夜中の家事を妻に止められた53歳パパの盲点

アラフィフでパパになった幡生祐介さん。長男誕生直後、妻から思いもよらない言葉を告げられたという(写真:幡生さん提供)
幡生祐介(はたぶ・ゆうすけ)さんは札幌生まれ、札幌育ちの53歳。親の転勤により一度愛知県へ転校したが、その後再び札幌に戻り、大学は小樽、就職先は全国転勤の会社を選んだが初任地は帯広だった。
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今から10年前、仕事を通じて知り合った11歳年下の妻と結婚し、7年前に長男、3年前には長女が生まれた。幡生さんは現在、在宅でフルリモート勤務をしている。一方、妻は市内に通勤するフルタイム正社員。お互い日々協力し合い、育児と家事を分担している。

(写真:幡生さん提供)
長男の誕生直後に「産後クライシス」の危機
「でも実は、長男が生まれた直後は妻と意見がすれ違ってしまって。そういう時期が約半年間続きました」
当時、育児に全面協力するべく意気込んでいた幡生さんは、妻の夜中の授乳タイムに合わせて自分も起き、率先して洗濯物を畳んだり食器を片付けたりしていた。
しかし、妻からは、「夜中の授乳の時には静かにしていてほしい。自分が眠い時やしんどい時にこそ育児を代わってほしい。その時にあなたも眠かったらお願いできないじゃない。だから、夜中の授乳の時にはあなたにはしっかり寝ていてほしい」と言われた。
夜中の家事は、幡生さんなりに「何か自分ができることはないだろうか」と考えたうえでの行動だった。
「自分ではすごく協力しているつもりで、妻も喜んでいるだろうと思っていたんです。むしろ、妻の言葉は夫に寝てほしいという思いやりからくる言葉なんだと勘違いして、妻の言葉を聞かずに授乳中の家事を続けていました。それに、僕は『妻が頑張っている時に自分だけ寝ているのは申し訳ない』とさえ思っていた。でも実際には、それは妻が求めていることと全然違っていた」
しかし、その「ズレ」がじわじわと妻のストレスになり、ある夜に爆発してしまった。その後は根気よく対話を重ねることでズレを解消していき、スムーズに家事・育児を分担できるようになっていった。

(写真:幡生さん提供)
育児は「手伝いじゃない。あなたの仕事だ」
本来は「産後に妻が夫にやってほしいこと」を事前にリスト化できるとよいが、実際には始まってみないとわからないことも多い。先述の幡生さんの行動は妻のニーズに合わなかったが、人によっては「そうしてくれると助かる」と感じる家庭もあるだろう。
「妻も初めての出産で、お互い産後にどんな生活が待っているのか想像できなかった。さらに、産後は肉体的にも精神的にも余裕はないので『こういうことをやってほしい』と妻側から毎回言うのもしんどいですよね」
幡生さんの場合、夫婦関係が悪化する前に一歩踏み込んだコミュニケーションを取れたことで、危機を乗り越えることができた。育児はスキル云々よりも、まずは意見が異なった時に対話をしようとする姿勢がないと、そもそも成り立たないことがわかるエピソードだ。
長男が3歳になる頃、社内で育児に関するセミナーを受ける機会があった。そこで出合った「育児はヘルプじゃない、シェアだ」という言葉が心に刺さったという。妻とすれ違った経験とこの概念は、幡生さんの育児に対する方向性を決定づけることになった。
「たまに『俺、育児を手伝っています!』って言う男性もいますけど、そもそも育児は手伝うものではなく、あなたの仕事だよと思います。育児は24時間続いていくものなんだから、『育児担当は奥さん』じゃなくて、そこを夫婦でしっかりシェアするのは当たり前なんです」
それでも、幡生さんが育休を取得する際に「パパが育休を取って何するの? 一日中暇じゃない?」という言葉をかけられたこともあったという。
「北海道は全国的に見てもジェンダーギャップ指数が著しく低い地域で、まだまだそういった文化が根付いているとは言えないんですよね」と語った。
フルリモート勤務のパパと、通勤するママの1日
ちなみに幡生さんは現在フルリモートで在宅勤務、妻はリモート勤務も活用しつつ事務所へ行くことが多い。ともにマネジャー職を務めるフルタイム正社員である。普段はどのようなスケジュールで過ごしているのだろうか。
朝7時に幡生さんが起床。7時半には子どもたちと朝食を食べる。朝食作りの担当は幡生さんだ。
「上の子が離乳食の頃からなので、担当してもう5年以上になります。基本的に料理はあまり得意じゃないけど、卵を焼いて、野菜を添えて、パンを出すくらいならできるので。ここは妻がとても喜んでくれています」
長男と長女は、自宅から徒歩で約10分の距離にある同じ保育園に通っている。スケジュールにもよるが、基本的に朝は主に幡生さんが、帰りは妻が送迎する。
送迎後、帰宅してすぐに仕事を開始する。洗濯や朝の食器洗いは、お昼の休憩時間にまとめて片付けているという。
妻がお迎え時間に間に合わない場合は、17時半ごろには仕事をいったん中断し、保育園へ子どもたちを迎えに行く。夕食作りは料理の好きな妻が主に担当し、家族揃って夕食を食べ、入浴を済ませて21時には寝かしつけをする。
「好きな育児は寝かしつけ」という幡生さんだが、その理由は「はしゃいでいた子どもたちが寝入る姿がたまらなく可愛いから」。また、寝かしつけの方法もいろいろ工夫をするがうまくいくこともあればそうでない時もある。それも含めて「答えがないのが楽しい」。
子どもたちが寝た後は再び業務に戻ることも多い。「いつも寝るのはだいたい24時くらいです。忙しい時期は深夜2時すぎになることもあります」。

(写真:幡生さん提供)
フルリモートでワークライフバランスが最適化
幡生さんの職種は、NTT東日本サービスのカスタマー関連部署のマネジャー職。籍は新宿の本社にあるが、札幌からフルリモートで勤務しているという状況だ。幡生さんのチームは札幌に住む幡生さんのほか、東京で出社とリモートを使い分けて働くメンバーや、青森からフルリモートで働くメンバーなどで構成されているという。
そういった働き方は、社内において特に珍しくはないのだろうか。また、実際に働くうえで不便を感じたことはあるのだろうか。
「この働き方は社内ではごく普通です。どうしてもすぐに現地対応しなければいけない時は現地にいるメンバーにお願いすることもありますが、特に支障はないですね」と幡生さん。
「フルリモートになったことで仕事と家庭の時間の最適化が図れています。そういう環境を与えてくれる上司や会社に感謝しています」
今から20年以上前、東京の本社で働いていた頃は毎日夜中の3時ごろまで働き、タクシーで帰っていた。
「でも、もうそういう時代じゃないですよね。今は子どもたちが可愛くて、仕事が終わったら一刻も早く家族と過ごしたい。常にタイムパフォーマンスを上げることを強く意識するようになりました。むしろ、昔のほうが『あとは残業の時間を使って仕上げればいいや』と甘く考えていたかも」

(写真:幡生さん提供)

(写真:幡生さん提供)
子どもの病欠時の対応はどうした?
しかしフルリモート勤務の場合、親を悩ませるのが子どもの病欠時の対応だ。風邪などで病欠した場合でも、一日中家で大人しく寝ている子どもはおそらく少ないのではないだろうか。
「実母は高齢で日常的なサポートはお願いできない状況なのですが、義母がかなりサポートしてくれるので本当に助かっています。義母がいなかったらうちの育児は成り立たないというくらい。これにはフルリモートの制度を活用しながら、地元で子育てできる環境があるからだと思います」

(写真:幡生さん提供)
自分の持つ資源や環境を最大限に「家族との時間」を取るために整えている幡生さんだが、なぜそこまで育児にコミットしたいと思うのだろう。
後編ではその理由や、価値観・経済面での変化、そして「育休は長ければよいという世間の風潮」に一石を投じる持論について、詳しく聞く。