茨城にある「リゾート風廃墟モール」の哀しい実態

モール奥側と2階が空き区画だらけ, リゾートをコンセプトにしたアウトレットモールとしてオープン, 競合の出現と震災被害, 震災が廃墟化の引き金となった, さらなる競合と経営の悪化, 廃墟化アウトレットモールは他にも存在する

茨城にあるリゾート風のモールはなぜ廃墟化したのだろうか?(筆者撮影)

ガラガラで人がいない。空き区画だらけ。BGMだけが虚しく響いている――。日本各地に、そんな「廃墟モール」が存在する。
かつて繁栄した商業施設は、なぜ廃墟になってしまったのか? 理由を探ると、7つの要因が見えてきた――この連載では、大手ショッピングモール会社での勤務歴を持ち、プライベートでも500以上のモールを巡ったライターの坪川うたさんが現地を実際に訪れてリポート。廃墟モールが生まれる理由をひもといていく。

東京からJR特急で1時間少し。茨城県の水戸駅で1両の小さなワンマン電車、鹿島臨海鉄道大洗鹿島線に乗り換えると、観光客らしき人たちが座っていた。

【画像21枚】「人がいないガランとした広場」「2階は3分の2が空きテナント」…茨城にある「リゾート風廃墟モール」

電車が進むにつれ、建物が低くなり、やがてのどかな田園地帯となる。途中駅で降りる人はほとんどおらず、終点の大洗駅でみな下車した。

海沿いの観光地として知られる茨城県東茨城郡大洗町。この町に、「大洗シーサイドステーション」という廃墟モールがある。

モール奥側と2階が空き区画だらけ, リゾートをコンセプトにしたアウトレットモールとしてオープン, 競合の出現と震災被害, 震災が廃墟化の引き金となった, さらなる競合と経営の悪化, 廃墟化アウトレットモールは他にも存在する

「大洗シーサイドステーション」の外観(筆者撮影)

モール奥側と2階が空き区画だらけ

「大洗シーサイドステーション」は広々とした通路の両側に、2階建ての棟が8つ並んでいる。通路の中央に置かれた植栽や、店舗の前にかたどられたアーチが印象的だ。明るいBGMも流れている。

【画像21枚】「人がいないガランとした広場」「2階は3分の2が空きテナント」…茨城にある「リゾート風廃墟モール」
モール奥側と2階が空き区画だらけ, リゾートをコンセプトにしたアウトレットモールとしてオープン, 競合の出現と震災被害, 震災が廃墟化の引き金となった, さらなる競合と経営の悪化, 廃墟化アウトレットモールは他にも存在する

屋外の通路の両側に店舗が並ぶオープンモールである(筆者撮影)

観光地らしい土産店や飲食店が軒を連ね、買い物や食事を楽しむ人がいる。セリアは近隣住民と見られる買い物客で活気がある。

ところが施設の奥へ進むと、次々と空き区画が目に飛び込んでくる。ヤシの木が並ぶ「ヤシの木広場」や大きな広場「センターコート」は、人がおらずガランとしていた。

モール奥側と2階が空き区画だらけ, リゾートをコンセプトにしたアウトレットモールとしてオープン, 競合の出現と震災被害, 震災が廃墟化の引き金となった, さらなる競合と経営の悪化, 廃墟化アウトレットモールは他にも存在する

センターコートに面したエリアに空き区画が目立つ(筆者撮影)

2階にはABC-MARTやゲームセンターがあるものの、店内にはたまに人が入っていく程度。楽しげな空間や敷地の広さに反して、客数はかなり少ない。いくら平日の昼間とはいえ、寂しい雰囲気だ。

現地のフロアガイドを見ると全部で61区画あるが、半数以上の32区画が空いていた。特に施設の奥側と2階に空き区画が多い。2階は36区画中、3分の2にあたる24区画が空いている。

モール奥側と2階が空き区画だらけ, リゾートをコンセプトにしたアウトレットモールとしてオープン, 競合の出現と震災被害, 震災が廃墟化の引き金となった, さらなる競合と経営の悪化, 廃墟化アウトレットモールは他にも存在する

空き区画が並んでいる(筆者撮影)

施設の手前のほうは観光客や近隣住民に利用されているが、奥側は賑わいを失ってしまっている。

リゾートをコンセプトにしたアウトレットモールとしてオープン

「大洗シーサイドステーション」 は、2006年3月に茨城県初のアウトレットモール「大洗リゾートアウトレット」としてオープンした。オープン当初はビームスやアディダス、ビラボンなど約70店舗が出店していた。

「大洗リゾートアウトレット」のコンセプトは「リゾート」。施設だけではなく、周辺にある観光地を利用してもらい、地域に滞留するような仕組みをつくることを目指していた。

モール奥側と2階が空き区画だらけ, リゾートをコンセプトにしたアウトレットモールとしてオープン, 競合の出現と震災被害, 震災が廃墟化の引き金となった, さらなる競合と経営の悪化, 廃墟化アウトレットモールは他にも存在する

リゾート感を演出する植栽が施されている(筆者撮影)

施設から徒歩圏内に、大洗マリンタワーや大洗サンビーチといった観光地があるのだ。筆者が訪れたのは冬場の平日だったため観光客の姿は少なかったが、シンボリックなタワーや広大なビーチは観光気分を楽しめ、リフレッシュできた。

モール奥側と2階が空き区画だらけ, リゾートをコンセプトにしたアウトレットモールとしてオープン, 競合の出現と震災被害, 震災が廃墟化の引き金となった, さらなる競合と経営の悪化, 廃墟化アウトレットモールは他にも存在する

「大洗シーサイドステーション」 (左手前)とすぐそばにある大洗マリンタワー(右奥)(筆者撮影)

モール奥側と2階が空き区画だらけ, リゾートをコンセプトにしたアウトレットモールとしてオープン, 競合の出現と震災被害, 震災が廃墟化の引き金となった, さらなる競合と経営の悪化, 廃墟化アウトレットモールは他にも存在する

大洗サンビーチは広々としており散歩するだけでも楽しい(筆者撮影)

そんなリゾート立地であることから、「大洗リゾートアウトレット」は南ヨーロッパのリゾートをモチーフにパームツリーなどの植栽を施して、「自然との調和」「高質感」「非日常空間」を創出した。海岸を周遊する遊覧船の「ダイビングパイレーツ」も運航し、子連れファミリーから人気を集めていたという。

競合の出現と震災被害

「大洗リゾートアウトレット」は大きな集客力を持ち、好調な滑り出しであった。茨城県の観光客動態調査によると、05年に374万人であった大洗町への入込客数は、「大洗リゾートアウトレット」がオープンした06年に584万人にまで増加した。

しかし09年7月、同じ茨城県内に104店舗を構える競合施設「あみプレミアム・アウトレット」がオープンした。

モール奥側と2階が空き区画だらけ, リゾートをコンセプトにしたアウトレットモールとしてオープン, 競合の出現と震災被害, 震災が廃墟化の引き金となった, さらなる競合と経営の悪化, 廃墟化アウトレットモールは他にも存在する

「あみプレミアム・アウトレット」(出典:三菱地所・サイモンニュースリリース)

同年、「大洗リゾートアウトレット」は負けじと増床を実施。それまで若者をターゲットとしたテナント構成であったために客単価が伸び悩んだことを受け、増床部分には家族向けテナントをメインに15店舗をそろえた。

震災が廃墟化の引き金となった

「大洗リゾートアウトレット」が廃墟化する引き金となったのが、11年の東日本大震災である。津波で大きな被害を受け1階部分が浸水し、土砂のかき出しや電気系統の復旧作業に追われた。営業を再開できたのは、約4カ月後だった。

大洗町に来る観光客も激減し、入込客数は298万人にまで落ち込んだ。

モール奥側と2階が空き区画だらけ, リゾートをコンセプトにしたアウトレットモールとしてオープン, 競合の出現と震災被害, 震災が廃墟化の引き金となった, さらなる競合と経営の悪化, 廃墟化アウトレットモールは他にも存在する

近くの公園に、津波で浸水した場所が記されていた。「大洗リゾートアウトレット」も含まれている(筆者撮影)

翌年、12年10月から大洗町が舞台のテレビアニメ「ガールズ&パンツァー」が放送され、聖地巡礼で町に賑わいが戻ってきた。

モール奥側と2階が空き区画だらけ, リゾートをコンセプトにしたアウトレットモールとしてオープン, 競合の出現と震災被害, 震災が廃墟化の引き金となった, さらなる競合と経営の悪化, 廃墟化アウトレットモールは他にも存在する

現在も大洗町にはいたるところに「ガルパン」のポスターやフォトスポットがある(筆者撮影)

「大洗リゾートアウトレット」にもグッズなどを展示したガルパンギャラリーがつくられ観光客が訪れたが、経営は厳しいままであった。

さらなる競合と経営の悪化

追い打ちをかけるかのごとく、13年4月に千葉県北部で「酒々井プレミアム・アウトレット」がオープン。こちらは121店舗をそろえていた。

ほかにも、東京近郊に次々と大型のアウトレットモールが建設された。「大洗リゾートアウトレット」は茨城県内のみならず、東京、千葉、埼玉、栃木などからの来店を狙っていたが、より都市部に近い競合に客足を奪われてしまったのである。

モール奥側と2階が空き区画だらけ, リゾートをコンセプトにしたアウトレットモールとしてオープン, 競合の出現と震災被害, 震災が廃墟化の引き金となった, さらなる競合と経営の悪化, 廃墟化アウトレットモールは他にも存在する

「大洗リゾートアウトレット」周辺の主なアウトレットモール。オレンジは「大洗リゾートアウトレット」以前にオープン、青は以後にオープン(Googleマイマップにて作成)

『朝日新聞』によると、「大洗リゾートアウトレット」は東京電力から原発事故による風評被害への賠償があり営業を続けられていたが、15年秋に打ち切られた。

テナントから売り上げをいったん預かって家賃や経費を引いて返金していたが、16年6月ごろからテナントへの返金が遅れるようになり、テナントの退店が相次いだ。(『朝日新聞』2017年8月1日)

遊覧船「ダイビングパイレーツ」の乗船者数も震災を機に大幅に減り、16年末に営業を終了してしまった。

17年7月には開発・運営を担っていた八ヶ岳モールマネージメントが「大洗リゾートアウトレット」を売却。もともと施設内に出店していた「大洗まいわい市場」を運営するOaraiクリエイティブマネジメントへ、所有・運営管理が変わった。

この時点でテナントは約20店舗、床面積で6割以上が空き区画となり、来客数はピーク時の6割ほどになっていた。

リゾートというコンセプトから、地域密着型へ方向転換。名称が「大洗シーサイドステーション」 に変更され、18年4月に再スタートを切った。新たなテナントもオープンしたが、前述したとおり空き区画が目立つ状態となっている。

23年6月には、八ヶ岳モールマネージメントが自己破産。「大洗リゾートアウトレット」経営悪化の負債を払いきれなかった結果であった。

廃墟化アウトレットモールは他にも存在する

冒頭にて、廃墟モールの誕生には7つの要因があると書いた。具体的には以下の7つだ。

①競合施設の存在、②モータリゼーションの進展、③アクセスの悪さ、④動線の設計ミス、⑤施設規模の不適合、⑥運営会社の破綻、⑦核テナントの撤退

茨城の海辺の観光地に、オープンした「大洗リゾートアウトレット」。海という観光資源を生かしたリゾートをつくろうと邁進したが、より強力な競合に客足を奪われてしまった。アウトレットモールとして成立するには規模が足りず、都市部から遠すぎた。

つまり「大洗シーサイドステーション」、かつての「大洗リゾートアウトレット」は、①競合施設の存在、③アクセスの悪さ、⑤施設規模の不適合によって廃墟化してしまったのだ。

だが、規模や競合、都市部からのアクセスの問題で廃墟化したアウトレットモールは「大洗リゾートアウトレット」に限った話ではない。続く後編ー茨城初のアウトレットが「廃墟モール化」したワケーでは、日本におけるアウトレットモールの興隆と淘汰を追っていく。