「ラブホ街の『ガチ中華』は美味い」は本当か?「気まずい場所」には隠れた美味い店あり

「ラブホの近くにあるガチ中華は美味い」説を人気ブロガーが検証
近年、池袋や西川口を中心に『ガチ中華』が勢いを増している。中国現地そのままのディープな味を求める人々に人気のこれらの店は、風俗店などが摘発されたあとのエリアに集中して出店していることも多く、ラブホテルと隣り合っている店や、ラブホテルの1階に出店しているケースも見かけるという。
「東京で中華を食べ歩く会社員」として人気のブロガー・阿生氏に、「入るのが気まずいけど、食べたら美味しい」、そんなお勧めのガチ中華屋を紹介してもらった。
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ラブホ街に『ガチ中華』が集まるワケ
歓楽街の近くにガチ中華が集まってくるのには理由がある。それは賃料の安さだ。
日本人の飲食店経営者だと風俗店やラブホテルが集まるエリアであれば雰囲気や治安などを考慮して出店を躊躇してしまうが、中国人(外国人)経営者であれば気にしない場合が多いからだ。その立地から賃料が割安になっていることが多く、逆にそうした場所で固定費を下げながら店を経営できることをチャンスと捉えて出店するのである。
今回は池袋、西川口、小岩の3ヵ所でラブホ街にほど近い、または隣接している場所に出店していて、一見お店に入るのには躊躇してしまうが、いざ勇気を出して入ってしまえばガチな中国の地方料理が楽しめるお店を紹介したい。
1_池袋『ヤミーダック』で食べる広東式ローストダック
池袋北口のホテル街の近くにある『ヤミーダック』はホテルの1階に出店しており、「ホテル街×ガチ中華」の代表的存在だ。X(旧Twitter)でもその特徴的な外観がバズり、「ホテルに行く前に食事に誘うのかな?」「ホテルにデリバリーはできるのか?」などと話題になった。
肝心の店はというと、オーストラリア・シドニーの中国人が創業したお店が日本に輸入されてフランチャイズ展開をしており、駒込、高田馬場、池袋で3店舗を展開している。駒込店にあるセントラルキッチンで作ったローストダック、ローストポークなどが店に運ばれているのでどこでも同じ味が楽しめるのが特徴だ。

『ヤミーダック』の外観。席数の少なさや店内に入りにくい雰囲気もあってフードデリバリーでの注文が多い
ホテルの白い看板と中国語の赤い看板がコントラストになっており、店内の様子も外からは見えにくくなっているため店に入るのを躊躇してしまうが、いざ店の中に入るとテーブルが4つ並ぶシンプルな造りになっている。
注文は日本語にも対応している券売機から行うので中国語が話せなくても問題ない。基本はローストダックやローストポーク、叉焼などを選び、ご飯の上に盛り付けて食べるスタイルだ。
肉は1種類だけでもいいし、豪華に2種類、3種類盛り付けてもよい。セントラルキッチンで職人が毎日手作りしているというローストダックとポークは柔らかく、味も染み込んでいてなかなか美味い。池袋のラブホテルの1階にいながら香港や広州のローカル食堂で食事をしているかのような気分になってくる不思議な場所である。

ローストダックと叉焼ご飯定食(2種盛り)は1580円。お肉はジューシーで味が染み込んでいる
2_ 小岩『辣香坊』の東北料理
池袋のラブホ×ガチ中華の『ヤミーダック』は’24年にオープンしたが、小岩には10年以上前からラブホテルの1階で営業している草分け的存在の店がある。小岩北口から徒歩数分の場所にある『辣香坊』だ。小岩も駅前は繁華街になっており、夜のお店に紛れ込むようにガチ中華やフィリピン料理、タイ料理など海外現地系の店が見つかる。
『辣香坊』は上の階にあるホテルがレンガ調なこともあって、マンションのようにも見えるため『ヤミーダック』ほどのインパクトは無い。だが、数段の階段を下って店に入る半地下風な構造になっていることや、店の前に所狭しと置かれた看板の多さもあって若干の入りにくさがある。

『辣香坊』の外観。マンションのような外観だが、ホテルの看板もある
しかし、一歩店に入ってしまえばそこにはわりかし一般的な中華料理店の内装が広がっている。この店の特徴はメニューの豊富さとコスパの良さだ。ランチメニューだけでも40種類以上あり、値段は680円からと、このご時世にはありがたい価格設定となっている。通常のアラカルトメニューも100種類以上はありそうな豊富さでどれにしようか迷ってしまう。

店に入ると意外と広々としていて明るい雰囲気になっている
店員に話を聞くと店のオーナーとシェフは中国東北部の遼寧省出身ということなので、東北系のメニューを頼むのがおすすめだ。羊肉串(ラム肉の串焼き)や酸菜排骨(スペアリブと発酵白菜の煮込み)は東北地方でよく食べられているメニューである。
酸菜(発酵白菜)は店で白菜を塩漬けにして発酵させているので、その独特な酸味が効いたスープがめちゃくちゃ美味しい。北京ダックのような小麦を伸ばした生地にいろんな具材を巻いて食べる春餅も東北地方ではよく食べられている料理で日本で食べられる店も多くないのでぜひお試しあれ。豚肉の千切り炒めやじゃがいもの炒め、ニラと卵炒めを一緒に頼んで巻いて食べるとよく合う。

羊肉串(写真右上・1本 132円)と京醬肉絲春餅(同下・1298円)。甘めの味付けなので辛いものが苦手な人にも嬉しいメニューだ

酸菜排骨凍豆腐(1518円)。酸菜(発酵白菜)の酸味が癖になる味付けだ
3_西川口『壹家大排档』の福建小吃
最後はチャイナタウンとしても名高い西川口。西口エリアを歩くと中国語しか書いていない看板がいくつも目に入ってきて、耳をすますとどこからか中国語が聞こえてくる。元々は風俗店などがたくさんある歓楽街であったが、摘発をきっかけに空いた場所に中国系の店が増えていき、チャイナタウンのようになっていったという経緯がある。
となりの建物がラブホテルであろうと風俗店であろうと気にしない、むしろ安くテナントを借りられてラッキーという外国人ならではの感覚で近年では中国だけでなくベトナム系の店や物産店も増えている。

『壹家大排檔』の外観。通りの向かい側には風俗店などが立ち並んでいる
西口エリアの北側はかつて風俗店が立ち並んでいた名残があり、ホテルやソープランドなどが連なっている通りもある。そんな通り沿いにあるのが『壹家大排档』というお店だ。
夕方以降は道も暗くなり、風俗店のネオンで一気に怪しい雰囲気になるためかなり歩きにくいのだが、こちらは福建省のオーナーが経営する店で、福建省の省都、福州の小吃(軽食)が楽しめる。特に注目したいのが午前中限定で作っているという手作り小吃(軽食)だ。

福建小吃(軽食)のメニュー。中国人向けのメニューなのか中国語のみの記載だ

本メニューにはしっかり日本語の記載もある。左側には海鮮焼きビーフンなど福建省で食べられるメニューが並ぶ

紫菜餅(写真左・350円)と肉燕(1000円)は福建出身のシェフがお店で手作りしている
海蠣餅という牡蠣や豚肉、キャベツ、海苔などを米と大豆で作った生地に包んで揚げた揚げ物や、海蠣餅の海苔が主役バージョンの紫菜餅などは軽食にもなるし、ビールのつまみにもなるオールマイティーさが嬉しい一品である。
また、豚肉や魚肉をミンチして作った餡を薄く伸ばした皮に包んだ肉燕(福建式ワンタン)も名物小吃だ。小ぶりでちゅるりんとした皮に包まれた餡はぷりぷりしていてあっという間に胃袋に吸い込まれていく。その他、長崎ちゃんぽんのルーツともいわれる海鮮燜麺(海鮮煮込み麺)や海鮮小炒米粉(海鮮焼きビーフン)なども福建料理屋ならではの料理である。
今回は池袋、小岩、西川口の3エリアでホテルなどが立ち並ぶ入りにくいお店をあえてピックアップした。個人的にはホテルの1階にある池袋や小岩の店よりも風俗店が並ぶ通りにある西川口の壹家大排档が最も入りにくい感じがしたが、手作り小吃が食べられる午前中の時間であれば入りにくさも比較的緩和されるので、ぜひ挑戦いただきたい。
これらのエリアには今回紹介したお店以外にもたくさんのガチ中華の店があるので、他のお店の探索もお試しあれ。最上級に入りにくいお店をクリアしていればどんなお店も気軽に入れるはずだ。
※記事内の価格はすべて税込み、情報は取材時(’25年9月上旬)のものです。
取材・文・写真:阿生
東京で中華を食べ歩く会社員兼ライター。大学在学中に上海・復旦大学に1年間留学し、ガチ中華にはまる。現在はIT企業に勤める傍ら都内を中心に新しくオープンした中華を食べ歩いている。