東京メトロ半蔵門線「紫色」まとった車両の転換期

東京メトロの8000系(筆者撮影)
東京メトロ半蔵門線は、渋谷から押上までの16.8kmを結ぶ東京メトロの地下鉄路線である。東京メトロ9路線のうち7番目に開業した比較的新しい路線で、全線が地下区間で構成されている。
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デビュー車両は8000系
半蔵門線用として最初に登場した車両は8000系である。8000系が営業を開始したのは、1981年4月1日で、翌年の永田町―半蔵門開業に備えてのことだった。
実は1978年8月1日、半蔵門線が最初に部分開業した区間である渋谷―青山一丁目間は運行区間が短かったこともあり、経済的な理由も考慮して、半蔵門線用の車両の導入をせず、直通先の東京急行電鉄(現・東急電鉄)の車両を借り受けて、運行を開始した。しかし、延伸が進むにつれ営団地下鉄(現・東京メトロ)側でも車両を新製することになり、この8000系が製造された。
その外観は、当時営団地下鉄で最新鋭だった千代田線用の6000系や有楽町線用の7000系をベースに、半蔵門線のラインカラーである紫をまとったデザインとなった。前面も前照灯と尾灯が1つのケースに収まり、エッジの部分が額縁処理されている。直通先の東急の車両に合わせ、運転台は営団地下鉄初のワンハンドルマスコンを採用した。また将来的に冷房装置を搭載するため、屋根上の準備工事も済んでいた。
8000系の特徴はなんといっても、「ボルスタレス台車」の採用である。ボルスタとは車体を載せる枕ばりのことで、それを省略したので「ボルスタレス」なのだ。今や大手私鉄からJRまで当たり前のように導入されているボルスタレス台車だが、当時の台車は、上から車体を載せるボルスタと、枕ばね、台車枠、軸ばね、輪軸、車輪というような構成であった。
1977年に車両の軽量化と構造の簡素化を目的に、住友金属と営団地下鉄がボルスタなどを省略したボルスタレス台車が誕生した。これまでの電車は、いかつい台車を履いているイメージだったが、ボルスタレス台車は台車枠が小さくなり、従来よりも車輪が露出している姿になった。そんな8000系も現在は東京メトロ最古の形式となってしまい、残りわずかの編成が細々と運行している。
車内はラインカラーを表す紫色のシート。最近の車両で見られるバケットシート(体型に沿った凹みがあるタイプ)ではないが、中央林間から南栗橋までのロングランでも疲れを感じることはなく、快適に過ごせる。営業を開始してから40年以上経ったが、現在でも通じる安定した乗り心地は、十分な満足感がある。
2002年に08系が登場
08系は半蔵門線の2003年押上開業に備えて2002年に増備された車両である。押上開業と同時に、東武伊勢崎線や日光線との相互直通運転が開始されたため、当初からその需要を見越した設計になっている。
営団地下鉄の80年代後半は銀座線01系から始まり、東西線05系、日比谷線03系など、いわゆる「0系シリーズ」が各線区に登場した時代だった。そのため、1981年に区間開業した半蔵門線は、新型車両の登場が他の線区に比べて遅かった。また、08系は営団地下鉄としては最後の新形式車両ということもあり、当時最新車両だった東西線の05N(05系後期車)をベースとした仕様になっている。

半蔵門線08系(筆者撮影)
「人や環境に快適でやさしい車両」をテーマに掲げ、床面の高さを8000系に比べて60mmも低い1140mmとし、ホームでの段差を軽減している。車椅子利用者を考慮しての仕様であろう。車内は清潔感あるホワイトをベースに、座席の色は半蔵門線のラインカラーであるパープル(濃紫色)だ。08系からはバケットタイプのシートが採用され、さらに7人掛けのシートを4:3に分割するスタンションポールも、初めて採用している。
6編成(60両)が製造され、全車運行しているが、直通車両も含めると同線では少数派の形式であり、乗り合わせることができたらラッキーだ。
床面が低いせいか、8000系と比べると天井が高く感じられ、閉塞感なく居心地よく感じられる。今後は主力となる18000系と共に、引き続きの活躍が見込まれるだろう。
18000系は最新鋭車両
18000系は8000系の後継として、2021年8月7日より営業運転を開始している。現在、半蔵門線の主力を担う形式で、有楽町線や副都心線で活躍する10000系シリーズの最新鋭車両である。近年8000系の置き換えが進み、同線で最大勢力となっている。最終的には、19編成(190両)がそろう見込みだ。
外観は初代8000系から受け継ぐ傾斜した前面で、力強いイメージが湧いている。ラインカラーは、ホームドアの設置を意識し側面腰部だけではなく、上部にも配色されている。
車内は10000系シリーズをベースにバリアフリー向上が図られ、床面の高さが08系と同様に1140mmに統一されたほか、ドア付近の床面をホーム側に下り傾斜させている。乗降の際に、誰もが乗りやすい構造になっていることがよくわかる。
また乗り心地や居住性は、40年前の8000系のときから満足いくものであったが、今日の18000系は、多様性の時代に応じた思想がプラスされているようだ。

半蔵門線18000系(筆者撮影)
車内はホワイトベースだが、従来の車内に比べてパープルの発色が強いと感じる。なぜなら、床面、座席、そして吊り革までがパープルに配色されているからだ。しかし、なぜか自然に居心地よく感じられる。床面が濃いパープル、吊り革が明るいパープルに分かれており、車内の視覚環境が明るく感じられるためであろうか。
10000系シリーズ共通で採用されている貫通扉を、強化ガラス素材にしたことや、さらに18000系では荷物棚や座席横の仕切り板にまで、このガラスが採用されたことにより、車内灯の明かりや窓からの日差しが、車内全体に広がる構造になっているからだとも感じた。
直通先でさまざまな行き先に分かれる列車が多い中、車内のパープル色が強いことでこの列車が半蔵門線に乗り入れることが一目でわかる。乗り間違い防止にも一役買っていると思える。
多様な車両に出会えるのも残りわずか
座席シートにおいては、8000系はシンプルなロングシート(区切りがないタイプ)で、08系、18000系はバケット仕様のロングシート(1人当たりの座る位置が窪みで仕切られているタイプ)になっている。意見が分かれるところだが、筆者としては座った時にホールド感がある「バケットタイプ」が好みである。

18000系のロングシート(筆者撮影)
1つの地下鉄路線で約40年間、車両の新旧移り変わりを感じられる「東京メトロ半蔵門線」だが、多様な車両の姿を見ることができるのも本当に残りわずかな期間であろう。
鉄道車両は他の乗り物に比べて、車両の寿命が長い。だからこそ、時代を先取りした最先端の技術が採用され、その車両は長い間愛され続ける。昨年末に、新木場の車両基地で短縮化され1両になった元千代田線の6102号車と、元有楽町線の7101号車。そして、引退の時が近い半蔵門線8000系も含めて、東京メトロの長い歴史を紡いできたレガシーたちが、今後どのような形で保存されることになるのか、とても気になるところである。