新型車両「東武90000系」が東上線に与える衝撃度

2026年に東武東上線に導入予定の90000系(画像:東武鉄道)

東武東上線は池袋駅を起点に川越を経て寄居まで結ぶ路線である。路線距離は75kmで、埼玉のベッドタウンと都心を結び、さらに休日には川越や秩父方面へのアクセスとしても重宝されている。和光市駅からは、東京メトロ有楽町線・副都心線への直通列車も設定されており、都心を越えて横浜方面まで足を延ばす列車も設定されている。

【画像を見る】▶外観は?車内は?▶東武東上線に今年導入予定の新型車両「90000系」▶現在活躍する車両と見比べる▶近い将来、東上線のイメージがずいぶんと変わることになるかも

当時としては最先端の9000系

東上線が営団地下鉄(現・東京メトロ)有楽町線との相互直通運転を始めたのは、1987年8月25日のことだ。当時東上線の主力といえば、鋼製車体の8000系だったが、直通用として新たに9000系を用意した。営団地下鉄からはチョッパ制御のアルミ車7000系が乗り入れてきた。

【画像】東武東上線に導入予定の新型車両「90000系」の外観と車内のイメージ。現在活躍している車両と見比べる

9000系は東武鉄道で初めて軽量ステンレス製車体、回生ブレーキ付き電機子チョッパ制御など、当時としては最先端の技術を多く取り入れた列車である。直通運転が開始されるおよそ6年前、1981年11月に試作車が竣工した。

実はこの同じ時期に、東武鉄道内で9000系と同じようにステンレス車体で登場するはずだった形式が存在した。以前東武博物館・元名誉館長の花上嘉成氏にお聞きしたが、旧型車両を更新する目的で7300系の更新工事を行い、車体のみステンレス製のものに置き換えるというものである。1980年から1981年のことであった。その姿は、従来の8000系をステンレス化したような姿で、アルナ工機製(現在のアルナ車両)。車体側面は、東急電鉄の8000系によく似たものであった。

しかしながら経済的な理由で廃案となってしまった(試作車体はすでに解体されており現存しない)。おそらく、すでに9000系の登場直前であり、旧型車両を更新して使用するよりも、新型車両を製造して長く使う方が経済的と考えたのかもしれない。

当時は、東急電鉄や京成電鉄などでもすでにステンレス車体の車両導入を進めており、8000系登場以降、新形式の通勤車両を登場させてなかった東武としては、9000系の導入計画は社を挙げての一大プロジェクトとなったのであろう。直通先の営団7000系とも引けをとらない高性能。デザインも一新し、まさに「ハイテク電車」として利用者にも好評で迎えられた。

トップナンバーの9101編成(筆者撮影)

9000系を改良した10000系も登場

9000系を営団地下鉄に乗り入れない地上運用専用に改良した10000系も開発され、東上線へ先に導入した後に8000系車両での主体運行が続く伊勢崎線系統にも導入された。10000系は前面の貫通扉を、中心の位置にしたデザインである。理由は、2両編成、4両編成、6両編成、8両編成などを状況に応じて組み替え、先頭車同士で連結した時に、車内を行き来できるように考慮したものである。

東上線10030型(筆者撮影)

9000系と10000系は1980年代の東武鉄道にとって革命的な車両であった。これ以降、50000系が登場するまでの間、10030型、日比谷線直通用に20000系列、半蔵門線直通用に製造された30000系など9000系や10000系をベースとしたデザインにされている。9000系、10000系ともに東上線で現在も活躍中である。

9000系登場から45年。9000系の後継車両として90000系の製造が進められている。東武鉄道の公式ユーチューブでは、製造途中の車体を公開するなど登場前にして期待感を盛り上げている。月初旬には製造を行った日立製作所笠戸事業所から東武の南栗橋工場に輸送された。

同形式は9000系に比べて、消費電力を40%削減させるほかVVVFインバータ制御装置も最新のものに、環境負荷低減をさらに高めたものになっている。2025年3月の公式発表の時点では、70両(7編成)の導入にとどまっているが、さらに増やす可能性がある。

新型車両90000系や今後の9000系や10000系の処遇について、東武鉄道・広報部に聞いてみた。

90000系の注目してほしいポイントは、「外観的なものとして、特徴的な前面形状の逆スラント。そして、最新機器の導入による環境負荷の低減。車内は開放的な客室空間による快適性と、サービス向上を両立させたこと」だという。最新省エネ機器である「フルSic VVVFインバータ制御装置」を搭載し、車内灯に「LED照明」を採用していることなどが環境負荷の低減にあたるようだ。そして次は、前面形状である。これまでの車両で見られた床面に向かって張り出した前面とは逆に、天井に向かって張り出した船首のようなデザインである。高瀬舟をモチーフとした「逆スラント式」という。運転士の視認性については、従来車とあまり変わらないそうだが、足元近くまで見えていそうなイメージがある。この形状は鉄道車両では非常に珍しく、話題になりそうだ。

90000系は9000系と同様の運用が行われることから、東京メトロ有楽町線や副都心線、さらに東急東横線への直通運転でも活躍するだろう。そして現状は相鉄線への東武車による直通運転は行われていないが、今後のダイヤ改正の内容によっては、相鉄直通の可能性もなくはないと筆者は考える。90000系の登場で、東上線系統の運用変化を期待したいところだ。

【画像】東武東上線に導入予定の新型車両「90000系」の外観と車内のイメージ。現在活躍している車両と見比べる

9000系と10000系は今後どうなる?

ちなみに現状、東上線で活躍する9000系や10000系は40年以上運用されている。新型車両への置き換えが進むと思われるが、製造から年数が経っていない車両の一部は、今後も運用が予想される。東武鉄道広報部に、車両のリニューアルに関しても聞いてみたところ、「概ね、新造後の20〜30年を目安に行っており、各種施策(短編成化、OM・ワンマン化)等と合わせて実施するケースが多く、計画的に実施している」とのことだった。

しかし東上線に至っては、伊勢崎線系統と比べると車両が古い印象がある。90000系が導入されるにあたって、9000系や10000系にどのような影響があるのか。この点については「予定」はあるのか。そのほか、転属や廃車の規模なども聞いたが、返答はすべて未定ということであった。90000系の具体的な運用も明らかになっていないのだから、置き換え対象となる車両の詳細もわかるわけがない。というのが正直なところであろう。

今後90000系が導入されることで、東上線が大きく進化することは間違いないであろう。従来車両のリニューアル化も合わせて、引き続き東武鉄道に注目していきたい。