日中関係緊張「一人旅」して感じた"意外な実態"

「中国1人旅」。現地で見た中国人“想定外の言動”(写真:筆者撮影)
「日中関係が悪化してるのに中国へ行ったの?」
【写真を見る】中国をひとり旅した筆者。あの「超有名観光地」がガラガラだった様子
「現地で危ない目に遭わなかった?」
2025年12月、私は単身で中国へ訪れる機会があった。おそらく中国政府の渡航自粛要請が影響していたのだろう。出発日までに2回のフライト強制キャンセル(中国系航空会社の計画運休)が発表されるなど、渡航前はドタドタのバタバタ……。
出発の約1週間前には、外務省が公式サイトで「南京事件」に伴う反日感情の高まりについて注意喚起を行った。渡航危険レベルは「0」の位置づけのままだったが、いつも以上に警戒が必要だろうなと思いつつ、私は日本を出国。現地では北朝鮮レストランで食事をしたり、船に乗って北朝鮮に接近するなど、濃度の高い時間を過ごした。
今ネットでは「中国人の渡航自粛は6割ではなく10割でいい」「うるさい中国人が観光地から減って本当によかった」といった“アンチ中国”の声が目立つ。反中感情を持ってない人は非国民であるかのような空気感、同調圧力が社会を黒色に覆っている。
だけど、昔も今も、私は中国人が好きだ。
私のパスポートには2025年だけで、中国の入国スタンプが計5つ押されている。同年は青島、丹東、広州、ウイグル、上海、北京の計6カ所を、すべて1人旅で訪れた。旅先ではいつも現地の中国人に大変よくしてもらっている。日本人が抱いている“中国人のイメージ”とは異なる光景を目にすることも多い。
中国の電車と飛行機で見た「意外な光景」
団体観光客が大声で話し合ったり、人をかき分けるように押し進んだり……日本の観光地で「マナーの悪い中国人」を見たことがある人は少なくないだろう。これは私も同じだ。
その一方で、2025年2月に「万里の長城」を目指して北京の地下鉄に乗った際、私は衝撃的な光景を目にした。なんと北京の電車の中は、日本とまったく変わらないレベルで“静か”だったのだ。スマホで動画を見たり、ゲームをしたり、音楽を聴いたり……全員がワイヤレスイヤホンを装着して、自分の時間を楽しんでいた。
乗り換えのために降りた駅は、まるで品川駅のように人で溢れかえっていたが、みんな無言で行進していた。先月乗った瀋陽~丹東の高速鉄道(新幹線)も同じで、清潔感や静寂感はバッチリ。マナーも、日本と何ら変わらない感じだった。

ネットで検索すると“激混み”の情報が目立つ「万里の長城」だが、外気温マイナス10℃。2月の早朝9時頃はガラガラだった(写真:筆者撮影)
大変お恥ずかしいことに、私は中国人が好きである一方で、かつて長い期間「中国人=うるさい、マナーが悪い」といった偏見も持っていた。だからというか、その証拠に、私は中国系の飛行機でイヤホンを付けずに、ネットフリックスで『スパイファミリー』を視聴したことがある。どうせ機内は中国人だらけで騒がしいだろうから、別にいいだろうと思っていたのだ。
ところがどっこい。動画視聴から数分後、CAさんから「少し音量を下げてもらえますか?」と英語でお願いされた。動画に集中していて気が付かなかったが、周りを見渡すと、機内でうるさいのは日本人の私だけ……。赤面しながら全力で謝罪したとろころ、CAさんは笑顔で「大丈夫ですよ」と言ってくれた。隣に座っていた中国人男性も、親指を立てながら「OKOK」と笑ってくれた。
お金がない日本人に中国人が取った「ななめ上の対応」
中国では現金文化がほぼ完全に消滅しており、アリペイなどの電子決済サービスが主流になっている。が、私は、この事実を知らないまま「なるようになるっしょ」の精神で、単身で中国へ渡航。人民元約5千円分と楽天カードを持って2025年5月、中国のウイグル自治区を訪れた。
ホテルに到着したのは25時前だ。周辺には飲食店が1軒もなかった。ロビーには自販機でカップラーメンとビールが売られていたが、支払いはアリペイ限定というオチ……。受付にいた20代くらいの中国人女性に泣きついたところ、彼女の個人用アリペイで購入 → 私が彼女に現金を渡すという方法で、夜ご飯を確保できる見通しが立った。
けれど私は、細かいお金をあまり持っていなかった。なのでピッタリ支払えない。ここは30代の男性らしく、大目に支払うのが万国共通のマナーだろう。私は財布からお札を取り出して、彼女に渡そうとした。が、彼女はニコッと笑いながらこう言った。
「小銭が足りない分は私が奢るからいいですよ」
よもやよもや、初対面かつ一期一会の年下女性に、私は100円分の食事代をご馳走になった。想像のななめ上をいく展開に、恥ずかしさや申し訳なさはもちろんあったのだけど……親切に対応してくれたことが、私は心から嬉しかった。

最高の夜ご飯になった(写真:筆者撮影)
翌日、市内観光に繰り出した私は、イチゴを量り売りしている露天商を発見。どんな味がするのか1粒だけ食べてみたいと思い、旅の途中で手に入れた細かいお金(1元札。当時のレートで約20円)をポケットから取り出し、40代くらいの中国人女性に渡した。
その女性は「1元札?」「どういう意味?」といった怪訝な表情を浮かべていた。私はイチゴを指さしながら、TOEIC300点の壊滅的な英語力で「One! One!」と伝えた。メッセージを理解した中国人女性は、「1粒ならお金はいいわよ」「好きなの選んで食べなさい」と私にお金を返した後、歯磨きスマイルでイチゴを選ばせてくれた。

美味しいイチゴを、ありがとう(写真:筆者撮影)
日中関係“悪化”の中、中国渡航した正直な感想
日中関係が悪化している2025年12月に中国渡航した時も、いつも通りと言うべきか、現地では好意的に接してもらう機会が多かった。
マイナス6℃の極寒環境でトイレの限界を迎え、慌てて飛び込んだ焼肉店で、店員さんは快くトイレを貸してくれた。キャバクラみたいなカラオケ店に飛び込んだ時も、強面の男性がトイレまで案内してくれた(やられたらやり返す。トイレ使用後、どちらの店にも日本から持参したお菓子をお礼として渡した)。
現地のフードデリバリー配達員に「北朝鮮レストランはどこにありますか?」と質問した時も、地図アプリと翻訳アプリを使って丁寧に説明してくれた。
ホテルの受付で日本のパスポートを提示した際も、宿泊した3つのホテルすべてで、一切嫌な顔はされなかった(部屋をアップグレードしてくれたホテルもあった)。エレベーターまで案内してくれた50代くらいの男性スタッフは、「こんにちは」「私は日本語を勉強している」と日本語で話しかけてくれた。

親切に教えてくれて、ありがとう(写真:筆者撮影)

中国から日本に帰国する際、中国系航空会社の座席には、数ページにわたり日本を紹介する雑誌が置かれていた(写真:筆者撮影)
心理学の名著『だれもわかってくれない』(早川書房)によると、人は見たいように見て聞きたいように聞く、「確証バイアス」と呼ばれる心理傾向に強く影響される。ひとたび第一印象が形成されると、その印象や仮説を証拠づける事実ばかりに、目を向けてしまう傾向がある。なお悪い印象や誤解を相手に与えてしまった時は、「圧倒的な量の証拠を示す」という方法が有効になるそうだ。
正直に申し上げて、私は中国へ渡航する前、「日本で反中感情が高まっているように、中国でも反日感情が高まっているのでは?」といった恐さがあった。だけど現地に行ってみて、私は圧倒的な量の証拠に圧倒された。
最後に筆者が伝えたいこと
私は至らない点が多くある人間だ。しかし、だからこそと言うべきか、異国を旅する際に“現地の人の優しさ”に触れる機会が少なくない。発展途上国だろうが先進国だろうが、北朝鮮人だろうが中国人だろうが関係ない。世界中に“善意”はあったし、世界中に“いい人”はいた。言葉が通じなくても、心が通じ合える瞬間があった。
国家関係のあれこれは、しばしば大きな主語で語られる。「日本人は」「中国人は」という言葉が簡単に飛び交う。しかし現実の旅先で出会うのは、いつも名前と顔を持った一人ひとりの人間だ。
日本から中国までは、飛行機で片道3時間ほどで到着できる。往復航空券は諸税込みで2万~4万円あれば大丈夫。ホテルは1泊3000円で快適に泊まれるし、物価は日本よりもグンと安い。飯もうまい。
あくまで私が体験したのはn=1、サンプル数が1つしかない、取るに足りない経験であることは自覚している。これで何かを断言できるほど世界は単純ではないのは言うまでもないだろう。それでも、自分の足で見て、聞いて、感じたことは、確かなものとして自分の中に残っている。
国家同士の距離が広がる時代だからこそ、個人レベルの実感はむしろ大切になる。日中両国の間にある“溝”に、小さなnが積み重なっていくことを私は信じているし、信じたい。