「日産リーフ」EVを買わない理由は払拭できたか

EVのパイオニアを自称する日産自動車が投入した新型「日産リーフ」。開発陣はEVを買わない理由を解消したと自信を示す(写真:筆者撮影)
数年前、あるWebメディアの編集者から「EV(電気自動車)の記事は読まれないんだよね」とよく言われた。その傾向は未だ続いているかもしれない。ただ、中国車の台頭もあり、また日本車も徐々に増える傾向があり、EV情報は少し増えた気もする。
【写真で見る】新型「日産リーフ」。開発陣は「EVを買わない理由を解消した」と胸を張る
そうした中、16年前から販売し国内ではEVのパイオニア的存在の「日産リーフ」。乗用EVとしては2010年に国内初登場。そして25年に3世代目へと進化しデビューした。
「リーフ? 興味ねぇ」って声も聞こえてきそうだが、ちょっと待った。
EVは加速度的に進化し、これまでの知識は過去のものとなり、古漬けされた知識になってしまう。そのアップデートされていない知識は、「EVを買わない理由探し」をしていないだろうか。
買わない理由を分析して解決
EVを買わない理由として、「充電インフラが不十分」「航続距離が不安」「充電時間が長くて嫌」という声が多いと日産自動車は分析。「それらは解決した」と3代目リーフの開発責任者である磯部博樹氏は話す。
例えば、新型リーフの車載ナビを積極的に利用することが課題解決につながるという。知っている場所に行く時もナビをセットする。すると今の電池残量で目的地まで届くのかどうかを教えてくれる。
もし届かない場合、充電場所をマップ上に示してくれる。しかも急速充電器の出力の大きい場所を優先的に表示し、さらに充電器の満空情報まで教えてくれるのだ。もちろんルート案内は電費の良いルートを表示する。

EVを買わない理由の中でも、充電にまつわる不安は上位に来る。航続距離の延長と高出力の急速充電器の整備によって使い勝手はよくなっている(写真:筆者撮影)
そうなると、充電インフラや航続距離に対する不安はだいぶ解消されると思う。充電時間についても着実に改善傾向にある。
今、日本では150kWの出力器が最高出力で、新型リーフのB5グレード(55kWhのバッテリー搭載)だと35分でSoC(バッテリー充電残量)10%から80%へ充電できる。バッテリー容量の大きいB7グレード(78kWh)だと15分の充電で300km走行できるレベルに回復する。
自宅充電できればB7の航続距離は702km、B5でも521km走行できる。電欠するまで走り続けるのは6時間以上の連続走行が必要なわけで、まるで耐久テストをしているかのようだ。一般的に考えると100〜200kmを連続して走れば15分や30分休憩するわけで、その間に充電できればいいわけだ。
あえて言うなら、急速充電器の故障もままある。また満空情報も100%リアルタイムではなく、1つの目安であることも注意が必要であり、まだ不満は残るかもしれないが、完璧なガソリン車の代替ではなく、新しい乗り物という視点に変えるとEVの魅力も見えてくる。
何より、EVならガソリンスタンドに行く必要がない。地方ならガソリンスタンドまでクルマで数十分かかることも珍しくない。自宅充電が中心で長距離走行はまれ、という使い方なら、EVはむしろ使い勝手がよいとさえ言える。
EVは静かで滑らかというのはご存知だろうが、実は、EV特有の音は出ている。「電車のような音がする」とかいうアレだ。インバータからの音もあるし、モータ本体の音もある。エンジンと比較すれば驚くほど静かに回転しているモータだが、ある特定の周波数帯で音は出ている。エンジンよりは遥かに静粛性は高く、滑らかな加減速をするものだから、一般的には音や振動はさほど気にされていなかった。
日産のエンジニアによれば、新型リーフでは開発段階で、そうした音や振動への課題認識があったという。そのため、モーターを含むパワートレインの音や振動を減らす技術、具体的にはパワートレインのマウントブッシュやモーター本体の改良などで音を消すことに取り組んだという。
実際、試乗してみるとモーターの音もインバータの音もほとんど聞こえてこない。静粛性と滑らかさにプラスして、乗り心地もこれまでのリーフとは異なっている。これらはエンジン車では絶対に作れない性能であり、EVだから創り出せたものだ。
さて、今更だがアウトラインを少々。新型リーフのスタイルは、最近の主流であるクロスオーバー型。初代、2代目とハッチバック型だったリーフも時代変化とともにスタイルも変わった。全長4360mm、全幅1810mm、全高1550mm(プロパイロット2.0搭載車はアンテナにより1565mm)で5名乗車。
気になる新型リーフの乗り心地は
新型リーフは、グローバルモデルにもかかわらず、日本発売モデルには日本専用のサスペンションを搭載している。しなやかに足が動き、芝生の上を歩いているかのようなソフトな乗り心地だ。この乗り心地と静かなパワートレインだけでも、他のEVとの差は歴然としている。

適度に背骨を支えてくれるシートの座り心地は快適。ルノーから学んだという(写真:筆者撮影)
シートの座り心地も新鮮で、シートバックが適度に背骨を支えていて身体が動かない。エンジニアによればルノーから学ぶことが多かったという。椅子文化のフランスと畳文化の日本の違いがシートに表れること、身体をどう支持するかで乗り心地の感じ方が変わることを学んだという。そのシートは確かにフランスの味があった。
操舵フィールについて言えば、しっかりした手応えがあって思い通りに運転できる感覚がある。最新のデジタル機器になると軽快さは出てくるものの、現実味が薄くどこかバーチャルな操舵だと感じるものだが、その人間の感覚ですら数値化されて「手応え」を作り出している。
日産といえば運転支援機能の「プロパイロット」がある。「やっちゃえ日産」といった過激なワードも印象に残るが、プロパイロットの出来栄えは確実に良くなっている。
運転支援機能は各社とも「運転が上手なベテランの運転」を目標にしている。プロパイロットは、先行車との車間距離の取り方や維持の仕方、車線変更時の加速のタイミングなど、いかにもシステムが運転しているといった感覚はほとんどない。
ちなみに新型リーフではプロパイロットの最新バージョン「2.0」がオプション設定されている。2.0は、高速道路(自動車専用道路)の同一車線内なら渋滞時だけでなく全車速域でハンズオフ、手放し運転が可能だ。ただしドライバーは前方を見て、いつでも運転操作に戻れる状態でなければいけない。決してセカンドタスクOKということではないのでご注意を。
東京都在住なら補助金で300万円以下も
さて、EVといえば高いというイメージがあるが、それも変わりつつある。
政府もEV普及に力を入れると言い、補助金は増額された。新型リーフの場合、129万円が政府から補助が付く。さらに東京都に住所があれば、日産の場合60万円の補助金(再生可能エネルギー導入の場合はプラス15万円の75万円)があり、合計で189万円引きになる。いつでも歳末大売り出しみたいなものだ。
前述したように、新型リーフはバッテリー容量の異なるB7とB5のグレードがある。それぞれに上位のG、中間のX、バッテリー容量の小さいB5には廉価のSというグレードが設定されている(別途、カスタム仕様も)。人気は中間のXで、B5なら車両価格(税込)は473万8800円。ここから政府からの補助金を引くと344万8800円になる。東京都なら300万円を切っちゃうことになる。
ちなみに、新型リーフの出だしは好調で、26年1月の時点で5000台の注文がある。バッテリーが小さく、価格もお手頃なB5が1月29日から発売になったことで、さらに販売台数が加速しているという状況なのだ。
新型リーフは自宅充電の環境がある人にはおすすめな1台であることは間違いない。あとはデザインや個人のこだわりポイントで、満足できるかどうかだろう。一方、EVは日々進化し、後発であるほど高性能になる傾向がある。家電などと同様「いつ買ったらいいのか?」という悩みがある。
「今でしょ!」とまでは言いにくいが、「欲しい時が買い時」ではないだろうか。