京王7000系「中身は21世紀仕様」いぶし銀の最古参

京王電鉄の7000系。京王線初のステンレス車両として登場した(記者撮影)
新宿を起点に、八王子や多摩ニュータウン方面、そして高尾山へと路線網を伸ばす京王線。走る電車は、座席指定の「京王ライナー」に使われる流線形の「5000系」や、都営地下鉄新宿線にも乗り入れる主力車両の「9000系」など、やや丸みのあるつるりとしたデザインが目立つ。
【写真はこちらから】▶京王線ユーザーでも意外に知らない?▶京王線初のステンレス製車両7000系▶ちょっとゴツゴツしたデザインの「往年のステンレス車」らしい外観や、リニューアルで新型並みに生まれ変わった車内を車両基地で独占取材▶貴重な登場時の「トレーラーでの搬入風景」も
そんな中でちょっと雰囲気が違うのが、現役最古参の「7000系」だ。車体に波状の「コルゲート」がぎらりと輝く、ちょっとゴツゴツした感じの車両といえば、京王線利用者なら鉄道ファンでなくても思い当たるかもしれない。
デビューは1984年。リニューアル工事によって車内や機器類は21世紀の新車と大差なく、今も特急から各駅停車まで主力の一角として活躍する。
「京王線初」のステンレス製車両
京王電鉄は、全国でもいち早くステンレス製車両を採用した鉄道の1つだ。1962年、渋谷と吉祥寺を結ぶ井の頭線に初めて導入。同線は1984年に全車両がステンレス製に統一された。当時は全国の鉄道にステンレス製車両が広がりはじめたばかりだった。
一方、井の頭線とは線路の幅など規格が異なる京王線系統は、しばらくステンレス製車両は導入されず、鉄道ファンに今も「名車」と呼ばれる5000系(1963年登場)や、長年の主力だった6000系(1972年登場)は鋼鉄製の車体だった。井の頭線が全車ステンレス製に統一された年、京王線で初のステンレス製車両としてデビューしたのが7000系だ。
車体のデザインはシンプル。1両の長さは20m、側面4カ所に両開きの扉を備えた通勤電車のスタンダードなスタイルで、当時の主力だった6000系に準じている。初期のステンレス製車両では標準的だった、波状の「コルゲート」が側面の窓の上下にあるのが目立つ。
正面は、中央に貫通扉がある左右対称のデザイン。前照灯と尾灯を縦に並べた四角いライトが特徴だ。似たタイプのライトはほぼ同じ時期に造られた東武鉄道の9000系(1981年登場)や10000系(1983年登場)にも見られ、そのころのトレンドといえる。

左右対称ですっきりした前面デザインの7000系(記者撮影)

前照灯と尾灯を縦に並べた角型のライトが特徴の7000系(記者撮影)
登場時のカラーリングは、現在の「京王レッド」と「京王ブルー」の2色のラインではなくえんじ色の帯1本で、正面も白ではなく銀色だった。
「ソフト感」や「明るさ」意識
最近の車両と比べるとややゴツゴツした印象のある7000系。だが、初期のステンレス製車両に付きものだった、金属的な冷たい感じや角ばった印象をやわらげるための工夫も各所に見られる。
登場時のパンフレットによると、冷たさを和らげるため「正面や窓の周囲に、極力梨地仕上げの白色味のあるステンレス鋼板を用いています」。実際に、窓の周りはちょっと艶消し風の仕上げだ。前面のコーナー部分もFRP(繊維強化プラスチック)製のカバーで覆い「ソフトな感じ」を出したという。

窓の上と下に波状の「コルゲート」がある側面。窓の周囲は冷たさを和らげる「白色味のあるステンレス鋼板」を用いたという(記者撮影)
意外なところでは「戸袋窓」の存在も特徴だ。京王線ではほかの車種にもあるため珍しくないが、実は全国的に見るとステンレス製車両で戸袋に窓がある車両は多くない。
当時の業界誌には「オールステンレスの20m車としては初めて戸袋窓を設け、極力外光を取入れられるよう心掛けている」(『電気鉄道』第38巻第10号、社団法人鉄道電化協会)とあり、内外装ともに「ソフト感」や「明るさ」を重視したことがうかがえる。

戸袋窓のある側面(記者撮影)
現在は2両編成・4両編成・6両編成・10両編成が存在する7000系。1984年、最初に造られたのは5両編成だった。今では特急から各駅停車まで何でもこなす7000系だが、登場時のパンフレットによると新造の狙いは「京王線の各停使用車両(通称グリーン車)に代る大型車」。長らくの間、活躍の場は各駅停車が中心だった。
その後増備が進むと、1987年デビューの車両からは側面のコルゲートをなくしたすっきりした外観にマイナーチェンジ。正面窓上の部分も少しデザインを変え、より洗練された印象になった。
機器も車内も大幅リニューアル
1983年に京王に入社した若葉台検車区指導技術掛の松浦浩一さんは、このマイナーチェンジ車の第1陣、7721編成・7722編成が入線したのと同じ1987年に、井の頭線から京王線に異動したという。「7721と22は本当に、一緒に京王線に来たという感じで思い出がありますね」と語る。

高幡不動検車区に停車中の7000系7721編成。コルゲートがなく、前面窓上も黒い部分が広がりよりすっきりした外観になった=1987年(写真:京王電鉄)
7000系は1996年までに計190両が造られ、最初期の車両は40年選手だ。だが、「制御機器などは9000系に近い感じですね」と松浦さんはいう。9000系は2001年以降に導入された現在の主力車両だ。
最古参にもかかわらず7000系が21世紀の車両である9000系に近いのは、大規模なリニューアル工事で、制御機器をそれまでの「界磁チョッパ制御」から省エネルギーの「VVVFインバーター制御」に取り換えたためだ。工事は2003年にスタートし、2012年までに完了した。

7000系はリニューアル工事でVVVFインバーター制御に改造された(記者撮影)
生まれ変わった7000系
7000系のリニューアルと新車の導入により、京王は2012年に全国の大手私鉄で初めて全車両のVVVFインバーター制御化を達成。省エネ化で大きくリードした。
内装も一新し、バリアフリー対応のほかシートや床、壁も登場時とは大幅に異なる現代の仕様に。車体のカラーリングも登場時のえんじ色の帯から京王レッド・京王ブルーの2色の帯に変わった。リニューアルにより、性能も内装も新たな車両に生まれ変わったといえる。

リニューアルされた7000系の車内(記者撮影)
車両の編成もたびたび変わっている。1984年の登場時に5両編成だった車両はその後すべて1両増結して6両編成となり、その後8両編成、10両編成が造られたほか、短い4両編成、2両編成も登場した。
長い歴史の間には編成の組み替えも行われ、登場時とは番号が変わった車両も少なくない。「ちょうどリニューアル工事が進んでいるころに入社した」という若葉台工場研修担当の蓑祐史さんは、「当時は7000系でも従来の制御方式の車両とVVVFインバーターの車両があり、保守業務では覚えることが多かった。車号も覚えるのは複雑でしたね」と語る。

7000系の7726号。10両編成化の際にこの番号に変わった(記者撮影)
2010~2012年にも、それまで8両編成だった車両などを10両編成に組み替える工事が行われた。この際に登場したのが「7777」号車。ラッキー7が4つ並ぶ車両とあって、鉄道ファンには注目の的だ。2025年10月末からは、かつてのえんじ色の帯を再現した復刻塗装の車両も走っている。
「いぶし銀」のステンレス車
21世紀生まれの9000系と近い性能に生まれ変わり、活躍を続ける7000系。だが、完全に近年の新型同様かといえば、やはり「ベテラン車両らしさ」はあるようだ。

京王電鉄車両電気部若葉台検車区指導技術掛の松浦浩一さん(左)と若葉台工場研修担当の蓑祐史さん(記者撮影)
蓑さんは、「検査の際、9000系や最新鋭の5000系はほとんどデジタル化されているので少人数でできるが、7000系は1人1両ずつ、床下で弁類を圧力調整しながらやっていく」という。「手間はかかるけど、なんだか愛おしいですね」と松浦さんは語る。
近年は引退が進み、2025年12月時点では2両編成5本、4両編成4本、6両編成2本、10両編成8本の計118両が活躍する。2026年には新型の「2000系」も登場するが、京王電鉄広報部によると「直近で7000系を廃車する計画は未定」という。
主に各駅停車用として使われた時代が長く、京王線の中ではやや地味な存在として走り続けてきた7000系。だが、京王線初のステンレス車両として登場し、今も新型に伍して主力の一角を担う姿は、まさに「いぶし銀」の実力派といえそうだ。