令和ロマンくるま「契約終了」で露見した"問題点"

吉本興業との契約を終了したお笑いコンビ「令和ロマン」の髙比良くるまさんが、吉本幹部と行われた会談の様子を明かした(official令和ロマン【公式】/YouTubeより)
お笑いコンビ「令和ロマン」の髙比良くるまさんが、所属していた吉本興業との契約を終了した。くるまさんは約2カ月前、かつてオンラインカジノの利用経験があったとして謝罪し、活動を自粛していた。
【画像6枚】令和ロマン・くるまを切った? 吉本興業によるリリース
しかし、その際の謝罪動画が「契約終了のきっかけ」になっていたと明かされ、SNS上では吉本の対応が適切だったのかと、注目が集まっている。
ネットメディア編集者として、企業の不祥事対応と、その発表を長年見てきた筆者からすると、今回の事例は「企業スタンスの一貫性」において、軸がぶれているように感じてしまう。その理由を説明しよう。
突然の契約終了発表、SNS上では驚きの声が相次ぐ
くるまさんと吉本興業は2025年4月28日、マネジメント契約を終了した。
吉本の発表によると、「双方合意」のもとで契約を終了。相方の松井ケムリさんは、そのまま吉本に所属するほか、コンビとしての活動は継続するという。

吉本興業によるリリース。双方合意の上、契約終了となったと書かれている(出所:吉本興業公式サイト)
令和ロマンは2023年・2024年と「M-1グランプリ」で優勝し、大会初の2連覇を達成したコンビだ。しかし2025年2月、吉本所属タレントをめぐるオンラインカジノ騒動で、くるまさんも任意の事情聴取を受けたと報じられた。
そして報道翌日、コンビでYouTubeに「オンラインカジノ報道について」と題した謝罪動画を投稿。くるまさんは、過去に「違法ではない」と誤認した状態で、オンラインカジノで遊んだ経験があると説明した。そして数日後、「今回の件を真摯に受け止め、自らを律する機会とする」として、当面の活動自粛を発表していた。
自粛によって、「みそぎ」の途中と思われていたことから、SNS上では突然の契約終了発表で、驚きの声が相次いでいる。加えて、ファンに衝撃を与えているのが、自ら明かした「契約解除の経緯」だ。
YouTubeで明かされた吉本幹部との会談
くるまさんは契約終了にあわせて、4月28日から活動を再開した。さっそくコンビでのYouTubeチャンネルを更新したのだが、そこで語られたのが、活動自粛中に吉本幹部と行われた会談の様子だ。
幹部との対面を聞かされた当初、担当マネジャーは「復帰に向けた話し合いだろう」と予想していたという。
しかしながら、その席で幹部からは、謝罪動画について、「こっちとしては、やってほしくなかった。会社との信頼関係が壊れてしまったから、くるまくんが望めば契約解除してくれ」と言われたそうだ。
くるまさんは、これからも吉本に残って頑張る旨を伝えるも、話は平行線のまま。最終的に「コンビは続けていい」と言われ、契約書にサインしたと説明した。
この動画を受けて、SNSでは令和ロマンに同情的な声が多い。「望めば契約解除してくれ」と、あくまで要請の体裁ではあるが、事実上の処分ではないかと、吉本を非難するような投稿も少なくない。
現状出ている経緯説明は、あくまで令和ロマン側のコメントのみだ。吉本が「双方合意の上、マネジメント契約を終了した」としか報告していない以上、一方のみをうのみにするのは危険だ。
また、動画の件以外に表になっていないリスクを抱えていた可能性もゼロではない。とは言っても、仮に事実なのだとしたら、好ましい対応だとは思えない。
令和ロマンの謝罪動画は「模範的な謝罪」だった
筆者はネットメディア編集者として、十数年にわたって、スキャンダルから法的措置まで、あらゆる「著名人の謝罪」を見てきた。そんな中でも、令和ロマンによる2月の動画は、「今後のスタンダードになり得る、模範的な謝罪ではないか」と高く評価していた。
当時の東洋経済オンラインのコラム(令和ロマンくるま「謝罪対応」まで賢すぎたワケ)でも、謝罪する芸能人は「報道の数日後に」「書面のみで」「『ご迷惑をおかけした』などの抽象的な謝罪」を行うのが一般的な中で、くるまさんは「報道直後に」「自らの口で」「時系列に沿った具体的な経緯説明と謝罪」を行っていたことを紹介。
それは本来、不祥事を起こしたタレント全員が行うべきものだが、ほぼ行われていないため、相対的にネットユーザーに好印象を与えたと指摘していた。

2月15日に公式YouTubeで経緯説明の後、ファンや関係各位に謝罪した。くるまさんは(左)は19日に自身のXで「当面の間、芸能活動を自粛する」と報告した(画像:official令和ロマン【公式】YouTubeより)
もしタレントが自主的に謝罪する行為が、事務所の心証を悪くするのであれば、「事務所主導でスピーディーに謝罪させる」方法を採るべきだ。そうした体制を作ることなく、一方的にタレントが「勝手に動いた」と責任を問うのならば、それは本質を見誤っているのではないだろうか。
筆者の肌感覚として、近年のエンタメは「あらゆるスキャンダルに誠実な対応をしているか」が評価軸になっている。少しでも誠実さに欠けると感じさせてしまうと、それが「邪念」として脳裏に浮かんでしまい、素直に笑えなくなってしまう。その点において、くるまさんの謝罪動画は受け入れられ、不祥事にもかかわらず、好印象を残したのだと考えられる。
吉本の「組織の論理」
振り返れば、吉本には「謝罪体制」を構築するタイミングが幾度かあった。もっとも今回の件と重なるのは、2019年の闇営業問題をめぐる対応だ。
反社会的勢力の会合で出演料を得たとして、謹慎処分となった所属タレントに対し、社長が「会見をしたら全員クビにする」といった旨の発言を行ったと判明。その企業体質に批判が集まった。
ある程度であれば、吉本の考え方も理解できる。組織としてのガバナンスを考えれば、所属タレントが勝手にペラペラと話すことで、問題が複雑化する可能性がある。もし裁判沙汰であれば、裁判官の心証を悪い方向へ左右するなどの影響もありうる。企業側でコントロールできるに越したことはないだろう。
ただし、それはあくまで「組織の論理」でしかない。先ほども言ったように、社会が「本人みずからの説明」を求めている以上は、それに応えるのもまた、企業としての使命だ。
もしタレントと事務所に見解の相違があるのであれば、会見の場で「互いの認識」を示しあえばいい。しかし、闇営業会見という前例がありながらも、今回はそうした場が設けられることはなかった。
今は本人による説明が重視される
吉本興業のような大手事務所は、いまや「既得権益」の象徴として、常に監視の目にさらされている。背景には旧ジャニーズ問題や、昨今のフジテレビ問題のように、エンタメ業界全体に対して、「コンプライアンス意識が前時代的なのではないか」との疑念が浮かんでいることがある。
そして、ショービジネスも「ギョーカイの常識」よりも、「視聴者の当たり前」が優先されつつある。そこで基準として重視されるのが、スピーディーかつ的確な「本人による説明」だ。その点において、「ダウンタウン」松本人志さんの女性スキャンダルは、少なくともSNS上においては、まだ説明責任が果たされていないと認識されている。
くしくも先日、吉本が配信プラットフォーム「ダウンタウンチャンネル(仮称)」を7月開始予定であると報じられた。筆者個人としては「タレントを中心とした新たなウェブ経済圏」の社会実験として、非常に強い関心を持っている。
とはいえ、それと説明責任はまったく別の話だ。どれだけ新天地で成功しても、そこには「一連の対応は、本当に誠実と言えたのか」といったモヤモヤが残ることだろう。日々情報があふれるネット社会では、それだけ「1年以上の沈黙」が不利になる。
吉本の「企業スタンスの一貫性」が問われる
今回の「くるま契約解除」を受けて、SNS上でも松本さんの件とからめた反応が多々出ている。当然ながら、週刊誌報道に対して民事訴訟(のちに取り下げ)を行った松本さんと、警察の事情聴取を受けたくるまさんは、同等に扱うことが難しい。
しかし、タレント個人ではなく「吉本の対応」として見た場合は、どうだろうか。松本さんは、文春報道の直後に「いつ辞めても良いと思ってたんやけど…やる気が出てきたなぁ〜。」とXに投稿。女性からのLINEとされる画像を伝えた週刊誌報道にも「とうとう出たね。。。」と反応した。
また、「事実無根なので闘いまーす。」として、かつてのレギュラー番組「ワイドナショー」(フジテレビ系、今春終了)に出演する旨を投稿したが、結局フジと吉本の協議で出演はなくなった。
こうした一連の投稿は、「会社との信頼関係」を崩すものではなかったのか。勝手な投稿であれば、「しっかりと処分していたのか」が問われる。事前チェックしていたのだとすれば、「その投稿内容を企業として認めていたのか」となる。
いずれにせよ、今回の件と照らすと、企業スタンスの一貫性を問われかねない。そう考えると2つのスキャンダルは、「不祥事対応」の面で表裏一体と言えるのではないだろうか。

タレント名を明かさない形で活動自粛を発表、話題となった(画像:吉本興業ホールディングスHPより)

「自らを律する機会とするため」活動自粛を発表した(画像:令和ロマン くるまXより)

相方・ケムリさんの対応も見事。コンビへのイメージ低下は最小限に食い止められそうだ(画像:令和ロマン 松井ケムリXより)