。 (4)卵は熱湯にそっと入れ、6分ゆでて水にとって殻をむく。新ジャガイモは、たわしを使って皮をよく洗う。ジャガイモの場合は、皮をむいてひと口大に切る。 (5)(3)にAを入れ、(4)の新ジャガイモを加え、落としぶたをして30分ほど煮る。新ジャガイモが軟らかくなったら、(4)のゆで卵を加えて3~4分煮て、火からおろして味をなじませる。

【タンドリーチキン】

「漬け込んでおいて焼くだけの簡単レシピ。『香りだけでおなかが鳴る』と、私の孫にも大好評です」(石原さん)

タンドリーチキン(撮影/福尾美雪)

<材料 2人分> ◇鶏もも肉…大1枚(300g)

A ◇ヨーグルト…大さじ3 ◇ニンニク(すりおろす)…2分の1かけ分 ◇カレー粉…大さじ1 ◇塩…小さじ3分の2

◇レモン…適量

<作り方> (1)鶏肉は余分な脂を取り除く。ポリ袋に入れ、Aを加えて袋の上からもみ込み、袋の空気を抜いて口を閉じ、途中上下を返して30~40分おく。 (2)(1)の鶏肉の汁けを拭き取り、皮目を上にして魚焼きグリルに並べ、8分ほど焼き、中まで火を通す。片面焼きの場合は、最初に皮側を上にして焼き、返してさらに焼く。好みでレモンを絞る。

(読売新聞メディア局 長縄由実)

プロフィル石原洋子(いしはら・ひろこ)料理研究家。幼い頃から母親と共に台所に立ち、「昼食は自分たちの手で」という食教育を自由学園で学ぶ。卒業後は家庭料理、フランス料理、中国料理など、各分野の第一人者に学び、アシスタントを務めたのちに独立。50年以上続く料理教室では、和・洋・中の料理を教える。著書に、「お豆腐、今日はどう食べる?」(家の光協会)、「77歳、石原洋子のからだが整うスープ」(主婦と生活社)など多数。