JAXAが「H3」ロケット7号機の打ち上げ延期を発表 新型宇宙ステーション補給機「HTV-X」を搭載

JAXA=宇宙航空研究開発機構は2025年10月19日、新型宇宙ステーション補給機1号機「HTV-X1」を搭載する「H3」ロケット7号機の打ち上げを延期すると発表しました。

H3ロケット7号機は日本時間2025年10月21日10時58分頃に打ち上げられる予定で準備が進められていましたが、種子島宇宙センターの打ち上げ当日の天候悪化が予想されることから延期されました。

JAXAによると、少なくとも10月23日までは天候回復が見込めないため、新たな打ち上げ予定日については見通しが得られ次第発表するということです。なお、H3ロケット7号機の打ち上げ予備期間は2025年10月22日~2025年11月30日が確保されています。

HTV-X1について

【▲ 新型宇宙ステーション補給機1号機「HTV-X1」(Credit: 三菱電機)】

HTV-Xは2020年まで運用されていた宇宙ステーション補給機「HTV(こうのとり)」の後継機として開発された無人補給機で、主にISSへの物資輸送を行います。

打ち上げ時の質量は約16トン。貨物の搭載能力はHTVが質量4トン・容積49立方mだったのに対し、HTV-Xでは質量5.82トン・容積78立方mと1.5倍ほどに向上しています。

ISSへの物資補給ミッションにおける係留期間は最長6か月間ですが、HTV-XはISS離脱後も最長1.5年間にわたって単体で飛行が可能。物資補給を終えた後は、技術実証や実験に対応する軌道上実証プラットフォームとしてのミッションを行えるように設計されています(※)。

※…打ち上げ時の質量やミッション期間は標準的な仕様で、実際には各号機ごとに異なります。初飛行となるHTV-X1では曝露カーゴをフル活用しないため、質量が1.5トン軽くなっています。

【▲ H3ロケットのワイドフェアリングに収容される新型宇宙ステーション補給機1号機「HTV-X1」(Credit: JAXA)】

【▲ ISSのロボットアームで把持される新型宇宙ステーション補給機「HTV-X」のCGイメージ(Credit: JAXA)】

H3ロケット7号機で打ち上げられるHTV-X1では、与圧カーゴに窒素・酸素・水の補給タンク、宇宙食や生鮮食品、消耗品、各種実験機器などを搭載。また船外の曝露カーゴには、ISSの「きぼう」日本実験棟の船外で運用される中型曝露実験アダプタ「i-SEEP」をはじめ、超小型衛星放出システム「H-SSOD」、衛星レーザー測距(SLR)用小型リフレクター「Mt. FUJI」、展開型軽量平面アンテナ「DELIGHT」、次世代宇宙用太陽電池「SDX」を搭載しています。

曝露カーゴに搭載されているi-SEEP以外のペイロードは、ISS離脱後の技術実証ミッションで使用されます。H-SSODは日本大学の超小型衛星「てんこう2」を搭載しており、ISSよりも高い高度約500kmの軌道で放出予定。Mt. FUJIは地上から照射したレーザーが反射して地上に戻るまでの時間から距離を測定することに加えて、JAXAによれば世界初の取り組みとして、レーザー測距から推定された機体姿勢の変化を実際のデータと比較・検証する実験が行われます。

DELIGHTとSDXは軌道上で展開される軽量パネルに搭載されていて、地上からの電波受信や太陽電池出力の計測などが行われます。2つの装置を搭載したパネルそのものも重要で、宇宙太陽光発電システムのような大型宇宙構造物の構築技術などを軌道上で実証するために、展開中の挙動や展開後の構造特性の計測が行われます。

【▲ 超小型衛星を放出する新型宇宙ステーション補給機「HTV-X」のCGイメージ(Credit: JAXA)】

H3ロケット7号機で高度約200km×300kmの楕円軌道に投入されたHTV-X1は、高度約400kmまで上昇して打ち上げ数日後にISSとランデブーを行い、現在ISSで長期滞在を行っているJAXAの油井亀美也宇宙飛行士が操作するロボットアームでキャッチされます。HTV-X1のISS係留期間は最大6か月間、ISS離脱後の技術実証ミッション期間は約3か月間の予定です。

H3ロケット7号機について

【▲ H3ロケット「H3-22W」形態のCGイメージ(カットモデル)(Credit: JAXA)】

今回がH3ロケット6回目の打ち上げとなる7号機は、「H3-24W」形態の初飛行となります。

H3-24WはH3ロケットで最も打ち上げ能力が大きい形態で、1段目エンジン「LE-9」が2基、固体燃料ロケットブースター「SRB-3」が4基、ワイドフェアリングが用いられます。

なお、H3ロケットは2023年3月の試験機1号機から2025年2月に打ち上げられた5号機までは、すべて「H3-22S」(1段目エンジン「LE-9」が2基、固体燃料ロケットブースター「SRB-3」が2基、ショートフェアリング)が使用されてきました。また、6号機ではSRB-3を1つも用いずにLE-9を3機搭載する「H3-30S(30形態)」が初めて飛行します。

【▲ H3ロケット「H3-24W」形態の説明図(Credit: JAXA)】

さらに、7号機では今後の打ち上げに向けて、自律飛行安全システムの機能の実証が行われます。

自律飛行安全システムはロケットの機体や飛行経路に異常が生じた時、自律的にエンジンの停止や機体の破壊を行うことで飛行を中断させるためのシステムです。ただし、今回の飛行では実証としてデータの取得のみを実施するため、一部の結線を行わずに搭載されています。

現在のH3ロケットでは飛行を中断するためのコマンドを地上から送信しなければならないため、地上局の可視範囲内に収まるように飛行経路を蛇行させるなどの制約があります。

一方、自律飛行安全システムが搭載されれば地上局の可視範囲外でも飛行中断措置が可能になるため、ロケットの能力を最大限引き出す飛行経路の設定が可能になります。静止衛星を静止トランスファー軌道(GTO)に投入する場合は200kg、HTV-Xを打ち上げる場合は1.5トンの能力向上が見込めるということです。

また、7号機の2段目機体には、NASA=アメリカ航空宇宙局の通信衛星「TDRS(Tracking and Data Relay Satellite)」を経由してデータを取得するための送信機とアンテナが搭載されます。

JAXAが今後予定している火星衛星探査計画「MMX(Martian Moons eXploration)」といった月・惑星探査ミッションの打ち上げでは、地上局がないエリアを飛行することが多くなります。地上局の可視範囲に縛られない飛行経路を設定するべく、JAXAはNASAのTDRSによるデータ中継サービスの利用を計画しており、今回の打ち上げではTDRS経由でデータを取得する実証を行うということです。

文・編集/sorae編集部

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参考文献・出典

・JAXA - H3ロケット7号機による新型宇宙ステーション補給機1号機(HTV-X1)の 打上げ延期