日本のものづくりの結晶「造船技術」に迫る 建造量国内1位の企業を取材【2025/9/14 所さんの目がテン!】

造船業は、日本が世界をリードしてきた産業のひとつ。9月14日(日)日本テレビ「所さんの目がテン!」では、船の建造量日本1位の今治造船を取材。日本のものづくりの結晶である造船技術に迫りました。

完成間近の船を見学

まずスタジオでは、日本の貿易における船舶輸送の重要性を紹介。日本の貿易量における海上輸送の割合において、海上輸送が全体の99.6%を占めているデータを紹介しました(出典:日本海事広報協会「日本の海運SHIPPING NOW 2024〜2025」2023年データ)。

プレゼンター・武石鈴香がやってきたのは愛媛県西条市にある今治造船の工場。造船歴29年・今治造船 西条工場 執行役員 副工場長の蒲地直樹さんに工場内を案内してもらいます。西条工場は約68万5000㎡、東京ドーム約15個分の広さです。

「ここではどんな船を作っているんですか?」と聞くと、「今作っている船は18万トン積み。船の長さは300mあります」と蒲地さん。まさにこの時、巨大な貨物船が製造されていました。

この工場では貿易で活躍する大型貨物船を製造。船は運ぶ物や場所によってさまざまな種類がありますが、今回は、鉄の原料となる鉄鉱石や、石炭、穀物などを容器に入れず「ばら」で大量に運ぶ「ばら積み貨物船」の製造現場で、完成間近の船の中を特別に見学させてもらうことに。

高さ25mの船の上から貨物を積む倉庫をのぞいてみると、かなりの深さ。ばら積み貨物船は船体の大半を倉庫が占めており、鉄鉱石や小麦などを大量に積むことができるのです。

まずは、船員が生活する居住区というエリアを見せてもらいました。

キッチンには、船ならではの工夫が施されています。「お皿を入れている棚には止めがあるので、落ちることがない。コップを置くところも(船の揺れで)落ちないような形になっています」と蒲地さん。

船員には1人1部屋が与えられ、長いときには数か月にも及ぶ航海をこの部屋で過ごします。各部屋にはシャワーやトイレも完備。

7階には操舵室。船長や航海士が操船や航海の指揮を行う場所で、大型船のハンドルは意外にもコンパクト。

造船の現場へ

続いて、この巨大な船はどうやって造られているかを調査。まずは船の材料について。船は外側も内部構造もほとんどが鉄板を加工したもので造られています。磁石でつくため、マグネットクレーンで材料の仕分けがなされています。

強くて曲げやすい鉄板を使って効率よく船を作り上げる方法があるそうで、「ブロック工法といい、部品を作って、それをつなぎわせて船を作っています」と蒲地さんが説明するのが、大型船に用いられるブロック建造法。

材料の鉄板をパーツに切り分け、まずは小さなブロックに組み上げます。その後さらにブロック同士をつなぎ合わせて、どんどん大きなブロックにしていきます。最終的に、巨大なブロックを組み合わせて船が完成するのです。

続いて、鉄板を切るところを見せてもらいます。大型船の構造は、鉄板から細かいパーツを切り出し、複雑に組み合わせ、骨組みと外板を作り高い強度と耐久性を出す船殻構造。そのため、全部で約9万ものパーツを切り出す必要があります。船は運ぶものや航路によってオーダーメイド。発注先の希望などを聞きデザインや大きさを決めます。

次は、切り出したパーツを曲げるぎょう鉄という作業です。「鉄をあぶって水で急激に冷やすことによって鉄が収縮する。人の手で曲げる方が複雑な曲がりができる。非常に技量を求められる作業になります」と蒲地さん。

鉄を曲げるぎょう鉄は、加熱しすぎると鉄が脆くなり、加熱が足りないと曲がらず、加熱の温度コントロールや冷却の仕方など経験と感覚が問われる難しい作業。船の外側の丸みを持つ鉄板のほどんどは人の手で曲げられています。

切り出しや加工をしたパーツは、溶接でつなぎ、組み立てていきます。鉄と鉄をつなぐ溶接は高い機密性・強度があり、現在の造船では欠かせない技術です。

造船に詳しい横浜国立大学大学院 工学研究院 岡田哲男教授によると「大型船では全溶接長が500kmから1000kmになる。その長さにわたって欠陥のない高品質な溶接をする技術は造船において非常に重要」といいます。

続いては塗装の作業。「基本的には職人さんがスプレーで(塗装し)、塗料の厚みの指示があるんですが(それに合わせて厚みを)均等にする必要があります。1回できっちり仕上がるように調整をするのが難しい」と蒲地さん。塗装が薄い部分から劣化が起こる可能性があるため、決められた厚さで均一に塗ることが重要なのです。

いよいよ最大の大きさに組みあがったブロック。大型貨物船はいくつものブロックが組み合わされ、それぞれの職人たちの技によって作り上げられていたのです。

そもそも鉄でできた重たい船がなぜ浮くのか?スタジオでは実験を行いました。

用意したのは水槽と鉛の板。まずは鉛板をそのまま水槽に入れてみると、重たいので沈んでしまいます。続いて、鉛を船の形にして水槽に入れてみると、先ほどは沈んだ鉛が、船の形にするだけで浮いています。

これは、浮力が物体が押しのけた水の重さと等しくなるという「アルキメデスの原理」によるものです。板のままだと押しのける水の量が少なく、重さに勝てず沈みますが、船の形にすると板のものよりも押しのける水の量が多くなり、その結果、船全体の重さと押しのけた水の重さが釣り合うため、浮くことができるのです。

製造工程でのクレーンの役割

続いては、ブロックを組み合わせ造られた「総組ブロック」の様子を見ていきます。船の先端である船首の部分や、エンジンルームの部分のブロック。例えば、船のエンジンを積むエンジンルームの部分は重さなんと約1100トンと超大型。この巨大なブロックを、一体どうやってつなげるのでしょうか?

建屋で組み立てられたブロックは、ドックという船を最終的に建造する施設にクレーンで移動させ組み立てます。その移動に使われるのが、巨人を意味する名前を持つ「ゴライアスクレーン」。クレーンが水平方向に動き、ドックへとブロックを運ぶのです。

クレーン1台につき、地上約80mの位置に操縦室が設けられており、そこでクレーンを動かします。

今回は特別に操縦室を見せてもらえることになりました。操縦室までは、エレベーターで登ります。2分間エレベーターに乗り、さらに階段を登るとクレーンの一番上の部分に到着。さらに階段を登ったのちに、操縦室の扉を開けた先の急な階段を下りていき到着。

操縦室には今治造船 西条工場 施設管理チーム 係長 岡林史也さんが。足元はガラス張り。ゴライアスクレーンの操作は、地上の合図者が重量のバランスや位置を見ながら操縦者へ指示を出し、操縦者と連携して行います。操縦者は1日約8時間、この場所で任務にあたるそう。

操縦室を見学したあとは、地上から船のブロックを運ぶ様子を見学。運ぶのは、1100トンの巨大ブロックです。

地上の合図者の指示で、オペレーターはレバーを慎重に動かし持ち上げていきます。スムーズな連携により安全に船のブロックが持ち上がっていき、持ち上げられたブロックは、ドックに運ばれていきます。

そしてエンジン部分のブロックを、別のブロックとくっつけていきます。さらに、船のブロック同士が近づき、より正確な指示と慎重なクレーン操作が要求されます。こうしてブロック同士がくっつきました。くっついた箇所の隙間は最終的に溶接し接合する形です。

クレーンがなく重いものを運べなかった時代は、すべての組み立てをドックで行う必要がありました。しかし大型クレーンが出来たことで、地上の建屋の中で巨大なブロックを製造しドックに運ぶことができ、作業効率が大幅にアップしたのです。「約7隻から8隻、同時に各ステージで作業しています。クレーンなしでは造船所は成り立たない」と蒲地さん。

クレーンによってドックの中に運び込まれたブロックは、船の形に組み上げられていきます。そして約2か月で船の形がほぼ出来上がりました。

外回りができたら、進水という作業を行い、船を初めて水の上に浮かべます。まずドックの中に海水を入れ、ドックの中の水が海面と同じ高さになるとドックゲートから船を海へと出します。岸壁での最終工事や性能テスト・試運転を終えて、船が完成するのです。