インバウンド客の歓声と地元民の悲鳴――“日本人がいない日本のフェス”『Snow Machine』

『Snow Machine』の一コマ
日本にいながら海外フェスを体感できると話題の音楽イベント『Snow Machine(スノーマシーン)』。「スノースポーツ」と「ミュージック」の融合に沸くイベントに隠された光と影とは? 実際のイベントの様子とともにレポートする。
“日本人がいない日本のフェス”
ニュージーランドのクィーンズタウンでアルパイン・ミュージック&スキーフェスティバルとして始まった『Snow Machine』。日本では’20年3月に長野県白馬村で初めて開催され、当時Twitter(現『X』)では“日本人がいない日本のフェス”というフレーズがバズり、注目を集めた。白馬村では昨年に続き、今年3月にも開催され、さらに同月、日本を代表するスノーリゾート“ニセコ”(北海道)にも初上陸を果たした。
「白馬では5000人、ニセコは初年度ながら3000人を超える集客があり、大盛況でした。イベントに参加した約80%の人が海外からこのイベントに訪れるために来日しているというデータもあります。来場者は本場のニュージーランドやオーストラリアをはじめ、約30ヵ国以上から参加しており、『音楽と世界最高の雪、さらに日本の食文化を楽しめた』と反響もよかった」
そう語るのは、オーストラリアに本拠地を置く本イベントの関係者だ。
主催者によると、白馬では約15億円、ニセコでは約9億円の経済効果があったという。『Snow Machine』がもたらすインバウンド特需は非常に大きい。
主催者側と地元民の食い違う見解
もちろん、問題点もある。2年連続で白馬村の『Snow Machine』に参加した白馬村在住の日本人スノーボーダーはこう嘆く。
「日中の早い時間に行ったので夜はわかりませんが、日本人より外国人のスキーヤーが圧倒的に多かった。昼も夜も楽しめるイベントですが、正直、地元住民にはあまり評判が良くありません。酔っぱらったお客さんとのトラブル回避のため、飲食店は通常より早く閉めるし、24時間営業のコンビニですらフェス開催期間中は深夜営業をしていませんでした」
過去のSNSやブログを遡ると、’20年に白馬村で初開催された際には「ガラスが割られた」「道祖神が破壊された」「カラーコーンを被って持っていかれてしまった」といった被害が頻発。地元民から苦情が殺到したそうだ。白馬在住の外国人たちも表情を曇らせた。
「何千人もの酔っ払い、大量の空き缶のポイ捨て、軽犯罪……。フェス開催によって、村民や役場が得られる経済的効果よりもマイナス面のほうが多いように思う。主催者や外国人向け宿泊施設のオーナーが収益を上げるだけ。地元の飲食店や企業が営業を縮小している現状を見ると、ネガティブな印象を持つ人が多いんじゃないかな。
休暇で白馬村に滞在していた裕福なタイ人のビジネスマンと話をしたけれど、彼も彼の家族も『イベント期間中の白馬村は楽しめなかった。友人には白馬村のイベントは勧めない』と言っていたよ。これがここに住む日本人や外国人が望んでいるブランドイメージなのか、疑問に感じるよ」(白馬村在住・オーストラリア人)
ニセコ・倶知安観光協会の関係者も改善を望んでいる。
「地域住民の方々から騒音の苦情などが所轄警察署に入ったことは把握しています。また、イベント開催前に準備の経過の共有がなかったこと、開催に必要な手続きが期日ギリギリになったことについて主催者側に改善を申し入れました。今後、フェスを実施するのであれば適切な運営管理を希望します」
イベントは大盛況で経済効果も絶大とする主催者側と、“騒音トラブル”や運営の不手際を問題視する地元住民。主催者側に地元住民の声を届けたところ、次のような回答が得られた。
「白馬村・ニセコともに騒音苦情があったと認識していますが、音楽の低音レベルを調整することで対応しました。屋外で5000人以上を収容するイベントでの“音漏れ”を防ぐことは、非常にチャレンジングではありますが、コミュニティと密に協力し、引き続き改善に取り組んでいきたいと考えています。
今年は地元および国際的なセキュリティガードを配置し、イベント会場内だけでなく、村全体で清掃チームも運営しました。私たちが白馬村とニセコを選んだのは、より多くの海外の人に日本の魅力を知ってもらい、音楽を通じて日本の素晴らしい文化、食べ物、雪、山、自然環境を紹介したいと考えたからです。『Snow Machine』の成功を通じて、より多くの外国人観光客が日本のスキーリゾートを知ることができ、それにより今後何年も村や国を休暇で訪れることになると信じています」
来年も更に規模を拡大して上陸を予定している『Snow Machine』。地元住民と海外イベンターによる対話と相互協力が、雪解けのキモとなりそうだ。

昨年開催された“ビキニ滑走”。今年は開催されなかったが、コスプレーヤーの姿が散見された

熱狂するフェスの客たち