国内初、風力発電所直結の生グリーン電力データセンター 豊田通商Gが北海道・稚内で

「宗谷グリーンデータセンターⅠ(仮称)」のイメージ画像

 豊田通商と、同グループ会社のユーラスエナジーホールディングスが、風力発電由来の再生可能エネルギー(再エネ)を利用するグリーンデータセンター事業「宗谷グリーンデータセンターⅠ(仮称)」を発表した。北海道稚内市内で、2027年中のサービス提供開始を予定している。

 同データセンターは、稚内にあるユーラスエナジーの風力発電所の近隣に設置され、直接その電力供給を受ける“生(なま)グリーン電力”を利用する点が大きな特徴。将来的には稚内を含む道北地域を、100MW以上規模の再エネデータセンター集積エリアとして、風力発電との一体開発を進めることを目指す。

 2026年1月14日に開催された記者発表会には、両社に加えてNTTドコモビジネスも出席し、オール光ネットワーク「IOWN APN」の同データセンターへの延伸計画を説明した。さらに、稚内市長は「稚内が次のステップに“脱皮”する足がかりになるのでは」と期待するコメントを語った。

(左から)ユーラスエナジーホールディングス 代表取締役社長の諏訪部哲也氏、豊田通商 デジタルソリューション本部 エンタープライズIT事業部 部長の水川和巳氏、稚内市長の工藤 広氏、NTTドコモビジネス プラットフォームサービス部門 クラウド&ネットワークサービス部 第二サービス部門 部門長の松林 修氏

風力発電所から直接受電する「生グリーン電力データセンター」

 今回発表された宗谷グリーンデータセンターⅠは、9900平米の敷地に1階建(平屋)のドーム型建屋を設置する、受電容量3メガワット(3MW)の小規模データセンターとなる。ユーラスエナジーがインフラ部分(土地、建屋、電力設備)の運営を、豊田通商がコンテナ型データセンターやIT設備の運営、およびサービス提供、営業活動を担う。今後、顧客の需要を見ながら、ホールセールおよびコロケーション(コンテナ型データセンター)のサービスを行う予定。

ドーム型の建屋内にコンテナ型データセンターを設置し、運用する

 同データセンターは、近隣にある風力発電所(樺岡ウインドファーム、総連系容量42MW)から直接、自社送電線経由で電力供給を受け、データセンターの電力需要をまかなう点が大きな特徴だ。再エネ発電の電力を直接、需要者に供給するこうした仕組みを「生グリーン電力」と呼ぶが、風力発電所からの生グリーン電力で運用されるデータセンターは「国内初」(両社調べ)だという。

 なお、天候などにより風力発電の発電量が不足する場合には、ユーラスエナジーの子会社が提供する実質再エネ電力により補う。ただし、ユーラスエナジーの試算によると、最低でも電力需要の80%は風力発電の電力でまかなえる見込みだ。

“風力発電所直結”で再エネ電力の供給を受ける点が大きな特徴だ

 同データセンターは2025年に造成工事を終えており、今年(2026年)から来年初頭にかけて、は建屋の建設工事や電気設備/空調設備の工事、コンテナ型データセンターやIT機器の調達や設置などを進める。2027年下半期のサービス提供開始を予定している。

高い再エネポテンシャルを持つ道北地域に「電力需要」を生み出す

 ユーラスエナジーは、豊田通商の100%子会社である、国内最大規模の再エネ発電事業者だ。日本をはじめ16カ国で再エネ事業を展開しており、現在操業中の風力/太陽光/バイオマス発電の総連系容量は5112MW(5.1GW)に及ぶ。

 ユーラスエナジー社長の諏訪部氏は、風況の良い(風力発電に適した風環境である)北海道の中でも、特に道北地域は風が強く、なだらかな土地があり、大型風車の輸送が容易でコストが抑えられるなど「高い発電量、風力発電の導入ポテンシャルを持っている」と説明する。実際、同社はすでに道北地域(宗谷総合振興局管内)において、稚内市を中心に10件/連系容量525.5MWのプロジェクトを展開している。今後計画している風力発電所も合わせると、その連系容量は最大1800MW(1.8GW)に達する。

北海道の道北地域は大きな再エネポテンシャルを持つ地域

 このように高い再エネポテンシャルを持つ道北地域だが、その一方で「地域の電力需要が少ない」「十分な送電網が整備されていない(=大都市圏に送電できない)」という課題も抱えており、このままでは風力資源のポテンシャルを生かし切れない。そこで、大規模な電力需要が見込まれるデータセンター事業をスタートさせて、再エネ電力の“地産地消”を図るのが、今回の目的だ。

需要がなければ発電はできないため、データセンターを開設して“再エネ電力の地産地消”を図る

 豊田通商の水川氏は、今回の第1号データセンターを皮切りに、道北地域においてデータセンターの拡張を進める計画を明らかにした。2030年ごろをめどに受電容量10~20MW規模のデータセンター構築を目指すほか、将来的には100MW以上の大規模データセンター集積エリアと風力発電の一体開発を視野に入れたいと説明した。

豊田通商とユーラスエナジーによる今後のグリーンデータセンター構想

石狩、千歳、苫小牧、そして稚内をAPN展開のハブに ―NTTドコビジ

 NTTドコモビジネスの松林氏は、「NTTグループ全体として、今回のプロジェクトに参画していきたいと考えている」と切り出したうえで、同社が展開する企業向けオール光ネットワークサービス「docomo business APN Plus」を稚内にも展開していく計画であることを明らかにした。

 政府において議論が進んでいる「ワット・ビット連携」は、電源地の近くにデータセンターを移動させて“電力の地産地消”を促すことで、新たな送電網の敷設や維持に大きなコストをかけず、高度なAI処理を実現するという考え方だ。それを実現するうえで重要なのが、データセンターが配置される電源地域とサービスの需要地である大都市圏という遠隔地間を、低遅延/大容量でつなぐオール光ネットワーク(APN)である。

「ワット・ビット連携」の実現には、遠隔地間を低遅延/大容量でつなぐAPNが不可欠

 docomo business APN Plusは、すでに全国の主要都市や主要データセンターの間を低遅延/広帯域ネットワークで接続し始めている。松林氏は、北海道においては、これからデータセンターの集積エリアになると見込まれる4つのエリア(石狩、千歳、苫小牧、稚内)への展開を、NTT東日本やNTT-MEとも連携しながら進めていく予定だと説明した。

北海道内のデータセンター集積地になる4エリア(石狩、千歳、苫小牧、稚内)を軸に、APN Plusの展開を進めていく

 また、発表会であいさつに立った稚内市長の工藤氏は、稚内市はGXデータセンターの集積地に適した「3つの優位性」があると強調した。道央地域と比べて年間平均気温が約3℃低い「冷涼な気候」、震度4以上の地震が過去85年間観測されていない「広大な土地と安定した地盤」、そして風力発電を基盤とした「豊かな再エネ資源」の3つだ。今後、こうした優位性をアピールしながらデータセンター誘致に取り組んでいきたいと述べた。

 「今回の事業だけで、将来の街(稚内)がどうなるというのは難しい。ただし、われわれの街の歴史を考えると、これまでは一次産業が中心で、歴史的な産業構造の転換にも追いつかないまま今日に来ている。それが、まさにいま、再生可能エネルギーを通じて、この街が次のステップに脱皮できる契機が来ているのではないか。次の時代にこの街が変わっていける足がかりになる事業のひとつだと考え、大いに期待している」(工藤氏)

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