高市早苗氏、旧統一教会の教義や教祖は「分からない」…「接点議員」気にせず登用する「鈍感さ」のナゾ

 自民党の新総裁に就いた高市早苗氏。問われる一つが世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との向き合い方だが、YouTubeに出演した際の言動が物議を醸している。教義などについて「分からない」と発したのだ。教団側はスパイ防止法の制定など、保守界隈(かいわい)で長く論陣を張ってきた。「保守政治家」とも評される高市氏が教団側の詳細に疎いなんて、あり得る話なのか。(太田理英子、山田雄之)

◆お笑いタレント・中田敦彦さんの質問に

 9月30日配信のYouTubeの番組。総裁選さなかの高市氏が出演し、対談相手のお笑いタレント、中田敦彦さんが旧統一教会の問題に切り込んだ。

◆お笑いタレント・中田敦彦さんの質問に, ◆勝共連合は「スパイ防止法」制定に執念, ◆古谷経衡氏「本当に知らないなら保守の素人」, ◆9月に教団総裁の韓鶴子氏が逮捕, ◆問題意識の欠落, ◆解党的出直しどころか「古い自民」の温存に, ◆「接点議員」復権で解散命令の行方は

自民党の新執行部の面々=7日、東京・永田町の党本部で(佐藤哲紀撮影)

 教団の教義と自民党保守派の考えの矛盾を語る中田さんに、高市氏は「教義っていうのは私、分からないですけれども」と返し、教義内容を聞いたのは「今、初めて」と強調した。教祖の名前を問われると「すみません」とだけ口にした。文鮮明(ムンソンミョン)氏は知らない反応だったが、文氏の妻、韓鶴子(ハンハクチャ)氏の名前が出ると「あー、『つるこ』って言っちゃ、だめなんですよね」と急に答える一幕もあった。

 その高市氏、実は少なくとも1994〜2001年に複数回、教団と関わりが深い日刊紙「世界日報」に登場している。2001年1月の紙面では、議席の一定割合を女性に充てる「クオータ制」について「大反対」と持論を展開した。

 安倍晋三元首相の銃撃事件後の2022年8月には、高市氏は教団系の雑誌「ビューポイント」に出ていたと会見で認めた一方、「旧統一教会と関わりがあると知らなかった」と述べている。

◆勝共連合は「スパイ防止法」制定に執念

 党内きっての保守派とされ、安倍氏の後継者を自任してきた高市氏。同じく保守色の強い主張で論陣を張ってきたのが教団側だ。

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安倍晋三・元首相(資料写真)

 教団系の政治団体「国際勝共連合」は、安倍氏と父の晋太郎元外相、祖父の岸信介元首相をはじめ、多くの自民党議員と関係を築いたとアピールしてきた。1986年7月の勝共連合の機関紙「思想新聞」は、団体の理念に共鳴する「勝共推進議員」130人を衆参同日選で当選させたとして氏名一覧を掲載した。

 保守派の言論に詳しい評論家の古谷経衡(つねひら)氏は「勝共連合は、戦後日本の数ある反共的な宗教右派の一つ。2000年代にネット右翼が台頭する前の古典的右派の界隈で、教団側と岸氏ら自民党側の関係は暗黙の了解だった」と説く。

 勝共連合が執念を燃やしてきたのが「スパイ防止法」の制定だった。自民党の議員らと足並みをそろえて推し進めてきた。

◆古谷経衡氏「本当に知らないなら保守の素人」

 1984年、岸元首相が旗振り役となり、法制定のための議員、有識者の懇談会が発足。翌1985年に関連法案が国会に提出された。だが、世論や野党の反発を受けて廃案に。40年の時を経て、再び法制定に気炎を上げているのが高市氏だ。

 スパイ防止法の問題を指摘してきた海渡雄一弁護士は「1985年の法案提出は、勝共連合が自民を説得してやらせたこと。党内でも反対の声があったのに、今も遮二無二、進めようとする勢力があるのは、勝共連合から受け継いだDNAがあるためで、同じ価値観が共有されている」とみる。

 教団について疎さをみせる高市氏に対しては「『知らない』と言えば済むと思っているのでは」と語る。

 先の古谷氏は「しらじらしい」とあきれる。「議員を30年以上務め、教団の最盛期もくぐりながら、教祖も知らないというのは無理がある。本当に知らないなら、自ら『保守の素人』と言っているようなものだ」

◆9月に教団総裁の韓鶴子氏が逮捕

 詳細を「知らない」で済まされる教団ではない。

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有田芳生氏(資料写真)

 文部科学省による解散命令請求を受けて今年3月、東京地裁は宗教法人法に基づいて解散を命じる決定をした。高額献金被害は少なくとも1500人超、計約204億円に上ると認定し、「類例のない膨大な規模の被害」と指摘した。法令違反に基づく解散命令は、地下鉄サリン事件などのオウム真理教、霊感商法詐欺事件の明覚寺に続く3例目だった。

 韓国では9月、政治資金法違反などの疑いで、教団の現総裁の韓鶴子氏が逮捕された。現地メディアによると、2022年1月、保守系野党の国会議員で尹錫悦(ユンソンニョル)前大統領の側近に約1000万円を渡し、教団への支援を求めたなどとされる。

 ジャーナリストとして教団の問題を長く追ってきた立憲民主党の有田芳生衆院議員は「安倍氏が撃たれてからの報道や解散命令請求を巡る裁判を通して、社会を揺るがす存在だと明らかになっている。教団側の詳細は、政治家として知っていなければならない知識だ」と述べる。

◆問題意識の欠落

 教団側との接点についても曖昧にはできないとし、「教団側と懇意になれば、信者を秘書として送り込んだり、実現してほしい政策を要望したりして、政界工作の動きが出てくる。今後、ほとぼりが冷めれば、再び政治家が使われかねない状況が生まれる。関係を断ち切らねばならない」と訴えかける。

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旧統一教会と関わりが深い「世界日報」に掲載された高市氏の記事

 だが高市氏は、問題意識が抜け落ちるように映る。

 昨年の総裁選で候補者として出演したテレビ番組では、自民と教団側との関係について「再調査する人はいるか」と挙手を求められても、他の候補と同様に手を挙げなかった。

 今回の総裁選では、推薦人の半数以上が教団側との接点が取り沙汰された議員だった。7日に決まった党執行部の人事を巡っても、鈴木俊一幹事長や麻生太郎副総裁は、教団系の国際勝共連合の運動に同調する勝共推進議員として機関紙に名前が挙げられていた。

◆解党的出直しどころか「古い自民」の温存に

 政治ジャーナリストの泉宏氏は「高市氏は人脈が広くなく、総裁選での勝利が予想されていなかった中、多くの議員が他候補に流れた。推薦人は『いわく付き』の議員たちに頼らざるを得なかった」と解説する。

◆お笑いタレント・中田敦彦さんの質問に, ◆勝共連合は「スパイ防止法」制定に執念, ◆古谷経衡氏「本当に知らないなら保守の素人」, ◆9月に教団総裁の韓鶴子氏が逮捕, ◆問題意識の欠落, ◆解党的出直しどころか「古い自民」の温存に, ◆「接点議員」復権で解散命令の行方は

自民党の萩生田光一衆院議員(資料写真)

 党人事に関しては、選挙で教団側からボランティア支援を受けたことなどが判明した萩生田光一衆院議員が幹事長代行に登用された点に言及し「麻生氏に気を使った上で、総裁選で汗をかいてくれたことへの論功行賞だろうが、重大性を認識しておらず、鈍感だと言わざるを得ない」と語る。

 党として「接点議員」の重用はプラスに働くのか。泉氏は「有権者は裏金問題はもちろん、旧統一教会の問題も忘れていない。今回の陣容を見れば高市氏に政治的モラルがあると思えない上に、党としても解党的出直しどころか古い自民の温存に映る」と断言する。

◆「接点議員」復権で解散命令の行方は

 「接点議員」が復権すると、懸念されるのが解散命令の行方だ。教団は東京地裁決定を不服として即時抗告し、東京高裁で審理が続いている。

◆お笑いタレント・中田敦彦さんの質問に, ◆勝共連合は「スパイ防止法」制定に執念, ◆古谷経衡氏「本当に知らないなら保守の素人」, ◆9月に教団総裁の韓鶴子氏が逮捕, ◆問題意識の欠落, ◆解党的出直しどころか「古い自民」の温存に, ◆「接点議員」復権で解散命令の行方は

スパイ防止法の制定を繰り返し求めた教団系の政治団体「国際勝共連合」の機関紙

 教団に詳しいジャーナリストの鈴木エイト氏は「高市氏が総理になり、教団側と根深い関係にあった旧安倍派の議員らが文科相に就任した場合、解散命令請求を出した文科省の姿勢が揺らいでしまう恐れはある」と口にする。

 では、歯止めの術(すべ)をどう考えるべきか。

 鈴木氏は「メディアは会見で、他党は国会の場で『終わった問題じゃない』『国民は納得していない』と追及し、関心を失っていない姿勢を示し続けることが大切だ」と提言する。

◆デスクメモ

 文鮮明氏の名は答えられないのに、韓鶴子氏は把握し、「つるこはダメ」と口にする。政治家としてどういう生活を送れば、そんな偏った知識になるのか。無理があると突っ込みたくなる一方、本当にその認識なら、偏った情報しか耳に入らない政治家に国を託せるのかと思えてくる。(榊)

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