【コラム】「ポケモンZA」のバトルに問題が多いのは「秘伝のタレを継ぎ足してしまう」ところにあるのではないか
これまでの「ポケットモンスター」シリーズは、これまで昔ながらのターン制コマンド選択式バトルを採用してきた。しかし、『Pokémon LEGENDS Z-A』(以下「ポケモンZA」)ではリアルタイムバトルになり、プレイヤーキャラクターを動かす要素も追加され、アクションRPG寄りになっているのだ。
変化自体は歓迎したいものの、このバトルはどうしても大味な印象がつきまとううえ、さまざまな問題を抱えているのである。
リアルタイムバトルなのに序盤はコマンドを連打するだけ。中盤から終盤に差し掛かるころ、急に難しく感じるケースが出てくる。そして、過去作では活躍できていたポケモンの価値が目減りすることも起きているのだ。
要はバトルシステムをリアルタイムにしたことで破綻が起きているわけだが、この原因はなにか? と考えてみると、それは「秘伝のタレを継ぎ足してしまう」ところにあるのではないか 。
リアルタイムになり、少しアクション要素が追加されたバトル
「ポケモンZA」のバトルシステムについて改めて説明しよう。前述のように本作はリアルタイムバトルなので、何もしなくとも相手は攻撃してくる。素早く攻撃するのも重要なわけだ。
ポケモンに命令する形式は変わらず、4つの技(コマンド)を選択して攻撃を行う。コマンドを選ぶと、ポケモンが技に対応した位置に移動し、攻撃を行う。
それぞれの技にはクールタイムがあり、強い技ばかり連発できるわけではない。また、技によって攻撃範囲が変化するため、当てやすい・当てにくいといった変化も生じる。
ポケモンらしいタイプ相性やそれに伴う弱点・耐性は健在だ。さらに野生のポケモンと戦う際には、プレイヤーが攻撃を受けてやられる要素もある。
要は、過去のポケモンのバトルシステムをベースに、リアルタイムにした形式といえる。アクションRPGといっても間違いではないのだが、かつての「ファイナルファンタジー」シリーズが採用していた(具体的には『ファイナルファンタジー4』からはじまり『ファイナルファンタジー13』あたりまで採用されていた)アクティブタイムバトルに近い。
序盤は単調で、回避要素が噛み合っていない
最序盤は技の選択肢が少ないので、雑なコマンド連打になるのは仕方がない。これはコマンド選択式バトルを採用したRPG全般の問題といえる。
しかし、「ポケモンZA」はしばらくゲームが進んだとしてもあまり戦略を考える必要がない。というのも、このゲームは弱点を突くことばかりが重要で、技を回避させる手段にも乏しいからである。
たしかに、うまくポケモンを交換することで相手の技を避けられるし、「まもる」という技などで攻撃を無効にできる。だが、そのあとはほぼダメージを受ける。結局のところ殴り合いになりやすく、とりあえず効果的な技を連打しているのが安牌といえる。
もちろん相手の弱点を突くことができればより有利に進む。タイプ相性がわかっていればその技を撃つだけで、わからなければ適当に撃ってそれを確認するほかないのである。
ゲーム中盤以降は「暴走メガシンカポケモン」が登場する。これは野生のポケモンがメガシンカ(バトル中のみ特殊な姿に変身)するもので、プレイヤーにも攻撃を仕掛けてくるうえにかなり体力が多い。
こちらも手持ちポケモンをメガシンカさせて弱点を突かないとあまりダメージを与えられない。メガシンカなしでもクリア可能だが、かなりの長期戦になってしまう。タイプ相性をきちんと覚えていないと(あるいはコマンドを見てきちんと確認しないと)急に難しくなったように感じられるだろう。
しかも、前述のように暴走メガシンカポケモンはプレイヤーを狙ってくる。プレイヤーが野生ポケモンの攻撃を避ける要素は、前作『Pokémon LEGENDS アルセウス』から登場したものでそれを引き継いでいるのだろう。

前作では、オヤブンなるポケモンの攻撃を回避してシズメダマを当てるシーンがあった。これにコマンド選択式バトルを混ぜた結果、妙なものに仕上がっている。『Pokémon LEGENDS アルセウス』(2022)
前作はポケモンの捕獲が主眼に据えられていたので、それに抵抗する野生ポケモンという構造になっていた。しかし「ポケモンZA」はバトルがメインになっているため、この回避する行動は必要か疑わしい。
そもそもアクションゲームにおいては、操作キャラクターが攻撃をする側、かつ敵の攻撃を受ける側を兼ねるのが一般的だ。一方で「ポケモンZA」はそれが分離しており、「ポケモンに指示を出すゲーム」と「敵の攻撃を避けるゲーム」という違うふたつのゲームを同時にプレイしているかのようになる。
暴走メガシンカポケモンの攻撃内容はわかりやすいうえに、一緒に戦うNPCが回避のコツなどを教えてくれる。しかし前述のふたつの要素がうまく混ざっておらず、急にアクション要素が出てきたように見えてしまう(ゆえに難しく感じられる)のも否定できない。
かといって対人戦のためのバトルシステムでもない
ポケモンといえば対人戦が重要だ。今回はリアルタイムバトルを前提としたオンライン対戦が用意されており、こちらもリニューアルされている。
筆者は「ポケモンZA」のランクバトルをAランク(最高位)まで到達した程度ではあるが、本作の対人戦はやや大味に感じられた。
対人戦では4人のプレイヤーが互いに攻撃しあい、相手を倒すとポイントを獲得でき、そのポイントが最も多いプレイヤーの勝利となる。つまり、アタッカー以外はあまりおいしくないのだ。従来の搦め手はかなり使いづらい。
かつ4人で対戦するうえにそれぞれが動き回るので、当てやすい範囲攻撃や突進攻撃が優秀。相手の攻撃を回避する手段もあるにはあるのだが、やはり睨み合ったあとなんとなく殴り合いが始まり、漁夫の利を得たプレイヤーが有利になるといった構造だ。
また、従来のポケモンは「6匹のポケモンを見せあい、その後に3匹を選んで戦う」形式だった。これにより相手がどのポケモンを出してくるか読み合いが発生するのだが、「ポケモンZA」では手持ちの3匹をとりあえず出すだけなので読みも何もない。エアームドのような強いポケモンを出せばよい。
そして、バトルの仕様が大幅に変更された結果として、これまで活躍できていたポケモンの価値が目減りする事態になっている。
変化技(補助技)をメインに使うポケモンはポイント稼ぎにおいてあまり意味がないし、特性がなくなったのでそれによって活躍していたポケモンは立場がなくなりつつある。仕様変更によってはがね・ひこうタイプは有利になり、一方ででんきタイプのポケモンはかなり不遇になったと感じる。
ギルガルドのような、ターン制コマンド選択式バトルにおいて優遇されていたポケモンもひどく扱いにくいと評判のようだ。
とはいえ、従来のものを変えた結果として新しいバトルがおもしろくなればよい。実際、「ポケモンZA」のバトルはカジュアルなパーティーゲームに寄せているだろう。
ただ、面倒な育成要素はまだまだ残っているし、一発逆転の要素もなく、カジュアルに振り切れていない。「対人戦のために調整しているからシングルプレイがいまいち」とも言い難く、その逆も言えない。
ポケモンには継ぎ足さねばならないものが多すぎる
なぜここまでバトルの問題が山積しているのか? それは記事タイトルにもあるように「秘伝のタレを継ぎ足してしまう問題」が原因と考えられる。
ポケモンは過去からの積み重ねを重視しており、それは古い作品のポケモンを最新作に連れてこられることからもわかる。そして、「ポケモンZA」は過去作で登場したミアレシティが舞台なので、以前にこの地で登場したポケモン、あるいは人間キャラクターも出てきて当たり前である。
また、「Pokémon LEGENDS」シリーズがいくら挑戦的なタイトルであろうとも、ポケモンファンは世界中にいて老若男女が楽しんでいる。あえて単調にして少しでもわかりやすくしなければならない。
さらに、(きれいごとだが)すべてのポケモンにそれぞれファンがいる。各ポケモンのモデルやモーションに手を抜くわけにはいかない。個体ごとの能力差、技の種類など、受け継がねばならないものは多い。そう、秘伝のタレを継ぎ足して作らねばならない制約があるのだ。

ポケモンとの共生もテーマのひとつのはずなのだが、このあたりもきちんと語られることはない。テキストで軽く触れる程度である。
なんならストーリーにおいても同様の問題があるのだが、それはさておき。「ポケモンZA」は過去のしがらみを捨てられず、しかしながらゲームシステムの進化を目指さねばならず、結果としてかなり歪なバトルシステムになったと考えられる。これを成功させるのは容易ではなかっただろう。
もっといえば、ポケモンのゲームは定期的に新作を出す必要がある。新しいポケモンを出すことによってグッズ展開はもちろん、ポケモンカードゲームや『Pokémon GO』などのスピンオフでも盛り上がりを作れるし、常に新作が出ていないと低年齢層の関心はすぐほかに移る。逆に、新作がストップすると全体の展開に支障が出てくるだろう。
人気タイトルであるがゆえに任天堂のハード販売戦略にも絡んでくると思われるわけで、十二分に作り込むこと自体が容易ではないのだろう。
結局のところ、もっとしがらみを捨てなければポケモンのバトルシステムはきちんと進化できないのではないか。「ポケモンZA」はその難題を可視化したような作品であり、おもしろい・おもしろくない以前に、それを実現することの難しさ、一言でいえば“板挟みのつらさ”を感じるゲームであった。
ともあれ、「ポケモンZA」でバトルシステムを変えようとした今回の挑戦には拍手を贈りたい。同時に、過去のしがらみを捨てきれない姿勢には、肩をすくめてため息をつくほかない。