大量輸送に威力発揮の連節バス! だけどやめた国もある……ヨーロッパではどんな感じ?

最近、日本でも徐々に見掛けるようになってきた連節バス。2つの車体を蛇腹のような幌で連結した構造で、通常の1車体のバスに比べて圧倒的な収容力を持つことから、団地から駅へ向かう路線や、学校への通学路線のように、短時間に多くの乗客を輸送する必要がある路線で威力を発揮する。
文・写真:橋爪智之
構成:中山修一
【画像ギャラリー】ヨーロッパ都市部で活躍する連節バス(6枚)
■効果はあるけど使い勝手に高い壁

連節バスが使われている福岡市内のBRT(写真:中山修一)
日本での連節バス事情を眺めてみると、多くの混雑路線を抱えるにもかかわらず、採用例はそこまで多いわけではなく、街中で出会うとちょっと物珍しさを感じる。
というのも日本の保安基準では、大型バス車両の最大全長が12mと定められており、2車体18mに達する連節バスは、道路運送法の特例を受け、運行される路線や道路を限定して使用しなければならない制約が大きく関わっている。
指定された路線はもちろんのこと、走行する道路ですらも厳しく制限されており、例え回送であっても指定外の道路を走行することは許されない。
これはつまり、工事などで指定された道路が通行止めになった場合、迂回ができないから路線自体が運休にしなければならなくなる。突発的な事故の場合は、通行止めが解除されるまで身動きが取れず、立ち往生することになる。
つまり、日本で連節バスを導入するには、こうしたリスクと隣り合わせになるということで、余程の混雑路線以外では、積極的に導入しようという動きにならないのも納得がいく。
■連節バスが広く普及しているヨーロッパ都市部
一方で海外へ目を向ければ、連節バスは世界中で見られ、特にヨーロッパでは広く普及している。原則的に、日本のような法的な規制もないため、一般の路線バスと同様の扱いで広く運用されている。

モダンなデザインのオーストリア・ザルツブルクの連節式トロリーバス
連節バス最大の利点である、高い収容力を生かし、特に混雑する主要幹線や、都心部へ直通する路線などで、その姿を見ることができる。
ドアの数も、2~5枚と都市や地域、用途によって異なり、例えば乗降客が多い大都市部の路線では、ドアを最大限に配置することで乗降時間の短縮を図り、一方の郊外路線向けの車両はドア数を減らし、その分多くの座席を配置するなど、着席性を重視した構造を採用している。

ベルリン交通局のスカニア製連節バス
ドアの枚数を多くできるのは、もちろん信用乗車方式を採用し、どのドアからでも乗降可能だからであり、日本のように乗務員が運賃収受を行うスタイルでは、ドアの数をいくら増やしても、運賃支払いができるのは最前部の乗務員がいるドアだけなので、あまり効果があるとは言えない。
■トロリーバスでは3車体24m車両も
ヨーロッパの標準的な大型路線バスの車体長は12mで、連節バスはそれに6mの車体を繋げて18mとなっている。
エンジンは通常のバスと同じ、最後部に搭載されるため、連節バスの場合は後ろの車体が前の車体を押すような形になる。

ベルリン交通局、3ドア仕様のメルセデス・シタロ
なお、通常のエンジン付き車両では2車体連節が最大だが、トロリーバス仕様では3車体連節車も存在する。さらに6mの車体を一つ連結するため、その全長は実に24mに達する。
ただ、もちろんデメリットもある。日本のように、走行できる道路が限られている、というような制限はないものの、やはり車体全長が18mもあるため、住宅街や歴史的な町の旧市街のような幅が狭い道路は走行が難しい。

5ドアを持つプラハ交通局のSOR製NB18連節バス
構造上、バックが苦手というのもあって、車庫のような広い場所ならば問題はないが、狭い場所での切り返しながらのバックはほぼ不可能だろう。
一度、普段は走行しない路地で、曲がることも、バックをして切り返すことも出来なくなり、立ち往生しているバスを見掛けたことがある。
■事故が増えて採用を取りやめた英国
車体の長さが長くなったことにより、事故が増えた例もあった。英国は日本と同様、長らく連節バスの運行が禁止されていたが、解禁されたことで2001年にロンドン交通局へ導入された。
ところが、長い車体に慣れないドライバーやサイクリストが接触、内輪差で巻き込まれて死亡事故となるケースもあった。

日本でもお馴染みのメルセデス・シタロは欧州各国で活躍中
結局、ロンドンではわずか10年で姿を消すことになり、他の英国内の都市でも採用されていない。英国は、連節バスが性に合わなかったのだろうか。
連節バスは、日本の道路交通法では単車体のバスと同じ扱い、すなわちけん引免許などの特殊な資格は必要とせず、通常の大型二種免許で運転が可能となっている。
走行可能な道路が限定されるなど、特例という足枷がなければ、日本でももう少し普及させることができるのかもしれない。