【猫の実話】庭の植木鉢から、猫が隠していたおもちゃがたくさん出てきたとき、涙が止まらなかった

【猫の実話】庭の植木鉢から、猫が隠していたおもちゃがたくさん出てきたとき、涙が止まらなかった

「猫がいてくれるから」がんばれる。救われた。毎日が楽しい……。そんな猫たちとの暮らし、出会いや別れなどの実話を集めた本が話題です。その中から、エピソードをひとつ紹介しましょう。幼いときから人間不信むき出しだった地域猫と、ゆっくり心を通わせた夫婦の話です。好評につきリバイバル配信です。

さくらとの早すぎた別れ

猫との信頼関係は、どう築いていくといいのでしょう。ごはんを与える。トイレを掃除する。むやみにかまわない。いやがることはぜったいしない……。 猫を飼っているなら当たり前のことのようですが、こういった接し方や、日々のお世話の積み重ねこそが、猫に安心感を与え、「この人は信頼できるかもしれない」と、思ってもらう基礎です。生まれて間もない子猫なら、最初からやさしく接すれば、信頼を得るのも早いかもしれません。でも、よそでつらい目にあって人間不信になっている猫や、警戒心たっぷりの外猫などは、一筋縄ではいきません。まずはその不信感や警戒心をぬぐい、人間は信頼できる、危険な相手ではないということを改めて感じてもらう必要があります。人間同士でも信頼関係を築くには時間が必要です。言葉が通じない猫相手だと、態度で示すしかなく、より時間がかかるのも当然です。でも、根気よく接して、猫がだんだんなついてきたときの喜びは格別です。幼いときから人間不信むき出しだった地域猫と、ゆっくり心を通わせた夫婦。でも、その猫は思いがけず早逝してしまったのです。 思い出すと今も悲しいというお話です。

(以下引用)

名前 さくら

年齢 享年1歳

性別 オス

種類 ミックス(銀色と白)

性格 臆病だけどいざというときは男気がある

特技 宝物を見つからない場所に隠す

好きなもの ・日向ぼっこ ・おもちゃ

(以上引用)

男気を見せたさくら

今から20年近く前の話になります。当時、私が住んでいた家のすぐ近くの路地には地域猫がたくさんいました。近所の人たちが地域猫に対してやさしかったこともあり、その路地は猫たちのたまり場になっていたようです。路地のあたりをウロウロしていれば、近所のおばあちゃんがエサを持ってきてくれるので、食べることには困りません。夜はどこで過ごしていたのかわかりませんが、朝と夕方のエサの時間になると、猫たちが集まってきていました。ぽかぽかと太陽が当たって暖かい日中には、路地で日向ぼっこを楽しむ猫を何匹も見かけることもあったのです。我が家では、私も妻もともに猫が大好きでした。路地で猫と出会ったときには、「元気 にしてる?」と声をかけたり、いやがらない子はなでたり。そんなふうに猫たちとふれ合 うことで、私たちも癒してもらっていました。ある日のことです。私がたまたま路地を通りかかると、1匹の子猫の姿がありました。「あれ? 初めて見る猫だな」まだ幼く、年齢的には2〜3カ月というところでしょうか。路地をウロウロしていた猫のほとんどは、すでに避妊去勢手術をしていましたし、おなかが大きな猫を見かけたことはなかったので、子猫はどこかよそからやってきたのでしょう。母猫とはぐれてしまったのか、それとも誰かに捨てられたのか。「おまえはどこからきたの?」 やさしく声をかけながら、驚かせないように近づこうとすると、「シャーッ」とものす ごい形相をして、こっちにくるな!と子猫は訴えてきたのです。

私だけが嫌われているのかな、と思っていましたが、いつも猫たちにエサを持ってくるおばあちゃんに対しても子猫は「シャーッ」と威嚇するのです。おばあちゃんの姿が遠ざかると、置かれたエサをパクパク食べていました。子猫が路地をウロウロするようになってしばらくたったころ。 「あの子はまだ小さいから、保護して里親を探してあげたほうがいいのかもしれない」 近所の人たちとそんな話が出たのですが、当の子猫は相変わらず誰に対しても歯を剥き 出して威嚇を続けていました。「ぜったいにつかまるものか!」という気迫が子猫から伝 わってきます。 「ここにたどり着くまでの間に、もしかしたら人間に何か嫌なことをされたのも……」 「無理に捕まえてもかわいそうかもしれない」 近所の人とも相談して、しばらくそのまま様子を見ることにしたのです。 しばらくして、名無しだった子猫は「さくら」と呼ばれるようになりました。さくら、という名前だと、メスかなと思われるかもしれませんが、実はオスでした。エサを持ってくるおばあちゃんが、昔飼っていた猫に毛色も含めてよく似ていたことから、その子と同じ名前をつけて呼ぶようになったのです。

やがてさくらは1匹のメス猫と仲良しになりました。メス猫の名前は「ふーこ」。 ふーこは3匹きょうだいだったことから、昔テレビでやっていた「三匹のこぶた」の人 形劇のキャラクター、「ブー」「フー」「ウー」にちなんで近所の人が命名しました。 ふーこはさくらより年上の成猫で、避妊手術もすでにしていました。 メスだけどとても気が強くて、ふーこはたまり場の中ではボス猫のような存在でした が、不思議とさくらにはとても穏やかに接していたのです。 さくらがふーこに顔や体をなめてもらって気持ちよさそうにしていたり、互いに寄り添って日向ぼっこをしている姿をよく見かけるようになり、そのたびにほほえましく感じました。2匹は仲良しの姉弟のような関係だったと思います。 ふーこは人なつこい性格だったので、私や妻が路地に行くとすぐに体をすり寄せて、あいさつにやってきます。体をなでても、まったく抵抗することがありません。あごの下をなでてあげると気持ちよさそうな表情をしながら、のどをゴロゴロ鳴らしてくれます。私たちはさくらが現れるよりも前から、ふーこと仲良しでした。ふーこが私たちと仲良くしている様子から影響を受けたのでしょう。あれだけ「シャーッ」と言っていたさくらが、日を追うごとにだんだんと私たちに近づいてきてくれるようになりました。外でしゃがんでふーこをなでていると、私の横にさくらが来て足元でくつろぐようにまでなっていたのです。

さくらはまだ1歳にも満たない子猫です。遊びは大好きなはず。猫じゃらしやネズミのおもちゃなどをさくらに見せると、最初はおそるおそる近づいてきますが、怖いものではないとわかると、楽しそうに遊んでくれるのです。「これはボクの大事な宝物だ」とでも思うのか、少し遊ぶとおもちゃをくわえてどこかに持っていってしまうので、さくらのためにといろいろおもちゃを買っていました。さくらはこのまま地域猫として、ふーこたちと穏やかに暮らしていくのかな、と思っていた矢先のこと。ある日、明らかによそから来たオス猫にふーこが襲われそうになったのです。「ウー!」と猫同士が威嚇し合う低い鳴き声が聞こえてきたので、外へ出てみると、ふーこを襲おうとしていたオス猫に対して、さくらが果敢に立ち向かっていました。「たくましくなったな」とそんなさくらを頼もしく思っていたのですが、翌日、さくらとふーこの姿がいつもの路地から消えました。「2匹に何が起こったんだろう?」昨日のことがあったので、私は胸騒ぎがしました。妻と手分けして探すと、近所のお宅の物置の隅でふーこを発見。よく見ると首元の一部は毛が抜けており、ジュクジュクと血が滲んだ傷口は腫れていました。おそらくあのオス猫に噛まれて、傷口が膿んでしまったのでしょう。動物病院へ連れていき、手当てをしてもらいました。でも、さくらはどこにいるのかわからないままでした。さくらが見つかったのは、1週間がたったころでした。よろよろと歩きながら現れたさくらの姿に喜んだものの、抱き上げると羽のように軽くて力がありません。すぐに動物病院で診てもらうと、レントゲン検査から、「肺に膿がたまっていて、もう長くはないでしょう」という診断で、耳を疑いました。さくらの体には、どこを探してもケガはありませんでした。おそらくふーこの傷口をなめてあげて、それが膿の原因だったのかもしれません。翌日、さくらは息を引きとりました。野良猫ならば、人間から見えない場所で亡くなっていたのかと思うのですが、さくらは最後の力をふりしぼって私たちの前に姿を現してくれました。私たちを信じてくれていたのだと思うと……。出会ってから1年余りでしたが、さくらと心が繋がれたことがうれしかったのです。さくらが亡くなってしばらくたったころ。 我が家の庭の植木鉢の裏から、さくらが隠していたおもちゃがたくさん出てきたのです。

「こんなところに宝物を隠していたんだね」 やっと人間に心を許し、おもちゃで遊ぶ楽しさを覚えてくれたのに。そんなさくらのこ とを思いながら、しばらくの間、涙が止まりませんでした。 さくらに守られたふーこは、のちに我が家で引き取り、17歳になる少し前まで元気に過ごし、天寿を全うしてくれました。

※この記事は『猫がいてくれるから』主婦の友社編(主婦の友社)の内容をWeb掲載のため再編集しています。※2022年11月25日に配信した記事を再編集しています。▼▼