「忘年会参加したくない」50代が多い切実なワケ

忘年会への参加意欲が最も低いのが「50代」という、驚きの結果になった(写真:Fast&Slow/PIXTA)
「まさか、若者のほうが忘年会に行きたがっているなんて……」
【データを見る】「忘年会の参加意欲」高い世代、低い世代の”意外な結果”
こう驚くマネジャーは多いだろう。昨今、忘年会に参加したくないのは若者ではない。ベテラン世代のほうが消極的なのだ。Job総研が実施した「2025年 忘年会意識調査」によると、参加意欲が最も低いのが「50代」という、驚きの結果になった。この逆転現象の背景には何があるのか?
そこで今回は、40代や50代が忘年会を敬遠する理由と、会社が取るべき対策について解説する。忘年会の企画に悩んでいる人事担当者や管理職は、ぜひ最後まで読んでもらいたい。
若者のほうが忘年会に前向きという衝撃
「最近の若い子は飲み会に来ない」
「Z世代はプライベートを優先する」
このように嘆く上司は多い。しかし、実態はどうだろう? Job総研の調査では、会社の忘年会への参加意欲について年代別に興味深い結果が出た。
「とても参加したい」「参加したい」「どちらかといえば参加したい」と回答したのは、
・20代:71.0%
・30代:57.8%
・40代:55.1%
・50代:48.3%

(出所:Job総研『2025年 忘年会意識調査』)
なんと、20代が7割と最も多かった。しかも、3年連続で20代の参加意欲がトップだという。「タイパ重視」「プライベート優先」と言われる若者のほうが、職場の忘年会に積極的だ。
「この調査だけでは?」と思った読者もいるのではないだろうか。同調査だけでなく『ホットペッパーグルメ外食総研』が実施した「トレンド座談会」でも、同様の傾向がみられた。「会社・仕事関係の忘年会」について、「参加したい」と「どちらかというと参加したい」を合わせた「参加したい・計」は30代(43.0%)が最も高く、20代(41.8%)が続いた。最も低いのは50代(31.8%)で、60代は(32.0%)だった。
実際に私の息子(大学4年生)は、来春入社予定のテック企業から忘年会のお誘いがあると、
「行きます」
と二つ返事で答えたという。
「どんな服装で行けばいいのか」
「先輩にどんな質問をしたらいいか」
などと私に質問してくる。とりわけ息子の意識が高いわけでもないだろう。同期の内定者は、ほぼ全員参加するという。任意の参加だというのに、である。
一方、40代50代の参加意欲はそれほど高くない。とくに私と同世代の、50代は半数を切っている。かつては「飲み二ケーション」を推進していた世代が、今では敬遠する側に回っているのだ。
この背景には何があるのか?
まず、忘年会に前向きな人の意見を見ていきたい。調査によると、20代が参加したい理由のトップ3は以下のとおりだ。
(1)メンバーとの関係構築(33.6%)
(2)職場での繋がりを感じたい(26.0%)
(3)飲みの席だけの話を聞きたい(23.7%)
コロナ禍でリモートワークが普及した。そのため、対面でのコミュニケーションに飢えている若者が多いのだ。テレワーク環境で感じてきた「コミュニケーションのズレ」を、直接の交流で補いたい。そんな思いが強いのである。
忘年会は出世のチャンスと思う人は何割?
さらに、Job総研「2025年 忘年会意識調査」で、「忘年会は出世のチャンスか」と聞いたところ、「忘年会は出世のチャンスだと思う派」は60.5%いたそうだ。仕事だけでは見えない上司や先輩の一面を知りたい。そう考える若者は少なくない。飲みの場でしか聞けない話に価値を感じているのだ。

(出所:Job総研『2025年 忘年会意識調査』)
つまり、忘年会を「義務」ではなく「機会」として捉えている若者も多い、ということだ。人間関係を構築し、キャリアを有利に進めるための場。そのように前向きに考えているのだ。
では、最も参加意欲が低い50代は、なぜ消極的なのか。参加したくない理由を見てみよう。
(1)プライベートを優先したい(34.6%)
(2)飲み会のノリについていけない(21.2%)
(3)経済的な負担が気になる(19.2%)

(出所:Job総研『2025年 忘年会意識調査』)
とくに注目すべきは「飲み会のノリについていけない」という回答だ。40代50代は役職者が多い。部長や課長という立場で参加すると、気を遣う場面が増える。かつてのように無邪気に楽しめなくなっているのだ。
さらに深刻なのが「ハラスメントリスク」への警戒である。
Job総研の調査まとめでは、こう分析されている。「特に40〜50代では、役職者としての立場や、ハラスメントに配慮した発言・振る舞いを意識せざるを得ないことから、飲み会でのノリに馴染みにくい」
つまり、上司世代は「楽しむ側」から「気を遣う側」に変わってしまったのだ。
私は企業の現場に入ってコンサルティングをしている。そこで40代50代の管理職から、こんな声をよく聞く。
「下手なことを言うと、ハラスメントで訴えられそうで怖い」
「プライベートの話を振っていいのか、わからない」
「昔のように冗談を言えなくなった」
私も『若者に辞められると困るので、強く言えません』(東洋経済新報社)という書籍を出版した。多くの管理者層から反響があった。
忘年会文化は本当に必要か?
パワハラ防止法の施行以降、上司たちは発言に神経をすり減らしている。とくに飲み会の場はリスクが高い。お酒が入ると、つい口が滑る。録音されているかもしれない。そんな恐怖を感じている管理職は少なくない。
ある製造業の部長は、こう打ち明けた。
「忘年会で部下と話すとき、頭の中で『これはセーフか? アウトか?』と常に考えている。正直、疲れる。だったら参加しないほうがラクなんです」
「無礼講」という言葉がある。調査では、「無礼講の飲み会と言われた際の印象」として「リラックスの指示と受け取る」が37.3%で最多だった。しかし、上司の立場からすると話は別だ。部下が「リラックスしていい」と受け取っても、上司は気を抜けない。無礼講だからこそ、よけいに緊張するのである。
調査によると、職場の忘年会文化が「必要だと思う派」は54.0%。過半数が必要性を認めている。その理由のトップ3は以下のとおりだ。
(1)対面交流の重要性を感じる(55.5%)
(2)普段関わらない人と交流できる(44.1%)
(3)仕事以外の話ができる(35.2%)

(出所:Job総研『2025年 忘年会意識調査』)
リモートワークが増えた今だからこそ、対面での交流に価値を感じる人は多い。とくに若手社員にとっては、先輩や上司との距離を縮める貴重な機会なのだ。
一方で、自由記述には厳しい意見も並ぶ。
「ハラスメントに当たる発言があったとしても、場の雰囲気として反発できない」
「毎年幹事に任命されるが、つまり強制参加になる」
「酔っ払った先輩たちがプライベートをきいていて、新人がとても苦笑いしていた」
忘年会文化への賛否は、今も大きく分かれている。
会社が取るべき3つの対策
では、会社はどのように対応すべきか。以下の3つを提案したい。
(1)参加を強制しない
まず大前提として、参加は任意であるべきだ。「全員参加」を暗黙のルールにしてはいけない。40代、50代の管理職にも、「任意参加でもよい」と伝えることだ。
(2)時間と形式を見直す
「2時間の飲み会」にこだわる必要はない。ランチ忘年会や、1時間で終わるカジュアルな会など、形式を柔軟にすべきだ。調査の自由記述にも「ランチとかでメリハリつけてサクッと終えたい」という声があった。
(3)上司のプレッシャーを軽減する
40代50代が参加を敬遠する大きな理由として、ハラスメントリスクへの警戒がある。だからこそ、ハラスメントに関する教育・啓蒙を続ける必要がある。過度な萎縮は、かえって職場のコミュニケーションを阻害する。
これら3つの対策を実施することで、若手も上司も気持ちよく参加できる忘年会になる。義務感ではなく、純粋に交流を楽しめる場。そのような環境を整えることが、会社の役割である。