演出と虐待の境界線は?「動物系YouTuber」炎上の背景 「ペットはビジネスパートナーと発信した方がいい」 飼い主が持つべき意識とは

演出と虐待の境界線は?「動物系YouTuber」炎上の背景 「ペットはビジネスパートナーと発信した方がいい」 飼い主が持つべき意識とは

YouTubeには「動物系」のチャンネルが、数多く存在している。かわいいペットの動画が、多くの視聴者を癒やしているが、飼い猫を投稿するあるYouTubeチャンネルが最近、突如休止を発表した。猫が嘔吐(おうと)を繰り返したことで病院に搬送され、点滴を受けていたと説明し、治療に集中するとしている。

この発表に心配の声が集まる一方、「動画のために無理させ続けた」「猫をおもちゃにしてお金にしている」「虐待だ」といった怒りの声も上がっている。というのも、このチャンネルではエリザベスカラーの代わりにカップ麺の容器を首に装着したり、炭酸水をなめさせて驚かせたりなど、過去の行動がたびたび問題視されていたのだ。

動物への“いたずら動画”は、このチャンネルに限らない。『ABEMA Prime』では、“バズり至上主義”の中で過激化する「動物系YouTuber」のあり方を、当事者とともに考えた。

■演出と虐待の境界線

動物系の動画コンテンツには、「エンタメ」なのか、「虐待」なのかの評価が分かれるものもある。例えば、「猫の背後にキュウリを置き、驚いて飛び上がる様子を撮影」といった動画には、重大なストレス・不安障害などのリスクが指摘される。また「猫を背中から地面に落とし翻って着地できるか撮影(通称:キャットドロップチャレンジ)」には、骨折、内臓損傷、恐怖心などのリスクの指摘が。「犬に人間用の化粧をしコスプレさせた動画」にも、化粧品による皮膚トラブルなどのリスク指摘がある。

ペット系YouTuberとして活動しながら、SNSの収益化など運用に関するコンサルも行う、おにゅーさんは、「『うちのカワイイ子を見て』という気持ちから、私も最初はSNSを始めた。ゴールデンレトリバーの成長過程を付けるために始めたが、思いのほか好評で収益化できた」と振り返る。「収益化できると、ペットにもっとお金をかけられる。人間より短い人生の中で、どんな思い出を作ってあげられるか。旅行やドッグランに連れて行ったり、高額な治療費や手術費にも回したりもできる」。

猫YouTuber歴10年目のあつしさんは、「13年前から動画投稿が趣味で、拾った猫についても投稿した。2年ぐらいで収益化できて、当時はバイト生活の大学生だったため、猫の食事や手術代が助かった。モチベーション面でも承認欲求だけではなかなか続かない」と話す。

そんな2人も、かつて炎上した経験がある。あつしさんは、3匹の猫と暮らしているときにカワウソを迎えたが、猫との同居を心配するコメントなどが多数寄せられた。体調を崩していたこともあり、結果的に悩んだ末に購入した店に返すことにし、動画投稿も一時休止した。おにゅーさんも、TikTokに「愛犬の去勢手術してきました!」と投稿したところ、400万再生されたものの、「ひどい」などの批判も見られ、コメント欄は賛否議論で大荒れになった。

おにゅーさんは「たくさんの人が見ることを念頭に置かなければいけなかった」と反省している。「犬や猫を飼ったことがある人なら『去勢手術はある』という感覚だが、飼ったことのない人だと、『動物の生殖器に手を入れるのは良くない』と考える人もいると勉強になった」。

動物系YouTuberに対しては「金銭目的でペットを飼っている」という批判も見られる。これにあつしさんは、「ペットを収益化の道具に使っている人も確かにいる。ただ、不幸にさせる目的で飼うのは、動画として成り立たない。自分がもうけるためだとしても、動物たちにもメリットがないといけない。幸せにできるのなら、収益目的の立場も百歩譲っていいのではないか」と持論を述べる。

■「ペットはビジネスパートナーと発信した方がいい」

文化通訳でシンガーソングライターのネルソン・バビンコイ氏は、「人間は過激であればあるほど反応したがる。そして人間が反応したがるものは、アルゴリズムによって拡散される。悪意がなくても、そうした悪循環が起きている。承認欲求かもしれないが、セルフィーを撮るのと同じ感覚ではないか」と考察する。

グラビアアイドルの麻倉瑞季は、「『ペットに豊かな生活をさせてあげたい』と言うのなら、金銭面を計算してから飼うべきだ」と批判する。「あつしさんのYouTubeを見ると、メンバーシップ(月額制の会員コンテンツ)をやっていて、『金稼ぎに行ってるな』と思った。それなら『ペットはビジネスパートナーだ』と発信した方が、すがすがしくていい」。

SNS上では「動物を飼うこと自体が人間のエゴだ」との意見も見られる。おにゅーさんは、「私が飼いたいから飼っている。本当に幸せかはペット自身にしかわからないため、ビジネスパートナーなのかもしれない」と認めつつ、「なかなか飼えなかった20代前半に、SNS上のペットたちに癒やされて、助けられてきた」過去もあると説明する。

寄せられるコメントには「なかなか大型犬が飼えないため、動画を見てゴールデンレトリバーを飼いたい欲求を満たしている」「飼っていたが亡くなってしまった。また新たに飼うのは踏ん切りがつかないため動画を見ている」といったものもあり、「見ている人が必ずしも不快になるわけではない」と語った。

DDTプロレスリングの男色ディーノは「相手が動物なだけで、人間も一緒だ。子どもも言葉は交わせるが、本当に幸せかどうかわからないから、愛を注ぐしかない。それは動物も一緒だ。動物系でも普通の人間がやっているYouTubeと一緒で、見え方の問題だ」と考える。

バビンコイ氏は「おにゅーさんは『思い出作り』と言っていた。それは素敵だと思うが、自分の思い出にしかならない。本当に動物の記憶に残るのかはわからないが、バランスは難しく、調整してほしい」と願う。

■ペットにさせる行為はどこまで許される?

ペットにさせる行為は、どこまで許されるのだろうか。例として「本来しない行為やポーズを取らせる」「実験的なリアクションを撮影する」「服を着せるなど人間的な扱いをする」「嫌がる行為への拒否反応を楽しむ」などが考えられるが、動物の意思をどう判断して接すればいいのだろうか。

ひとつの判断基準として、バビンコイ氏は「ペットのためか、視聴者のためか、飼い主のためか」を挙げる。「服を着させられて喜んでいる犬は、多分いないだろう。慣れてしまっているかもしれないが、服を着て産まれたわけではない。犬は自分のことをカワイイと思っているから、服を着させなくてもカワイイ。人間のエゴであり、『かわいく見える虐待』だと感じる人もいる」。

麻倉は「裏で何をしてもいいが、SNSに載せるから炎上する。炎上前に『これは燃えるか』『誰かが嫌な気持ちにならないか』と、倫理的に考えられないといけない。ネットリテラシーの問題だ」と分析する。

具体的にはどのあたりが線引きになるのだろう。あつしさんは「飼い主に『こいつなら悪いことをしないだろう』と信頼してもらうことが重要だ。そのためには、ある程度のエビデンスが必要だ」と認識している。「何かあったら、すぐ獣医師に聞く。バズっている話題があったら、動物の看護師をしている妹に『こういうのは大丈夫か』と聞いて、負担がかかるようなら『やめた方がいい』と生放送で言う」。

また、おにゅーさんは「飼い主は四六時中ペットを見ているため、その子が嫌がっているかはわかる。ただ第三者の視聴者が見て、『嫌がっている』『痛いんじゃないか』と感じさせると、カワイイ動画としては見られなくなる。なので『カワイイ以外の不純物』を、なるべく取り除いて投稿するよう心掛けている」そうだ。

(『ABEMA Prime』より)

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