東南アジア諸国への武器輸出をもくろむ高市政権 その背景にはトランプ氏の戦略?あくなき拡大路線を危ぶむ声
高市早苗政権がフィリピンやインドネシアといった東南アジア諸国に武器輸出を進めようとしている。東南アジアは、かつて旧日本軍が侵略した地域。将来の紛争を助長しかねない武器を輸出することは、「平和国家」を掲げてきた日本の立場と矛盾しないのか。高市政権の狙いはどこにあるのか。(佐藤裕介)
◆「あぶくま」型護衛艦の輸出先に具体的な国名が

輸出が検討されている海上自衛隊の護衛艦「あぶくま」型護衛艦(海上自衛隊ホームページより)
自民党と日本維新の会の連立与党は15日から、武器輸出ルールの緩和に向けた協議に着手している。
輸出については現在、原則として「救難、輸送、警戒、監視、掃海」の非戦闘目的の5類型に限定されている。高市政権はこのルールを来年前半にも緩和し、東南アジア諸国への武器輸出拡大を目指す構えだ。
関係者によると、政府は海上自衛隊の中古護衛艦などの輸出を検討している。具体的には、1989~1993年に6隻が就役した「あぶくま」型。全長109メートル、基準排水量は2000トンで、対艦ミサイルなどを搭載できる。輸出先としては、フィリピンやインドネシアなどが浮上しているという。
◆小泉進次郎防衛相「安全保障環境創出への重要な政策的手段」

談笑する(右から)茂木外相、小泉防衛相、インドネシアのスギオノ外相、シャフリィ国防相=11月17日、東京都港区で
小泉進次郎防衛相は11月にインドネシアのシャフリィ国防相と防衛省内で会談。その後の会見で「(防衛装備品輸出は)わが国にとって望ましい安全保障環境を創出するための重要な政策的手段だ」と強調した。
シャフリィ氏とは海自横須賀基地(神奈川県横須賀市)も訪れ、停泊中の海自護衛艦を案内して「トップセールス」するほどの念の入れようだった。
高市政権がここまで東南アジア各国への武器輸出に前のめりになっているのはなぜなのか。
◆「中国と対峙する各国と日本が連携」

高市早苗首相=19日、首相官邸で(佐藤哲紀撮影)
高市首相を支持している自民議員の一人は「こちら特報部」の取材に対して、キーワードは「中国だ」と明かす。
東南アジア各国への武器輸出は「南シナ海を隔てて中国と対峙(たいじ)する各国と日本が連携して(中国を)抑止することにつながる」とし「今後のさらなる輸出拡大に向けた試金石になる」とも述べる。
だが日本にとって、東南アジアは太平洋戦争時に多くの激戦の舞台となり、現地の住民に多大な被害を与えた歴史的経緯がある。
既に日本政府は、英伊との次期戦闘機の共同開発に続き、オーストラリアへの護衛艦の輸出など、「共同開発」の名の下に武器輸出を進めつつある。
とどまるところを知らない武器輸出の拡大には、強く懸念する声が上がり始めている。
市民団体「武器取引反対ネットワーク」の杉原浩司代表は、東南アジア諸国への武器輸出について「平和をつくるという観点からいえば、マイナスでしかない」と批判する。
◆「『死の商人』だけが利益を得る構図を永続化しかねない」

国会議事堂(資料写真)
今月15日には、武器輸出拡大に反対する市民集会が国会内であり、約50人が参加した。集会では、署名2万2451筆(オンライン署名を含む)を衆参両院議長宛てに提出し、東南アジア各国も含めた海外への武器輸出の全面禁止などを求めた。
安保政策に詳しいジャーナリストの布施祐仁氏は「米国は第1次トランプ政権の時から、日本に中国を軍事的に抑止する役割を担わせようとしている」と指摘した上で「今回の(東南アジア諸国への)輸出拡大に向けた動きも、米国の対中抑止戦略の一翼を担おうとするもの」と読み解く。
先の杉原氏は「武器輸出の拡大は国際的な緊張状態を助長し、(関係国の)軍事費を増大させ、さまざまな面で人々の暮らしを脅かすことにもつながる。『死の商人』といわれる軍事企業だけが利益を得る構図を永続化しかねない」と危惧を口にした。
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