高級サウナ死亡事故「監修タレント」におよぶ責任

ジローラモ氏は「無関係」とは言い切れない, 「広告タレント」としての出演だけなら責任は問われず, 有名人の「監修」「コラボ」はハイリスク・ハイリターン, セブン-イレブンを襲った危機

「ジローラモ氏監修のプライベートサウナ」をうたっていた高級サウナの「SAUNATIGER」(写真:SAUNATIGER公式サイトより)※現在、ジローラモ氏の画像は削除

東京・赤坂の個室サウナ「SAUNATIGER(サウナタイガー)」で12月15日、火災が発生し、利用客の30代夫婦が死亡するという痛ましい事故が起きた。

【写真】「こんなドアノブ、サウナで見たことない…」 事故が起きた“高級サウナ”の内部

同サウナの責任問題はもちろんのこと、公式サイトにイタリア人タレント、パンツェッタ・ジローラモ氏が「監修」していたと表記されていたことで、ジローラモ氏の責任を問う声も出てきている。

サウナの運営会社は、17日にサイトを更新し「今回の火災事故は、あくまで当社の店舗運営・管理下において発生した事案であり、ジローラモ氏とは一切の関係がございません」との説明を行った。

ジローラモ氏は「関係がない」と言い切ることができるだろうか?

また、有名人の「監修案件」が増えてきているが、同様の事案が起きた時に、彼らの責任はどこまで問われることになるのだろうか。

ジローラモ氏は「無関係」とは言い切れない, 「広告タレント」としての出演だけなら責任は問われず, 有名人の「監修」「コラボ」はハイリスク・ハイリターン, セブン-イレブンを襲った危機

事故の際に壊れていたとされるドアノブが写っている内部写真(写真:同社のプレスリリースより)

ジローラモ氏は「無関係」とは言い切れない

今回の火災事故の原因は解明中であり、サウナ側にどの程度の過失や責任があるのかについては現時点では何とも言えない。

ただ、死者が出る事故は、最も深刻なレベルの不祥事だ。法的責任だけでなく、道義的責任も厳しく追及される可能性が高いように思う。

一方のジローラモ氏についてだが、運営会社は以下のように説明している。

当社ホームページ上において、パンツェッタ・ジローラモ氏による『監修』との表記をしておりましたが、これは、オープン当初の2022年9月から2024年2月までの期間、ジローラモ氏よりサウナタイガーのPRのご支援をいただき、その後も掲載が継続していたものです。

これを読むと、ジローラモ氏には責任がないようにも見える。

一方で、サイト上に同氏の名前が載っていたことで、施設の宣伝になっていたり、ブランドイメージの向上に寄与したりしたであろうことを考えると、事故に対してはさておき、サウナ経営とは「無関係」とは言えないように思う。

事故に対する責任はおよばないとしても、消費者をあざむく行為を行ったという点で、「無関係」とは言えないし、まったく責任はないとは言えないのではないか。

最近は以前のようにテレビなどでジローラモ氏を目にする機会は減っているが、事務所に所属して、芸能活動を行っていることを考えると、リスク管理が甘かっただろう。

サウナ側が勝手に掲載していたのか、ジローラモさん側が承諾したうえで掲載していたのか――という点は気になるところだ。

ジローラモ氏は「無関係」とは言い切れない, 「広告タレント」としての出演だけなら責任は問われず, 有名人の「監修」「コラボ」はハイリスク・ハイリターン, セブン-イレブンを襲った危機

「SAUNATIGER」の運営会社がサイトに掲載した文章(写真:SAUNATIGER公式サイトより)

「広告タレント」としての出演だけなら責任は問われず

サウナ側によると、ジローラモ氏は過去にPRの支援をしていたとのことだが、単に広告に出演していたというレベルの話であれば、責任はかなり限られる。

2018年に暗号資産取引所「コインチェック」で、580億円相当の暗号資産が流出する事件が起きた。

同社のCMに出演していたお笑いタレントの出川哲朗氏に責任を問う声も出ていたが、実質上の責任を問われることはなかった。もっとも、出川氏の一時的なイメージダウンは免れなかったが――。

暗号資産つながりでいえば、22年にアメリカのFTXトレーディングが破綻した際に、同社と広告契約を結んでいたメジャーリーガーの大谷翔平選手やプロテニスプレイヤーの大坂なおみ選手を含む著名人が投資家らから提訴されたが、大半が棄却されている。

あくまでも「広告タレント」としての出演であれば、責任は限定的である――というのが一般的な見解だ。

広告出演者が事業の詳細を知っているわけでもなければ、経営に対する責任を負っているわけでもないことを考えると、「責任を負う必要はない」という主張にも十分な根拠がある。

今回のジローラモ氏のケースを素直に受け取ると「監修と表記はしていたが、実際は広告塔にすぎなかったし、しかも過去のことで、現在は関係ない」ということになる。そうだとすると、なぜわざわざ「監修」という言い方をしたのか? という疑問が生じる。

ジローラモ氏は「無関係」とは言い切れない, 「広告タレント」としての出演だけなら責任は問われず, 有名人の「監修」「コラボ」はハイリスク・ハイリターン, セブン-イレブンを襲った危機

「SAUNATIGER」のオリジナルアパレルのモデルにもジローラモ氏が起用されていた(写真:運営会社のプレスリリースより)

最近は、有名人が企業と「コラボ」したり商品やサービスの「監修」をしたりするケースが多く見られる。

その背景には、広告が信頼されなくなっているという事情がある。いまや有名タレントがテレビCMに出演して商品をアピールしたところで、消費者に「本当にこのタレントがこの商品が好きなわけじゃないだろう」と見透かされてしまう時代になっている。

一方で、商品やサービスが飽和する中で、好きな人を応援する「推し消費」が浸透している。

「監修」「コラボ」などと銘打たれると、有名人が企業や商品を愛し、深く関与しているように見えるし、「推し」が関わった商品なら購入したいという消費者も多いだろう。

商品やサービス側からすると、消費者に信頼性や愛着を抱いてもらいやすくなるというメリットがある。ただし、有名人がどこまで深くコミットしているかと言うと、ケースバイケースだ。

有名人の「監修」「コラボ」はハイリスク・ハイリターン

有名人の「監修」あるいは、有名人との「コラボ」はメリットも大きい反面、リスクも大きい。一方に問題が起きた際に、他方に飛び火してしまう可能性が高まるからだ。

最近の事例でいえば、25年9月にコンビニ大手・ファミリーマートとお笑いタレントの江頭2:50氏がコラボ商品「旨辛トルコ名物!伝説のケバブ風味ポテトチップス」を発売した。

江頭氏のYouTubeチャンネルで、トルコで現地の人に試食してもらう企画動画を公開したのだが、この商品の原材料に豚肉由来成分のポークエキスパウダーが使われていたことで問題となった。豚肉はイスラム教徒にとってタブーの食品であるからだ。

「コラボ」と銘打ってはいるが、おそらく江頭氏は商品開発に深く関わってはおらず、YouTubeを活用したプロモーションを中心に関与していた――というところではないかと思う。

ただ、江頭氏は広告タレント以上の責任を背負わざるをえなくなり、関係各社とともにトルコを再訪して、謝罪を行うという事態となった。

20年には、歌手のGACKT(ガクト)氏とホストのROLAND(ローランド)氏がプロデュースしたファッションブランド「G&R」のドレスが、他社商品のデザインを模倣した疑いが浮上するという事件が起きた。

運営会社のdazzy(デイジー)だけでなく、GACKT氏、ROLAND氏も謝罪し、商品の販売中止と回収が行われた。

セブン-イレブンを襲った危機

一方で、企業側がリスクを背負うこともある。

22年にコンビニ大手・セブン-イレブンは有名店数点とコラボしたカレー商品を発売したが、その中のコラボ先の1つである老舗インド料理屋「ナイルレストラン」のオーナーG・M・ナイル氏が強制わいせつ容疑で書類送検されていた事実が発覚した。

G・M・ナイル氏は即日取締役を解任され、3代目オーナーが謝罪を行った。商品自体には問題がなかったこと、コラボ企画は3代目オーナーが行っていたことから発売中止は免れたが、状況次第では中止にせざるをえない状況に追い込まれていただろう。

繰り返しになるが、有名人の「監修」「コラボ」はメリットが大きいが、一方にトラブルが発生した場合に他方へと飛び火する危険性も高い。宣伝効果が高い一方で、悪評に転じた際の拡散力も強い。

ハイリスク・ハイリターンな手法であることを自覚して、双方が相手方をしっかりと監視、管理する必要があるし、契約条件も明確にして、リスク管理をしっかり行う必要がある。