大河「豊臣兄弟!」まず「3カ月見る価値あり」の根拠

久しぶりの“王道”大河ドラマが放送スタートします(写真:NHK『豊臣兄弟!』公式サイトより)
1月4日、早くも2026年のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」第1話が放送されます。
【写真】新大河『豊臣兄弟!』気になる登場人物は?
同作のコンセプトは「強い絆で天下統一という偉業を成し遂げた豊臣兄弟の奇跡──夢と希望の下剋上サクセスストーリー」「歴史にif(もしも)はないものの…『秀長が長生きしていれば豊臣家の天下は安泰だった』とまでいわしめた天下一の補佐役・豊臣秀長の目線で戦国時代をダイナミックに描く波瀾万丈のエンターテインメント」。
真っ先に注目したいのは、幕末とともに大河ドラマ定番である戦国時代が選ばれたこと。25年は江戸中期の「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」、24年は平安時代の「光る君へ」だっただけに、王道に戻ってきたという印象があります。
“ヒーロー”として描く秀吉は30年ぶり
はたして「豊臣兄弟!」はどのような作品で、どこに見どころがありそうなのか。地上波だけで年間約150作もの連ドラが放送される中、1年間見続ける価値がありそうなのか。第1話放送に先駆けて掘り下げていきます。
まず戦国時代と豊臣家を描いた、大河ドラマと主人公をさかのぼっていきましょう。
23年の「どうする家康」と徳川家康、20年の「麒麟がくる」と明智光秀。
17年の「おんな城主 直虎」と井伊直虎、16年の「真田丸」と真田信繁(主に安土桃山時代)、14年の「軍師官兵衛」と黒田官兵衛、11年の「江~姫たちの戦国~」と江。
09年の「天地人」と直江兼続、07年の「風林火山」と山本勘助、06年の「功名が辻」と千代・山内一豊、02年の「利家とまつ~加賀百万石物語~」と前田利家・まつ、00年の「葵 徳川三代」と徳川家康・徳川秀忠・徳川家光。
1997年の「毛利元就」と毛利元就、そして96年の「秀吉」と豊臣秀吉で、ようやく豊臣家の物語に行き着きます。
さらにそれ以前に放送された豊臣家の物語には、81年の「おんな太閤記」とねね、65年の「太閤記」と豊臣秀吉がありました。
96年に放送された「秀吉」まで豊臣秀吉のイメージは、知恵と度胸で農民から天下人に登り詰めたヒーローであり、日本史上屈指のサクセスストーリーでした。
しかし、97年以降の大河ドラマでは「やっかいな敵」「ずる賢い悪役」というイメージに一変。秀吉に苦しめられる主人公を描くケースが多かっただけに、「ヒーローとして描く30年ぶりの作品」になりそうです。
戦国と令和という「時代のギャップ」を感じづらい作品
しかも今回の主人公は、豊臣秀吉(池松壮亮)の弟・豊臣秀長(仲野太賀)。
「最高の補佐役」と言われる秀長の視点から、戦国時代や戦国武将たち、合戦などの天下統一に至る道のりが描かれていきます。

気になる登場人物と相関図は……(写真:NHK『豊臣兄弟!』公式Xより)
1つ目の見どころは、秀吉のような大人物ではなく、視聴者に近い感覚を持った秀長による共感度や没入感の高い作品になりそうなこと。
まず、「一生農民でいい」と思っていた秀長が、なぜ兄の誘いに乗って武士になろうと思ったのか――その仕事を選ぶ基準、人生を変える決断。
次に、兄をどのように助け、成功に導いていくのか――仕事の進め方、成果を得る方法。
さらに、織田信長(小栗旬)や松平元康(のちの徳川家康、松下洸平)、その他の戦国武将とどのように接していくのか――同僚、取引先、ライバル企業との人間関係。
庶民目線の主人公にしたことでビジネスシーンに置き換えて見やすくなるなど、いい意味で戦国と令和という時代のギャップを感じづらい作品になりそうです。
「半沢直樹」「VIVANT」の脚本家のアレンジに期待
「豊臣兄弟!」の脚本を手がけるのは八津弘幸さん。
これまでは「半沢直樹」「ルーズヴェルト・ゲーム」「下町ロケット」「陸王」「VIVANT」(いずれもTBS系)などの企業が舞台の作品が多かったほか、朝ドラ「おちょやん」(NHK総合)なども手がけた業界きってのヒットメーカーです。
さらに「家政夫のミタゾノ」(テレビ朝日系)や「流星ワゴン」(TBS系)のような家族ドラマも得意ジャンルの1つ。
「豊臣兄弟!」というタイトルや、小一郎(のちの秀長)の助力によって藤吉郎(のちの秀吉)が出世し、一家が変わっていくという展開、母・なか(坂井真紀)、姉・とも(宮澤エマ)、妹・あさひ(倉沢杏奈)らの出演者を見ても期待できる部分でしょう。
なかでも際立つのは、やはり秀長と秀吉の純粋な兄弟愛。戦国時代では親子や兄弟で命を奪い合うことも多く、藤吉郎の主君である織田信長も弟・織田信勝に謀反を起こされ、自ら葬りました。
その点、「秀吉の成功は有能で絶対に裏切らない弟がいたから」と言われる2人の兄弟愛や固い絆は、感動を誘いそうです。
また、戦国時代の物語=“多くの戦が描かれる”ということ。
序盤から信長と今川義元(大鶴義丹)の桶狭間の戦いを筆頭にさまざまな合戦が描かれるようです。はたしてひさびさの戦シーンはどのように描かれるのか。家族パートとの落差が大きいだけに反響を集めそうな感があります。
加えて、令和では隣国との緊張関係や防衛費などが取りざたされる中、戦シーンは考えさせられるものになるかもしれません。
八津さんは意外性のある展開やアッと驚く結末が得意な脚本家ですが、大河ドラマには“史実”という縛りがあり、近年では「歴史の専門家が口をはさみ、異議を唱える」という難しさも加わっています。
それでも地上波のドラマは歴史に詳しい人だけでなく、詳しくない人やエンタメ重視の人も満足させなければいけないだけに、脚本家にとって最大の難関と言っていいでしょう。
その点、八津さんは「史実をどれだけおもしろくアレンジできるかを意識している」と明言しました。そもそも戦国時代や豊臣家は史実として知られていることが多く、ネタバレ度の高さは最高レベルだけに、どの部分をどのようにアレンジして盛り上げるのか、その手腕に期待がかかります。
「『太賀、池松、小栗』なら勝ち戦」の声
業界内では、仲野太賀さん、池松壮亮さん、小栗旬さんのキャスティングが決まった時点で、「『豊臣兄弟!』は勝ち戦」という声があがっていました。これは「それくらい3人の実績と実力に疑いの余地はない」ということ。

織田信長役の小栗旬さんは、14年にドラマと映画が制作された『信長協奏曲』でも信長を演じています(写真:NHK『豊臣兄弟!』公式Instagramより)
3人は10代から大河ドラマに出演していて、しかも太賀さんと池松さんは14歳、小栗さんは12歳の若さで初出演。
太賀さんは「風林火山」「天地人」「江~姫たちの戦国~」「八重の桜」「いだてん~東京オリムピック噺~」の5作、池松さんは「義経」「風林火山」の2作、小栗さんは「八代将軍吉宗」「秀吉」「葵 徳川三代」「義経」「天地人」「八重の桜」「西郷どん」「鎌倉殿の13人」「どうする家康」の9作に出演してきました。
それぞれ32歳、35歳、43歳の年齢以上に時代劇の経験が豊富で、さらにプライベートでの親交もあり、互いに「共演はごほうび」と語る相思相愛ぶり。
そんな3人の起用が決定したことで「自分も共演したい」「彼らに力を貸したい」という俳優が続出するなど、キャスティング全体がスムーズに行われたことも期待感を加速します。
特に実力を認め合っているほか、仲のよさで知られる仲野太賀さんと池松壮亮さんのかけ合いは見どころの1つ。早ければ序盤から大河ドラマのみならず「日本ドラマ史最高レベルのバディ」と言われる可能性もありそうです。
少なくとも「序盤3カ月間」を見る価値はある
秀吉は「人たらしだった」と言われていましたが、それは秀長も同様。「むしろ大名や武将たちから頼られ、秀吉との円満な関係性を取り持っていた秀長のほうがコミュニケーション能力は高い」と見る向きもあります。
そんな「兄弟がライバルの大名や武将を味方につけて成功を収め、天下統一を目指す」という物語は、どこか「週刊少年ジャンプ」の世界観に似ているのかもしれません。
史実では、秀吉が天下統一を成し遂げたあと、秀長が先に亡くなりました。その後、秀長を失った秀吉は朝鮮出兵や後継者問題などで豊臣家滅亡のきっかけを作ってしまいますが、「豊臣兄弟!」ではどこまで描かれるでしょうか。
ここまであげてきたように、視聴者に近い感覚の主人公への共感と没入、ひさびさの合戦シーンと家族の物語、脚本家による史実からのアレンジ、大河ドラマの実績豊富な太賀・池松・小栗の共演など、見どころの多い作品だけに、少なくとも序盤3カ月間を見る価値はありそうです。