日本初の「フリーランスプライベートジェットCA」が明かす、“世界の富豪だけ”に与えられる特権。日本では84機の希少世界

皆さまは、「プライベートジェット」または「ビジネスジェット」という言葉を耳にしたことがありますか?

今年の初めにテレビドラマ「プライベートバンカー」(テレビ朝日系)でプライベートジェットが登場したのを覚えていらっしゃるかもしれませんね。

2023年にWBC (World Baseball Classic)が日本で開催された際に、大谷翔平選手がプライベートジェットを利用している姿が、ご本人のSNSにアップされたことでも話題となりました。

フリーランスのプライベートジェットCAとして働く山崎充子(やまざきみつこ)

日本初のフリーランスのプライベートジェットCA(キャビンアテンダント・乗務員)として、この世界に20年間身を置く私(山崎充子)が、上質でありながら意外と知られていない「世界のVVIP(Very Very Important Person)の空の旅」をご紹介します。

「プライベートジェット」とは、個人や企業が所有、または運航会社が保有してチャーター専用に運航する小型航空機のこと。利用形態には、所有して専用で使う場合(貸し出すケースもあり)と、必要な時にチャーターで利用する場合があります。大谷選手のケースは、所有ではなくチャーター利用にあたります。

利用しているのは世界的な企業のオーナー、そして各国の王族や政府関係者、著名なアーティスト、アスリートといった方々です。彼らは単なるビジネス移動だけでなく、家族旅行やプライベートな移動にも惜しみなくプライベートジェットを利用されます。

実は現在、世界には約2万機ものプライベートジェットが空を飛んでいます。その圧倒的大多数はアメリカに集中していますが、アジア圏でもその数は増え続けています。一方で、日本に登録されている機体は、2024年末時点で約84機(国土交通省調べ)と、まだまだ少数です。

◆最高の贅沢は“時間への投資”。空飛ぶオーダーメイド

羽田空港での駐機の様子(提供写真、以下同)

日本航空や全日空などのエアラインとの決定的な違い……それは、すべてがお客さま次第というところです。渡航先、離発着する空港、出発時刻、機内食、そして乗務員まで。つまり完全なる「空飛ぶオーダーメイド」なのです。

このうちVVIPの方々にとっての一番のメリットは「時間の自由度」です。エアラインの国際線の定期便では通常は出発の2時間前には空港に到着し、保安検査や搭乗手続きに時間を費やすことになります。乗り換えがあれば、その都度待ち時間が発生します。しかしプライベートジェットをご利用になる場合は、そんな「待ち時間」を完全にカットできます。

というのは定期便の利用者の皆さまが混雑したターミナルで長蛇の列に並ぶ間、VVIPの皆さまは全く別のルートをたどるからです。

じつは多くの主要空港には、プライベートジェット専用のターミナル(FBO:Fixed Base Operator)が設けられています。ご利用になる方々は専用のゲートを通り、自家用車や送迎車でFBOのラウンジに直接乗り付けます。

また欧米などでは車が機体から数メートル離れた場所に停車し、そのまま機内に乗り込んでいただくことも珍しくありません。

つまりプライベートジェットの場合は自宅や会社、または滞在しているホテルなどと飛行機が、まさに「ドア to ドア」なのです。

自家用車で機体のすぐ隣まで

ちなみに「保安検査」も金属探知機や手荷物検査の長い列に並ぶことはありません。搭乗手続きや出国・入国審査は、専用ラウンジや機体のすぐそば、または機内で、FBOの担当者によってパーソナルに行われます。プライバシーが完全に守られ、セキュリティチェックも数分で完了します。

出発時刻は「ご要望通り」です。航空会社を利用する際のようにスケジュールに縛られることはありません。

さらにその出発時間を自分の都合で変更させることも可能。例えば現地の商談が長引いた場合、「出発を3時間遅らせてほしい」というご要望も珍しいことではありません。乗務員はVVIPの方々のビジネスと生活のリズムに合わせて動くのが基本です。この柔軟なスケジュールこそが、お客さまの「時間の自由度」を可能にしているのです。

どれほどの資産をお持ちのVVIPであっても、1日の長さは誰もが同じ24時間。

だからこそ、その限られた時間を“お金で守れる”なら、それは決して高い買い物ではありません。

プライベートジェットを利用される方々の思考の根底には、“時間こそ最大の贅沢”という価値観があるのです。

◆誰にも邪魔されない、完全なプライベート空間

プライベートジェットは、エアラインの巡航高度(通常の高度)よりも高い高度を飛行するため、フライトタイムも短縮されます。

さらに機内は、エアラインよりも低い高度に相当する気圧に調整されており、体にかかる負担がぐっと減ります。

そのため、お客さまは到着した瞬間から元気にお仕事などのご予定に臨むことができるのです。まさに、“移動時間さえも味方につける贅沢”といえます。

そして何よりも、エアラインでは決して味わえない、プライベートジェットならではの満足があります。それは心からリラックスできる“完全なプライバシー”の確保です。

機内は完全にプライベートな空間。ご家族や信頼できるスタッフ以外、誰とも顔を合わせる必要がありません。企業のトップのかたなら、重要な話し合いを空の上で静かに進められますし、有名な方なら、誰の目も気にせず、ゆっくりと移動できます。

またプライベートジェットをチャーターではなく所有する場合、オーナーが自由に内装をデザインできる点も魅力。

同じ機種であっても、その内装はひとつとして同じものはありません。座席数、レイアウト、革や木材の色や素材、カーペット、そしてシャワーブースの有無まで、全てがオーナーさまのこだわりを反映したオーダーメイド……「世界にたった一つの空間」なのです。

私も初めての飛行機に乗務するときは「どんな内装なのかしら」と毎回ワクワクします。

◆プライベートジェット機の大きさは?どこまで飛べる?

ボンバルディア社の最新機種 グローバル 7500

さて次にお伝えするのはプライベートジェットの「機材」について。まずサイズですが、これは自動車のように様々です。私が乗務する飛行機は主に「大型機」と呼ばれる機体です。

・小型機:4〜6人乗り(国内移動向け)

・中型機:8〜12人乗り(アジア圏まで可能)

・大型機:14〜19人乗り(欧米まで直行可能)

ガルフストリーム社のガルフストリームG650ER

大型機の機材はガルフストリーム社のガルフストリームG650ERやボンバルディア社のグローバル7500が多く、途中で給油のために着陸することなく太平洋をノンストップで横断できます。

今回は「プライベートジェットとはどういうものか」を中心にお伝えしました。一般的には未知のプライベートジェットの世界を今後もお伝えしていきます。お楽しみに。

<文/山崎充子>

【山崎充子】

グレッセンス株式会社代表取締役/国際Omotenashist®協会代表。現役フリーランス・プライベートジェットCAとして、世界のVVIPに「選ばれ続けるおもてなしの心」を提供。所作・マインド・言葉・香りを統合した「全方位品格美人(TM)」を提唱し、研修・講演を行う。著書に『プライベートジェットCAの品格と教養の纏い方~心を磨くおもてなしLesson』。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員