《万博閉幕まで2日》半年で103回通った“ガチ勢”男性も… 「何を楽しみに生きれば」高まる“万博ロス”のムード

 残すところ2日となった大阪・関西万博。その思い出を語り合う閉幕後のイベントはすでに予約が埋まり、「万博ロス」のムードが広がっている。184日間のお祭りを満喫した人は、“万博後”をどう過ごすのか。

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「これから何を楽しみに生きればいいかわかりません」

 そうため息をつくのは、大阪府に住む40代女性。4月13日に万博が開幕してから、夢洲には何度も足を運んだ。その数32回(10月7日時点)。何度でも入場できる、3万円の「通期パス」を持っているため、1回あたりの負担は大きくなかった。だが、交通費が往復で千円ほどかかる。少しでも節約するため、おにぎりやパンを持ち込むこともあったという。

「万博は、この半年間の私のすべてでした。仕事や人間関係で嫌なことがあった日も万博があると思えば乗り切れたんです」

 万博ロスを嘆くのは、この女性だけではない。同じく大阪府に住む女性(31)も通期パスを駆使し、万博に通った。仕事後にふらっと夢洲に行き、大屋根リングの芝生でビールを飲むだけの日もあった。なんともぜいたくな楽しみ方だが、通期パスを持つ地元民にとって、それだけ万博が日常に溶け込んでいたともいえる。女性は言う。

「会場の外でも、電車や街にはミャクミャクがいたるところにいました。それもなくなると思うと、しんみりしそうです」

 日本国際博覧会協会によると、通期パスの購入者は40万人超。SNSでは、20回、30回と万博を訪れたという声も多く上がっている。そのなかでひときわ目立っていたのが、神戸市に住む40代のユージさんだ。10月9日時点で、万博を103回訪れたという。

「自営業なので、仕事は朝と夜に詰め込んで日中は万博に行く生活をしています。100回を達成したのは、9月30日。自宅から会場まで交通定期券を買って、一人で通っています」

 ユージさんが最初に万博を訪れたのは、開幕日の4月13日。当初は初日に行くつもりはなかったが、ブルーインパルスが飛ぶと聞いてチケットを取った。

「人混みは苦手で、お祭りやライブイベントに足を運んだこともほとんどありませんでした。でも、今後の人生、大阪で万博が開催されることはないかもしれないと思ったんです」

 自宅から会場まで距離はあったが、もともと休日は趣味のコスプレ撮影で大阪に行くことも多かった。きっと何度かは訪れるだろうと、初日から通期パスを購入。だが、自分が100回を超える“ガチ勢”になるとは思いもしなかった。

 転機が訪れたのは6月。来場回数が30回を超えたことをSNSに投稿すると、フォロワーの一人からコメントがついた。

■始まった「100回」への挑戦

「万博100回目指しましょう」

 その日を境に「100」という数字が頭をよぎるようになった。閉幕日から逆算すると、毎日行かないと達成できないかもしれない。そう思ってから、「万博100回」への挑戦が始まった。

「今年の夏もすごく暑かったじゃないですか。ハンディーファンを買って、カチカチに凍らせたジュースを保冷バッグに詰め込んで、毎日会場に行きました」

 数時間しか滞在しない日もあれば、12時間近く夢洲で過ごす日もあった。ほとんどの日はライブがある夜遅くまで滞在したという。ユージさんが特に魅了されたのがステージでのパフォーマンスだった。

「たまたま見たポーランドのステージがあまりにも素晴らしかったんです。民族衣装を着て、ズラッと並んで歌やダンスを披露する姿がとても美しくて、それをきっかけにステージに集中していくようになりました」

 万博では、ポーランドだけでなくさまざまな国が歌やダンスを披露している。これまで触れたことのない音楽があちこちで鳴り響く空間に胸が躍った。

「海外については小説や映画などで触れて関心はありましたが、旅行をしたことはありませんでした。でも万博をきっかけに名前すら知らなかったアフリカのブルキナファソという複雑な歴史背景を持った国のオペラに触れたり、キュリー夫人や第2次世界大戦のイメージしかなかったポーランドがゲーム大国であることを知れたり……。どの国もすてきで順位はつけがたいけれど、そう思えるような素晴らしい時間を体験できました」

 そう振り返るユージさんのスマホには、閉幕日である13日の入場券がキープされている。まだ入場枠に余裕があった2カ月ほど前に確保していた。最終日もステージを中心に万博を楽しむつもりだという。

 通期パスを持っているとはいえ、100回以上万博に足を運んだ猛者は多くない。この半年間、ユージさんが万博に注いだエネルギーは今後どこへ向かうのだろうか。

「時間がぽっかり空いてしまうわけですよね……」

 と、ユージさんはしみじみと語る。閉幕翌日の過ごし方は?

「実は、夢洲まで買っていた定期券が1週間余るんです。閉幕した次の日、もう一度夢洲に行って、終わったあとの会場を外から眺めたいなと思っています」

 お祭りの余韻はまだ少しだけ、続きそうだ。

(AERA編集部・福井しほ)